3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artec社製3DスキャニングとAIフォトグラメトリを用いたオランダを象徴する風車の修復

課題:オランダのインフラ修復専門業者がキャプチャの困難となる状況で予定された修復を実行できるよう、風車全体を内から外までデジタル化すること。

ソリューション:Artec Leo、Artec Ray II、AIフォトグラメトリ、Artec Studio、及びDJI社製ドローン

結果:計測向けやリバースエンジニアリングでの代替品としての利用に十分な正確さをもってキャプチャされた、風車の外構、内部機構双方を網羅した完全な3Dモデル。

なぜ、Artec 3Dなのか:長距離用LiDARスキャナRay IIによるスキャンデータをAIフォトグラメトリによるデータと組み合わせることで、全体へのアクセスに制限のある巨大なオブジェクトの完全な3Dモデルの製作が可能となる。その上で、ワイヤレスで高速のLeoを利用することによって細かいディテールを取得することもできる。完成するデジタル複製はデータ容量も軽くエクスポートも簡単ながら、大事な箇所に驚くべき忠実性を発揮する。

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ルーロファレントスフェーン(Roelofarendsveen)の風車の4C社による完成3Dモデル。画像は、4C社のご厚意により掲載

建築の世界、特に非常に大切に扱う必要のある歴史的建造物やその他の貴重な史跡の改修においては、精度は絶対に不可欠となる。

立面設計、増築、補強、もしくは改装などの一般的なインフラの『改良』工程は、正しく行われないと、弱っていたり、不安定であったり、不規則な形状を持つ構造物を破壊する恐れがある。そのため、エンジニアは作業にかかる前にそのような場所を調査し、潜在的なリスクを推し量る。

一般に、この過程は地上型レーザースキャニング、あるいはLiDARスキャニングにより行われるが、多くの機器はジオメトリ(無色による)キャプチャの機能しか持ち合わせていない上、メッシュではなくデータ容量の重い点群の生成用であることが多く、サードパーティソフトウェアとの併用が難しくなる。そして、中でも最大の難題となるのが視線計測(line-of-sight measurement)であり、キャプチャ対象がスキャナの撮影範囲に制限されてしまう。

日常的にあるような小さなオブジェクトの3Dモデルを製作する場合は、このようなことは問題にならない。しかし、大規模のインフラのキャプチャにおいては、非常に高い場所の、手の届かないようなサーフェスのスキャンが実際に必要となる。不完全なデジタル複製を利用したのでは、コストのかかる業務上の過失に繋がり兼ねないからだ。

あるオランダの改修専門業者は正にこの問題に直面し、風車の内部、外部を更なる修復作業へ準備するために一対一のスケールでキャプチャできるような解決策を求め、4C Creative CAD CAM Consultants(4C)社へ連絡を取った。 その結果、外構はLiDARスキャナのArtec Ray II、内部はRay II、及びケーブル不要のArtec Leoの利用により、また、屋根はArtec StudioのAIフォトグラメトリアルゴリズムによりドローンデータを入力することでデジタル化することがソリューションとなった。

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AIフォトグラメトリにより デジタルで再現された風車の屋根。画像は、4C社のご厚意により掲載

風車のあらゆる角度からのキャプチャ

ある顧客によるオランダのアムステルダムとハーグの間にある歴史的風車の一台の修復の支援を依頼され、4C社の担当班は二〇二五年初頭の肌寒い朝に現地へ到着した。

担当班は風車の外観のキャプチャに、まずArtec Ray IIを利用した。この最長一三〇メートルの距離からの撮影が可能な三脚取り付け式の機器は設置も簡単で、空間全体のスキャンもお任せである上、その視覚慣性システム(Visual Inertial System、VIS)によってリアルタイムでのトラッキング性能も利用できる。今回の場合では、Ray IIが風車の回転翼、及び煉瓦の外観の高度に詳細なスキャンデータをもたらしたものの、屋根部分のデータが未だ取得できていなかった。

このため、4C社のオーナーであるエドウィン・ラパード(Edwin Rappard)はDJI社製ドローンを利用することにした。AIフォトグラメトリの動画互換性により、屋根のキャプチャは非常に簡単なものとなり、ドローン飛行未経験者であったものの、ラパードはドローンを風車の周りに飛ばし、『記録(Record)』ボタンを押すだけで見事な出来栄えのデータを得られるようになった。

しかし、担当班のデータセットは未だ、風車の歯車の複雑な機構を格納している内部の様子を取得していなかった。 このデジタル化には、毎秒三千五百万データポイントをキャプチャ可能なケーブル不要のハンドヘルド式機器であるArtec Leoの利用が必要であった。この過程では、Leoを使用することで寒く窮屈な空間に登ってゆき、高速性と正確さですべてをスキャンすることが可能となった。

風車内の空間が広めな場合は、異なったスキャナからのデータをArtec Studio上で簡単に組み合わせることができることを知った上で、担当班はRay IIも併用し、最高速度でデータを取得した。風車の中へ登っていった4C社の3Dスキャニング専門家バート・ウェバー(Bart Wever)によると、Artec社製3Dスキャニングは精度検査に必要なデータをすべてキャプチャし、当業務にぴったりの機器であることを自ら立証したようである。

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ルーロファレントスフェーンの風車の内部を描写した、4C社の完成3Dモデル。画像は、4C社のご厚意により掲載

「最大の課題は、風車への入口が非常に限られていたため、内部と外部の二つのデータセットを位置合わせすることであった。前面と後面の小さな扉しかない状態で、後の正確な位置合わせのために内部と外部からのスキャンデータを取得することは簡単ではなかった」と、ウェバーは説明する。「しかし、Ray IIにより、それほど問題も生じない中で業務を行うことができた。結局、位置合わせの完璧な躯体全体の3Dモデルの製作には、それで充分だった」

「チェッカーボードやマーカーも不要で、位置合わせは非常に上手くいった。Ray II搭載のVISシステムは、完璧に機能した。課題など、全く生じなかった」

Artec Studio上でのデータセットの結合

三つの全く異なったデータセットを組み合わせるのは大変なことだ、とお思いかもしれないが、その全工程をArtec Studioが効率化した。当ソフトウェアの多重解像度メッシュ化アルゴリズムにより、4C社はスキャンそれぞれからの高解像度データを使用することで、驚くほど詳細なモデルの製作を実現させた。その後、フォトグラメトリの採用により屋根のメッシュが生成され、更に詳細化したデータセットと統合された。

興味深いことに、ウェバーは使いやすいツールすべてを上手く使い分け、キャプチャしたデータをひとまとまりのパーツに分割し、インポート後に再び結合させることができることに気付いた。このことは、データの密度がウェバーの所有するコンピューターで扱える程度であることの確認にも役立った。Artec Studioのスキャンデータのデシメーション機能も同様の趣旨での利用が可能で、ポリゴン数を減少させ、3Dモデルの取り扱い、及び活用を更に容易なものにさせる。

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Artec Studio内でのX線モードでの4C社による風車のモデル。画像は、4C社のご厚意により掲載

担当班の手法のもう一つの利点は、フォトグラメトリによるデータをRay IIのスキャンデータのサイズに合わせるよう調節可能であったことである。結果として、正確な一対一スケールのモデルが完成した。

概して、データセットの結合により、非常に見事なディテールのキャプチャが実現した。回転翼パネルの狭い隙間から歯車の歯一本一本、及び風車の三つの独立した階層に至るまでのすべてが、はっきりと読み取れる。実際、この回転翼システムに保守整備の必要が生じた場合には、当データは非常に正確にキャプチャされているため、最終用途の予備のリバースエンジニアリング、そして製作に利用が可能である、とウェバーは考えている。

「この種類の建造物の場合、一ミリメートルの許容誤差はかなり大きいと考えられているため、Leoは3Dモデルのキャプチャ、及び歯車の歯一つ一つの復元には十分すぎるほど優れていることになる」と、ウェバーは説明する。「歯はかなり大きくもあり、巨大な歯車はその構造全体を回転させているので、小さなパーツの話などではない。もし上手く納めることができたならば、Ray IIで十分だっただろうと確信している」

建築分野での更なる可能性とは

最終的に、4C社の担当班は顧客の風車修復への利用に十分正確なデータをキャプチャしたが、それだけにとどまらず、更に広範囲なインフラ分野において、Artec 3D社ならではの3Dスキャニングとフォトテクスチャの組み合わせに大きな可能性を見出している。

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Artec Studio内の4C社の風車のモデル。画像は、4C社のご厚意により掲載

ラパードはAIフォトグラメトリのことを「3Dスキャニングへの補強には最適」と表現し、Artec Studioのように多様な3Dデータセットを組み合わせることのできるような「現在購入できるパッケージは他には見当たらない」と言う。ラパードは、容量の重い点群データよりも高度に詳細な3Dメッシュ一式を利用することで、建築、及び建設技術者は程なく測量を更なる高みへと導くことになるであろうと考えている。

「Ray IIとドローン、そしてもちろんLeoとの併用は史跡をデジタルで保存するには理想的であるが、3Dスキャニングの潜在的な可能性を多く見出せる市場である建設分野でも役立てることができる」と、ラパードは締めくくる。「3Dスキャニングへの扉を開いた当初は、まるで(その利点を広く伝える)宣教者のようだった。今、その頃と同じことをまたやっている。このテクノロジーはエンジニアリングの分野では日常的なものとなったが、建設業においては今でもなお驚きをもって迎えられている状況だ」

明らかに、建設は従来の技術が支配している分野ではあるものの、4C社のような3Dスキャニングのエキスパートが活動する中、Artec社の多種多様な3Dデータキャプチャ製品が当産業分野の近代化において独自の市場を創り出すようになるのは、間違いなく時間の問題であろう。

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