3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

2024年度プロフェッショナル向け ベスト3Dスキャニングソフトウェア

2024年 5月 16日
12 分で読めます
概要

デジタル化は、製造業全般における可能性を再定義しつつあります。リバースエンジニアリングやデジタルでの製品保管、品質分析(QA)の要となる3Dスキャニングは急速にこの革新の土台となりつつあり、速いペースで製造業者の業務形態の再形成をも行っています。ただ、3Dスキャナの性能は、その作動に必要なソフトウェアの良し悪しで決まるのです。現在では大量のプラットフォームが入手可能であるため、ご自身に合った3Dスキャニングソフトウェアを選ぶことは困難なものとなり兼ねません。皆様の3Dスキャニングワークフローを最適なものとするため、この記事では二〇二四年において入手できるソフトウェアのうちの最良のものを、その個々のプログラムの長所、短所、用途に焦点を当てながら掘り下げていきます。

3Dスキャニング ソフトウェア
Artec Studio、Artec Cloud、Skanect、RealityCapture、Agisoft Metashape、Geomagic for SOLIDWORKS、Control X、Design X、及びZEISS INSPECT Optical 3D
プラットフォーム
Windows、MacOS、もしくはLinux
ソフトウェアの用途
3Dスキャンデータキャプチャ、メッシュ編集、フォトグラメトリ、リバースエンジニアリング、検査、もしくは品質分析

Best 3D scanning software

最も進歩したプロフェッショナル3Dスキャナでさえも、キャプチャデータの処理の際はPCソフトウェアに依存しています。しかし、最も高性能とされる機器が今やパワフルなプロセッサを搭載する中、この点が何故未だに問題となるのでしょう。このことを解明するには、3Dスキャニングの基礎について簡単におさらいする必要があります。

産業を先導する企業の多くは、構造化光をご活用されています。それではまず、その仕組みについて探ることから始めましょう。非常に幅広い観点から見ると、このテクノロジーには対象となるオブジェクトへ白か青色の光の構造化パターンを投射し、その光が反射する間にカメラで歪みを観察する工程が含まれています。その各々が3D空間において『データポイント』を構成し、スキャンデータ全体により完全な『ポイントクラウド』を生成します。

このデータを解釈し、正確で本物のようなメッシュへと変換する際に、3Dスキャニングソフトウェアは欠かせません。 パターン認識、及び復元アルゴリズムはこの工程のまさに中心となり、光の歪みを効果的に利用し、ポイントの位置をポイント同士の位置関係より把握して形状を特定し、『テクスチャ』と呼ばれる色彩やサーフェスのディテールを完成モデル上にマッピングします。

キーポイント

3Dスキャニングソフトウェアは後処理に欠かせないだけではなく、データキャプチャのまさに中心であり、最高の出来栄えを保証します。

以上のような3Dスキャニングソフトウェアはデータキャプチャを最適化すると共に、外れ値の除去、穴埋め、及びCADエクスポートの準備を行うことで、ユーザーの方のメッシュの編集を常に支援します。写真のようにリアルなCGIからリバースエンジニアリング、及び検査に至るまでの多くの用途において、他のプラットフォームの領域内で寸法的に正確で実物のような3Dモデルをこのメッシュから作成することも可能です。

ここでは技術面の掘り下げはこれ以上行いませんが、その詳しい内容は当社の記事『構造化光3Dスキャニングの仕組み(How does structured-light 3D scanning work?)』で既にご説明していますので、そちらをご覧ください。

その代わりに、ここからは販売中の最上級レベルの3Dスキャニングプログラム、並びにその優れた特徴、最善の活用方法について触れていきます。

プロフェッショナル向け3Dスキャニングソフトウェア

Artec Studio

Best 3D scanning software
価格
互換性
  • Windows、及びmacOS(Catalina、もしくはそれ以前のバージョン)
長所
  • 多重解像度3Dスキャニング
  • リアルさを強化するHDモード
  • 幅広い種類のメッシュ編集ツール
  • 分析、及びスキャン・トゥ・CADに即利用可能
短所
  • 高性能の機能はプロフェッショナル向けの価格でのみ利用可能

極めて小さいボルトから、人体や、更には施設全体に至るまで、対象となるオブジェクトの種類にかかわらず、皆様に自信を持ってデジタル化を行っていただけるArtec社製機器がございます。ただ、そういった機器はすべて、同じ一つの高性能のソフトウェアにより作動します。それが、Artec Studioです。

新しいリリースごとにアップデートされているArtec Studioは、データキャプチャから処理、エクスポートに至るまで、皆様のワークフローの各段階における成果を最高のものとするための機能を満載しています。デジタル化においては、本3Dスキャニングソフトウェアはキャプチャの対象をその種類に関わらず分析し、暗い色や不明瞭、もしくは光沢のあるサーフェスのような扱いにくい領域のデータの取得が機器に不慣れな方でも可能となるように機器の感度調整を行います。

キーポイント

Artec StudioはArtec 3D社製スキャナに新機能を追加するために定期的にアップデートされており、お持ちの機器は常に進化していきます。

データキャプチャの後には、Artec Studioの高度なブールツールキット、サーフェス自動作成機能、及び偏差解析機能により、検査、及びリバースエンジニアリングを行う際に必要となるすべてのものが揃います。その上で、特定用途向け機能を備えたプラットフォームへのエクスポートも、円滑に機能する、高度に自動化されたワークフローの一環としてボタンをワンクリックするだけで実行可能となります。

Artec社による3Dスキャニングは競争市場でももちろん提供されており、 能力の劣るプラットフォームほど、更なる低価格で販売されている場合もあります。しかし、Artec Studioは鮮明さを強化する画期的なHDモード、スキャンデータを組み合わせる多重解像度メッシュ化機能、並びにワイヤレスキャプチャの全面的サポートにより、プロフェッショナル水準の3Dスキャニングの分野での先導的立場にあることは明らかです。

Skanect

Best 3D scanning software
価格
  • 無料試用版、Proバージョンは年額129米ドル
互換性
  • Windows、及びmacOS
長所
  • サードパーティ機器で利用可能
  • 人物、部屋、及び中規模のオブジェクトのスキャンのためのプリセット
  • Shapeways、及びSketchfabとの統合
短所
  • 業務用機能は有料のPro版のみで利用可能
  • 編集用ツールセットは比較的普通レベル

プロフェッショナル向け3Dスキャナ製造企業によるプラットフォームの多くとは異なり、Skanectは機器に依存しないため、同じ開発企業による構造化光スキャニングハードウェア、もしくはその他のXbox Kinectのような数種の低価格機器の作動に利用されます。

Skanectの機能一式は、初心者の方に焦点を合わせてあります。同ソフトウェアはリアルタイムでのフィードバック機能と身体、オブジェクト、及び部屋のキャプチャプリセットの併用により、機器の使用経験が十分にない方でも成果品を最高の出来栄えとしていただけるようお手伝いを致します。メッシュ編集においても工程は同様に簡素であり、最も目玉となる機能も小さな部分の除去、穴埋め、メッシュ単純化に留まっています。

キーポイント

Skanectは機器に依存しないため、3Dスキャナのほぼ全てのユーザーの方に利用していただけます。しかし、プロフェッショナルレベルの機能の多くは装備されていません。

高度な編集や分析には、より高性能のプラットフォームが必要となります。SkanectはそのハイポリモデルエクスポートやEメールサポートなどの比較的基本的な機能さえも有料のProバージョンでのみ利用可能としており、とても手頃な価格である反面、その機能は極めて初歩的なものとなります。

フォトグラメトリ用ソフトウェア

Best 3D scanning software
価格
  • RealityCapture:3,500クレジットにつき10米ドル、無制限ライセンスは3,750米ドル
互換性
  • Windows
長所
  • PPIライセンスにより、使用分だけを払えば一時的使用が可能
  • 優れたテクスチャキャプチャ
  • 他社製品より高速なフォトグラメトリ
短所
  • 3Dスキャニングより遅い、誤差が発生しがち、非可動性というフォトグラメトリには付き物の欠点

プロフェッショナル向けフォトグラメトリソフトウェアをお探しなら、RealityCaptureをお求めになれば間違いはないでしょう。仮想現実(VR)空間やジオレファレンス処理済マップの作製に関して言うと、このプログラムは高解像度の画像や3Dレーザースキャンデータからのリアルな3Dメッシュの生成に最適です。

キーポイント

Artec Studio上では、3Dスキャンデータとフォトグラメトリによるデータを組み合わせ、よりリアルでテクスチャも完璧な3Dモデルを作成することが可能です。

更に広い視点では、処理用に生成されたフォトグラメトリデータは高精度で実物のようなモデルの製作への利用も可能で、ジオメトリのキャプチャよりも本物らしさが求められる特定のCGIの用途に最適です。とはいえ、低レベルの画像のスペーシング、不均一なライティング、リードタイム、及び(撮影装置を使用した場合の)携帯性の欠如などの問題により、フォトグラメトリの有効性が限定される場合があります。

その結果として、Agisoft MetashapeやオープンソースのMeshroomなどのその他のフォトグラメトリソフトウェアに切り替えたとしても、この状況が劇的に変わることはありません。もちろん、3Dスキャニングとフォトグラメトリだけに固執する必要もありません。Artec Studioであれば、テクノロジーを組み合わせ、極めて実物に近いテクスチャを実現させることが可能となるため、これは第三の選択肢であると言えます。

しかし、この二つを比較した場合、RealityCaptureのPPIライセンス(pay per input license、ライセンスが画像ごとに付与)はリアルな3Dモデル製作に適していますが、柔軟性のある、独立型で正確なジオメトリキャプチャを実行することが可能となるのは3Dスキャニングのみとなります。

こういった中で、製造業者の方々の場合はどうなのでしょうか。完成モデルがどのように利用されているかについて、見ていきましょう。

アプリケーション主導の3Dスキャニングソフトウェア

Geomagic for SOLIDWORKS

Best 3D scanning software
価格
互換性
  • Windows
長所
  • お持ちのSOLIDWORKS CADソフトウェアに直接接続
  • 改善されたフィーチャ抽出ツールにより、スキャン・トゥ・CADを効率化
  • SOLIDWORKSのArtec Studioとの密接な統合
短所
  • SOLIDWORKSの購入も必要
  • 比較的単純な品質検査(QA)ツール

リバースエンジニアリングには、SOLIDWORKSは単体でも十分に対応することができます。業界における『大物』である本ソフトウェアは3Dメッシュ編集、及びCADソフトウェアとして確固たる名声を築いています。 しかし、ライセンスを既にお持ちで、設計品にリバースエンジニアリングや反復を更に高速に行うことのできる、より高度なツールがご必要であれば、Geomagic for SOLIDWORKSが理想的な選択肢ともなります。

高度な自動サーフェス生成機能により、フィーチャはボタンを一回クリックするだけでCADサーフェスへ変換することが可能です。スケッチから3D図形を作成する場合においては押出、回転、及びスイープ用ツール一式を揃えたプラグインが利用可能で、エンジニアの方であれば認識可能なUIを通しての操作が可能です。以上により設計意図の明確化、及び反復の工程は簡素化され、加速化されます。

もちろん、このアドオンにはSOLIDWORKSライセンスが必要となるため、初心者の方はご利用をためらうことになるかもしれません。ただ、無料版でも使用可能であるため、ご購入される前に機能をいろいろとお試しいただけます。Geomagic for SOLIDWORKSも比較的、お手頃な値段設定となっています。

Geomagic Control X

Best 3D scanning software
価格
互換性
  • Windows
長所
  • バッチQA、及び検査を促進
  • スマート寸法機能により、迅速な偏差の特定が可能
  • 航空宇宙産業水準の分析ツール
短所
  • 幅広い種類の機能セットは、全くの初心者の方にとっては取り扱いが困難な場合も
  • 幾何公差設計(GD&T)機能は高度ではあるものの、業界を先導する企業との熾烈な競争では苦戦も

品質管理業務に従事されている方であれば、Geomagic Control Xのことをお聞きになったことはあるでしょう。そのUIは新たなユーザーの方にとっては理解しづらいかもしれませんが、この初期段階のハードルを乗り越えていただければ、本プラットフォームがバッチ検査の加速化に理想的であることを分かっていただけるでしょう。

キーポイント

Control Xのようなプラットフォームであれば、3Dスキャンデータを基にした製品バッチに対する欠陥検査の実施が可能となります。

ビジュアルスクリプトシステム(visual scripting)により、初期段階でスキャンされたデータを利用してテンプレートを製作し、将来的な分析の基礎として利用することが可能となり、皆様のワークフロー全体が自動化されます。許容誤差の設定もスマート寸法機能(Smart Dimensioning)により簡素化され、フィーチャ間の寸法も自動的に生成されます。これは特にスキャンデータの偏差分析における平坦度、もしくは対称許容誤差の設定の際に有用です。

高性能の輪郭測定、及び配置分析性能により、Control Xは翼板の保守・修理・点検(MRO)中の損傷、反り、歪みの特定のためのツールとして普及しました。しかし、このソフトウェアはその他の用途にも適用可能です。付属の幾何公差設計用ツールは同クラスでの最高水準に匹敵し、皆様の最終決定を支援する製造に関する洞察力をもたらします。

Geomagic Design X

Best 3D scanning software
価格
互換性
  • Windows
長所
  • リバースエンジニアリング用の高度なフィーチャ抽出ウィザード
  • 初心者向けの内蔵UIアシスタント
  • 業界全般で長年をかけて有効性を実証
短所
  • より初歩レベルの用途には、プロフェッショナル水準のツールキットは不要の場合も

リバースエンジニアリングにかけては、Geomagic Design Xは最も即戦力のあるソフトウェアであると言えます。このソフトウェアは高度に自動化されたサーフェス作成、レイアウト、及びスケッチング用ツールを装備し、ボタンを一回クリックするだけで、複雑なスキャン・トゥ・CAD作業の多くを実行することが可能です。製造業者の方にとっては、このプログラムは迅速なデジタルでの製品保管、及び欠陥のあるパーツの取り換えに最適です。

QA分野でのControl Xのように、Design Xはメッシュ処理を自動化するマクロを利用しバッチワークフローを円滑に進めますが、マニュアルでのスケッチングを効率化する機能も満載です。高度なツール一式を使用することで、断面のポリライン、並びにフィーチャカーブの抽出から複数の入力を含む参照に至るまで、最も複雑な類のタスクを簡単に実行することが可能となります。

Design Xには、リアルタイムでの偏差分析のための自動精度分析機能(Automated Accuracy Analyzer)も付属しています。 この機能は、基本レベルの使用事例に対しては『行き過ぎ』ではないかという見方もあります。しかし、実際には、そのUIはソフトウェアのレンダリング補助機能(Redesign Assistant)によって容易に把握できるようになっており、リバースエンジニアリングに関しては言うまでもなく、複数の使用事例が既に報告されています。

ZEISS INSPECT Optical 3D

Best 3D scanning software
価格
  • 無料試用版、申込により利用可能
互換性
  • Windows
長所
  • このクラスで最高の検査用ツール
  • パラメトリックプラットフォームが反復タスクに対する分析を記憶
  • 変形の発見も容易に
  • ZEISSアプリによるカスタマイズも可能
短所
  • 高度な幾何公差設計、自動サーフェス作成、及びレンダリングツールの利用にはPro版ライセンスへのアップグレードが必要

ZEISS INSPECTは名称が先日変更となりましたが、別の形態、並びにアプリとして現在販売されているだけで、前身のGOM Inspectと同じ、最高レベルの検査用ツールを揃えています。

そういった商品の多くの核となる機能は同じですが、その中でZEISS Inspect Optical 3Dはおそらく最も拡張されたバリエーションであり、ZEISS X-Ray、並びにZEISS Airfoilは従来より更に特化されたものとなっています。本プログラムであれば、偏差の即時の分析、高度な幾何公差設計用ツールによる検査、並びに製作に先立つ仮想組立(virtual assemblies)機能によるパーツのデジタル的分析が可能となります。

隆起部、へこみ、及び溝も拡大されることで偏差がより発見しやすくなる上、高度なレンダリングにより、非常にリアルなプレビューでの製品の完成状態の確認も可能となります。ZEISS Quality Suite経由で利用可能なカスタマイズ用オプションと共に、本ソフトウェアは以上のような機能により、絶対的な確信を持って製品品質を保証するパワフルなツールとなります。

もちろん、本プログラムの最高の機能の多くはご購入の上でのみ、ご利用が可能です。しかし、3Dスキャン済みのデータの品質分析においてのご利用をお考えであれば、Pro版ライセンスへのアップグレードは賢い買い物と言えるでしょう。

キーポイント

かつては業界のプラットフォームでのみ見かけられたリバースエンジニアリング用、及び検査用ツールは、徐々に3Dスキャニングプログラムへも導入されつつあります。

3Dスキャニングソフトウェアの今後の見通しは?

これまでよりも更に進化したアルゴリズムの開発により、3Dスキャニング工程は更に高速化され、得られる成果も引き続き改善されていくことが期待されます。 このような発展は、課題となる(既に従来よりも容易になっていますが)暗い色や光沢を持つテクスチャ、もしくはArtec Studioにおいて継続的な精度の向上に貢献しているAIを利用した、最も細かく、最も複雑な部類のオブジェクトのフィーチャのキャプチャにおいて実現することも考えられます。

3Dスキャニングプラットフォームもリバースエンジニアリング、及び品質分析用の機能を追加し始めていますが、未だ専用のツールセットは登場していません。

Best 3D scanning software

何処を見渡しても、自動化ツールは製造業者の方々のコストやリードタイムを改善する形で、以上のような分野での生産性を向上させています。同様に、Artec Cloudのようなクラウドソリューションは3Dメッシュを基にしたプロジェクトの共有を効率化し、完全な『第四次産業革命(Industry 4.0)』工場統合の可能性を実現に近づけることに継続的に貢献しています。

このような進歩により、近い将来、3Dスキャニングソフトウェアは何処へ向かうのでしょうか。おそらく、この技術が高速デジタル化が最も評価される計測業、リバースエンジニアリング、そして検査の分野へ更に深く参入していくことに繋がるでしょう。

目次
著:
Paul Hanaphy

Paul Hanaphy

テクニカルリポーター