3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

計測用の3Dスキャン

2025年 5月 23日
長文
410
概要

従来のCMM(三次元測定機)では、オブジェクトを迅速に、そして傷つけないように測定するのが難航するケースがあり、特に穴や壊れやすい表面を持つオブジェクトを扱う際にそういった傾向があります。幸いなことに、3Dスキャンの進歩のおかげで、このような問題に対処できるようになりました。そのため、この技術はさまざまな部品検査の用途に対応できる手段として、CMMのシステムと競い始めています。

スキャナの種類
デスクトップ型、ハンドヘルド型、長距離用LIDAR、計測専用キット
パフォーマンス要因
精度、解像度、速度、拡張性、柔軟性、視野角
用途
デジタル化、品質管理、リバースエンジニアリング、変形解析、製品テストとイテレーション

3D計測とは何ですか?

Scanning for metrology

3D計測を通じて取得したデータを日々分析するエンジニア。

製造業の世界では、品質が最も重要となります。工業規模で部品を大量生産することは結構なことですが、もしそれらが期待通りに機能しなければ、エンドユーザーにとってはあまり意味がありません。部品が基準を満たしているかどうかを評価する際、製造業者は通常、部品の寸法を初期設計と比較して測定します。そのような部品の欠陥を見つけ出すプロセスは、しばしば「3D計測ソリューション」と呼ばれる技術に依存する多くの方法の一つです。

一般的に、この用語は部品の表面の正確な3D測定値を得るためのあらゆる方法の説明に使用されます。自動化されたツールが導入される前は、こういった分析はマイクロメータやハイトゲージなどの測定器を使用して、大体手動で実行されてきました。最近では、三次元測定機 (CMM) が導入されました。これらのシステムには、スキャンを進行していくにつれてオブジェクトの表面に沿ってフィーチャーをキャプチャする、触覚センサーもしくは光学センサーを取り付けることができます。

キーポイント

かつてCMMは3D計測における業界標準でしたが、現在では3Dスキャナが優勢になりつつあります。

CMMには、欠点が全くないわけではありません。多くのCMMは、タッチトリガープローブを使用し、部品を検査するために対象物のあらゆる表面に接触しなければなりません。スキャンが難しいサーフェスや、スキャナが届きにくい箇所を持つ製品をスキャンする場合、後からソフトウェアで明確でない詳細部分を追加しなければならず、これによって精度を下げてしまう可能性があります。部品に触れる必要性があると、その部品を損傷するリスクも高まり、CMMで傷や擦り傷がついてしまうことも珍しくありません。これらの問題により、法科学アナリストや考古学者など、壊したり誤って測定したりすることが許されない対象物を扱う人々にとって、この技術は魅力のないものになってしまいます。

Scanning for metrology

部品の検査に使用されている座標測定機 (CMM) プローブの拡大画像。

CMMに関する他の課題といえば、その価格や、設置の際にスペースの制約を念頭に入れなければならないことです。CMMには高額な初期費用 (場合によっては、米ドルで25万ドルまでに及ぶ場合もあります) がかかるだけでなく、換気装置や振動減衰装置も必要となります。

そしてまた、リードタイムがCMMにはあります。CMMのセンサー(プローブ)の性質からして、1度のタッチでは限られたデータしかキャプチャすることができません。これにより、大きく複雑な構造物の測定が機械オペレーターにとって本当に手間のかかる作業となり、最終的にはプロジェクトの期限を守ることの実現可能性を脅かすことになります。

こうした速度や費用、精度の非効率性により、3D計測分野では 3DスキャンがCMMにとって代わる、より魅力的な代替手段となりつつあります。

計測用3Dスキャナの種類

計測用3Dスキャナを導入する前に、最初に考慮すべき3つの事項は(当然かもしれませんが)、対象オブジェクトのサイズ、複雑さ、そして精度です。これらの重要な要素は、市場に出ているデバイスの中で、特定の精密測定ニーズに最適なものを決定する上で重要な役割を果たします。

デスクトップ型3Dスキャナ

超高解像度と精度でマイクロスケールのモデルを作成するために設計されたデスクトップ型計測システムは、表面の最も微細な詳細をキャプチャすることができます。このため、このような3Dスキャナは、オフィスやラボでのリバースエンジニアリングや検査に最適です。

Artec Micro II

Artec Micro IIの3Dスキャナを使用してデジタル化されている、小さく複雑なオブジェクト。

ただし、これより大きなサイズのコンポーネントはデスクトップ型システムの容量を超える可能性が高いため、これらのコンポーネントはこぶしよりも小さいのが理想的です。これを念頭に置くと、コンパクトな計測用3Dスキャナは、当然のことながら、小型で複雑なコンポーネントをキャプチャする場合に最適であり、光を反射する表面のあるコンポーネントを測定することさえもできます。このような機械は、プラスチック射出成形品であろうと、3Dプリント品であろうと、ベアリングやインペラ、そしてバルブなどの複雑な工業用部品のリバースエンジニアリングや品質検査によく使用されます。また、それらは歯科や宝石などの他の業界でも使用されています。

ハンドヘルド型3Dスキャナ

完全に自由な動作で、制約なく展開できるポータブルの計測用3Dスキャンソリューションをお探しですか?  その場合には、ハンドヘルド型の3D計測デバイスが最適かもしれません。それらを利用すると、ユーザーは中~大型のオブジェクトを柔軟に一定のペースでスキャンできるようになります。その3Dスキャナがコードレスタイプであれば、操作性が向上し、困難な表面や複雑なフィーチャーを持つオブジェクトのスキャンが容易になるため、ハンドヘルド型を使用する利益はさらに増加します。

ハンドヘルド型デバイスには、さまざまな範囲やテクスチャ解像度、そしてポイントキャプチャ機能を備えたものが多数存在するため、このカテゴリでは、新しい利用者が特定のアプリケーションのニーズに合ったデバイスを見つけるのが最も簡単です。

大型で高価なCMMの代わりにハンドヘルド型3Dスキャンを使用する選択肢がポピュラーとなっている他の理由として、そのアクセシビリティ(導入のしやすさ)があげられます。多くの場合、3Dスキャナは導入コストが低く、使いやすいと言われています。Artec Leoを使用すると、内蔵されているカラーカメラと3Dカメラを併用することで、そのディスプレイを介してスキャンの進行状況をリアルタイムでトラッキングすることもできます。

Scanning for metrology

ワイヤレスでAI駆動のArtec Leo3Dスキャナのインタラクティブな5.5インチタッチパネル。

産業製造に従事している人々は、部品検査を自動化することもできます。手持ちの3Dスキャンデバイスは通常、ロボットアームに取り付けることができ、これによりAIを使って制御することが可能です。これにより、最適なスキャンパスを使用して部品のバッチを測定できるため、キャプチャ速度と精度のメリットを得ることができます。

キーポイント

ハンドヘルド型3Dスキャナは、速度や精度、そしてスケールの点で万能製品である傾向があります。また、多くの場合で初期費用が最も低く抑えられることから、最も人気のある選択肢となっています。

ロボット搭載型の3Dスキャナ

ここからは、ロボットアームを利用したスキャンソリューションに移ります。ここでの3Dレーザースキャナ自体はロボットアーム専用の特別なタイプというわけではありませんが、このような構成は、自動化の興味深い手段となります。
ハンドヘルド型システムであれ、長距離用レーザースキャナであれ、特に産業環境で機械化を採用すると、多くの潜在的なメリットが得られます。

ロボットアームを利用するスキャンの主な利点の1つとして挙げられるのは、3D計測に人間の介入が削減されるため、製品が誤って測定される可能性が減少する点です。このようなソリューションが生産ラインに導入された場合、部品の品質を分析しながらデータを取得するという同時作業を一定速度で実行することに特に優れています。

したがって、3Dスキャナを取り付けたロボットアームは、従来のCMM による生産性の高い品質保証を行う際に発生し得るボトルネックに対する潜在的な解決策を提供します。ただし、3D計測ソリューションを固定ベースに取り付けると、当然ながら動作は決まった領域に制限されます。そのため、固定ベースを利用する構成には事前に入念な計画が求められ、動作の柔軟性が前提条件となるユースケースには推奨されません。

固定型3Dスキャナ

特定の3Dレーザースキャナを使用することで、沖合の風力タービンをはじめ、建物全体や広大な屋外環境に至るまで、実に壮大なスケールでのオブジェクトのスキャンが可能になりました。

そういった場合、多くの人々がLIDARの3D計測デバイスに注目しますが、それにはきちんとした理由があります。 これらの3Dスキャナは、固定の位置で使用されるように設計されており、人間の介入を最小限に抑え、離れた場所から正確にスキャンすることができます。

Scanning for metrology

Artec 3Dの最新の長距離用3Dレーザースキャナ、Artec Ray IIが稼働している様子。

このテクノロジーが当てはまるのは小規模の用途のみで、その分野ではハンドヘルド型オプションの方が適していることがよくあります。さらに、特にデータを実際に使用するならば、参入障壁は非常に高いと言えます。したがって、この種のスキャナを採用する前にそれに関する専門知識をしっかり得ておくことをお勧めします。

伸縮式の三脚に固定できるように設計された、構造化光および赤外線のスキャンソリューションもあります。ただし、離れた場所のさまざまな高さからデータを取得できるようにこれらを設定することもできますが、やはり定位置に固定されているため、ハンドヘルド型デバイスを優れたキャプチャツールにするポイントである操作性は、固定型デバイスにはありません。

キーポイント

計測3Dスキャナを入手する前に、オブジェクトのサイズとスケールを検討しておきましょう。ターゲットオブジェクトはどのくらいの大きさで、そのうちの何個をスキャンする予定ですか?

上記されたすべての3Dスキャンソリューションの代わりになにか特殊な手段をお探しの場合は、フォトグラメトリを検討する価値があるかもしれません。Artec計測キットのようなシステムは、最大2ミクロンという驚異的な精度での測定を実現し、誤差を最小限に抑えながら品質検査や変形解析作業をこなします。ということは、実際にこれは車両部品や貯蔵タンクなどのコンポーネントのジオメトリの変化を高精度で測定し、荷重下での材料の変形を分析するために使用できることを意味します。

このキットは単独で導入することも可能ですが、より広範な産業ワークフローに統合させたり、長距離にわたってさらに高い3Dスキャン精度を実現させるための参照ツールとして使用することもできます。Artec Studioには、ユーザーがフォトグラメトリと3Dスキャンのプロセス全てを1か所で実行できる、計測キットのプラグインも備えています。

2025年における計測用3Dスキャナのベスト製品

以上が、計測用3Dスキャナのさまざまなカテゴリを (大まかに) 要約したものです。では、一体どのモデルを採用すべきでしょうか? それでは当社の最新の3D計測ソリューションの利点をいくつか見てみましょう。

Artec Ray II

まずはじめに、Artec 3Dの最長距離用3DスキャナであるArtec Ray IIを見てみましょう。このデバイスを使用すると、最大130メートル離れた場所からオブジェクトを高精度でキャプチャすることができます。実際には、これはユーザーがプロペラブレードから工場全体に至るまでのオブジェクトをより迅速にデジタル化したり、測定できることを意味し、データキャプチャに費やす時間を短縮させてROI(投資収益率)を向上させることができます。

Ray II の驚異的なスピードは、視覚慣性システム (VIS) によって補完されます。VISは、フィーチャーのトラッキングと高度なアルゴリズムを利用して、検出する3D空間をその都度直感的にナビゲートし、スキャンを事前に位置合わせします。それらの機能とデバイスの内蔵ディスプレイのおかげで、ユーザーは現場で得たデータを自動的に位置合わせして、進行状況をリアルタイムでトラッキングすることもできます。その結果、スキャンし損ねた可能性のあるものをスキャンするために、スキャン現場にもう一度戻らなくてはならないケースが減少します。

Scanning for metrology

ユーザーは、Artec Ray IIの3Dスキャナの内蔵コントロールパネルを通じて、すべての主要機能にアクセスできます。

しっかりと三脚に取り付けられたRay IIは、その半径内のすべてのオブジェクトをワンクリックでキャプチャすることができます。これにより、自動車や航空機などの巨大なオブジェクトや車両の品質保証プロセスが、高い精度で内外を問わず効率化されます。このデバイスを使用して、建物のサイズやレイアウトをキャプチャすることもでき、工場のフロアでの検査目的にも利用できます。三脚に取り付けることで、Ray IIは空間内のさまざまな場所に置くことができ、スキャン対象をあらゆる側面からキャプチャすることができます。

必要に応じて、Artec Ray II はタブレットやスマートフォンからも操作ができるため、持ち運びしやすく、遠隔操作も可能です。たとえば、船の外装のスキャンには、このデバイスを船の上層部の高い位置に取り付けて1階から操作することができ、PCのモニターまでのケーブル配線を気にせず、進捗状況をトラッキングできます。

Artec Micro II

当社には、そんなRay II とは全く対極的なスキャナであるArtec Micro IIもあります。その超高精度デバイスを使用することで、最大5ミクロンの精度で対象オブジェクトをスキャンすることが可能です。実際、この精度のおかげで、Artec Microはリバースエンジニアリングや複雑なデザインの小型オブジェクト (小型の工業用ブラケットや歯車、ベアリングなど) の品質検査を実行するのに最適です。必要であれば、そのほかにも高級ジュエリーや歯科模型をキャプチャすることも可能です。

4つの13MPカメラを使用して、Micro IIは微細な詳細をキャプチャし、見えにくい領域の奥深くを覗き込むことで、詳細かつ再現性の高い結果を実現します。高度に自動化されており、一般的なデスクトップに収まるコンパクトなサイズのため、既存の作業スペースにも簡単に統合できます。

キーポイント

小型から大型のものまで、現在ではさまざまな3Dスキャンソリューションが存在しており、ユーザーはそれぞれのニーズに最適なオプションを選択できます。

Artec Spider II

ブルーライト技術を活用したハンドヘルド型デバイスであるArtec Spider IIは、高精度の3Dスキャン用に構築されているという点ではMicro IIに似ていますが、その持ち運びやすさは、より幅広い用途に使用できることを意味します。 Spider IIは、大型オブジェクトを高解像度でキャプチャできる一方で、青色光技術に依存しているため、最大0.05 mmの精度を実現できます。

Artec Spider II

メトロロジーグレードのArtec Spider IIの3Dスキャナがクランクケースをデジタル化している様子。

Spider IIは、より大型の工業用オブジェクトにおける細かい領域をキャプチャするのにも最適です。実際、この非常に多用途な3Dスキャナを使用すると、複雑なジオメトリや、シャープなエッジ、そして薄い骨格などを備えた部品を簡単にレンダリングできるので、そういったスキャナは3D計測ソリューションとして非常に優秀です。

Artec Point

Artec Pointは、当社の他のハンドヘルド型3Dスキャナとは異なり、ターゲットベースです。つまりそれは、通常、ユーザーはデータキャプチャの前にオブジェクトにターゲットを追加する必要があることを意味します。

理論的には、これにより適用可能性が制限されます。しかしその代わりに、Artec Pointがターゲットに依存することで、数多くのメリットが生まれます。このデバイスは、最大0.02mmという非常に高い精度と解像度を備えており、許容誤差が重要視されるメトロロジーグレードのアプリケーション向けに特化して設計されています。Artec Pointは ISO基準の下でテストされているため、産業ユーザーは要求どおりに機能することを理解しています。

このスキャナの全体的なデザインは、精密なリバースエンジニアリングや検査にも適しています。アーチ状の角度の付いた外枠が特徴で、急な視野角を提供し、隠れた領域を「見る」ことができます。Artec Pointは、オブジェクトの種類に制限されることもありません。大型オブジェクトを迅速にキャプチャするためのモード、複雑なフィーチャーをキャプチャするためのモード、深い穴の内部をスキャンするためのモードの3つのスキャンモードがあり、ユーザーはアプリケーションに最適な設定を選ぶことができます。

Artec計測キット

高精度のスキャンをキャプチャしたり、工業用の測定を行うためのもう1つのオプションはArtec計測キットです。このシステムは構造化光ではなく、光学的なフォトグラメトリを中心とした3Dスキャンから構築されており、最大2ミクロンという抜群の単一点計測の精度でオブジェクトをキャプチャします。これは、この計測キットの広範なソフトウェアの互換性と連携して、メトロロジーグレードの精度での大型オブジェクトの変形解析や検査に理想的で、タービンブレードや航空機部品などに最適です。

Scanning for metrology

エンジニアが Artec計測キットを使用して大型のビルドを測定している様子。

Artec計測キットは、こうした業界での有効性が認められ、VDIや DAkkSなどの認定を受けています。そのため、メーカーは、このキットが米国とドイツに拠点を置く認証機関の厳格なテスト体制にすでに合格しており、高精度のスキャンをキャプチャする手段としてその価値が証明されているという安心感を持って、キットを導入することができます。

キーポイント

3Dスキャンはフォトグラメトリと併用することで、大規模なオブジェクトをより正確に測定できます。

このシステムはスタンドアロン型ソリューションとして使用することもできますが、ハンドヘルド型3Dスキャナの参照ツールとして使用することもできます。そうすることで、距離をおいた場所からのキャプチャの精度が向上します。とくに、大型オブジェクトをスキャンする場合はその傾向があります。実際、Artec製品を利用したフォトグラメトリと3Dスキャン両方を使用するユーザーは、15メートル以上の距離からのキャプチャで14 倍の精度を達成することができ、この手段の利点は、スキャンオブジェクトが大きければ大きいほどよりはっきりと見られます。

計測用3Dスキャナの選び方

ご覧のとおり、現在の市場にはさまざまな計測用3Dスキャナが沢山出回っています。では、一体どれを選択すべきかという問題が生じます。フォトグラメトリや構造化光、またはレーザースキャンの全ての側面において万能なソリューションなどは存在しませんので、このテクノロジーを導入する前に考慮すべき点がいくつかあります。

精度

ほとんどのデバイスは、数ミリメートル以内の精度として販売されています。実際には、この数字はスキャナがオブジェクトの実際の寸法にどれだけ近い測定値を取得できるかを示しています。もちろん、精度のレベルはモデルによって異なりますが、オブジェクトのデジタルツインを効果的に測定もしくは作成するには、(体積精度とは対照的に) 0.1mm以下のシングルスキャン精度が必要であることが一般に求められます。

3D計測に関しては、誤差の範囲が大きいほど、計測に使用したデバイスの効率が悪い傾向があります。たとえば部品検査などの用途では、初期の製品設計に沿って製造されたことを保証するためにデータの整合性が不可欠です。同様に、重大な誤差は、欠陥の検出とトラブルシューティング、製品の再現性の向上という品質保証の主な目標の達成を妨げる新たな障害となります。

解像度

3D計測用スキャナの購入をご検討中でしたら、キャプチャしたい詳細レベルがどの程度であるかも考慮する必要があります。暗い表面もしくは光を反射する表面や、貫通穴や深い窪みのある表面で覆われている複雑なコンポーネントのスキャンは、特殊で密度の高いオブジェクトのスキャンよりも常に困難になります。ただし、購入しようとしているスキャナが特定の仕様を満たしていることを確認することで、安心することができます。

Scanning for metrology

Artec 3Dの非常に正確な3Dスキャン技術によりキャプチャされた極めて詳細な3Dスキャン。

その中で最も重要なことの1つは、3D解像度です。この用語は、スキャン画像自体の解像度ではなく、結果として得られる3Dメッシュ上の2点間の最小ギャップを表します。解像度が高くなると、処理するデータポイントの数が増えますが、一般的にはより詳細なモデルも生成されます。フルカラーのテクスチャをキャプチャしたい方は、デバイスの「ピクセルあたりのビット数」も確認する必要があります。このBPP(ビット/ピクセル)が高いほど、カラーキャプチャ能力が向上します。

スケール

当然なことに聞こえるかもしれませんが、3Dスキャンの導入を検討している方は、まず、デジタル化または測定する対象オブジェクトの大きさを考慮する必要があります。たとえば、ハンドヘルド型デバイスを使用すると、さまざまな中~大型オブジェクトをキャプチャできます。Artec 3Dでは、この柔軟性こそが、コードレスで完全に操作可能なArtec Leoが人気を保ち続ける理由の1つです。ただし、マイクロスケールでのスキャンや、航空機や建物などの構造物等の特大型オブジェクトのキャプチャの場合は、他のデバイスの方が適しているかもしれません。

Scanning for metrology

Artec Micro IIは細部までキャプチャしますが、Artec Ray IIははるかに大型なオブジェクトを処理できるように設計されています。

では、3Dスキャナの能力はどのようにして判断できるのでしょうか? デバイスの作動距離は、特定のオブジェクトをキャプチャするためにどのくらいそれに近づく必要があるかを示します。その作動距離の数値が高い方がいいのか、それとも低い方がいいのかは、(少なくともある程度は)使用する用途によって異なります。離れた距離から風景やインフラをキャプチャする場合は、長距離用のLIDARスキャンが最良の選択肢となる可能性が高いでしょう。その一方で、狭く窮屈なスペースで作業を行う場合は、作動距離が短いハンドヘルド型スキャナの方が理想的です。

速度

使用する用途に応じて、小型部品を大量に3Dスキャンすることも、大型の構築物を少量3Dスキャンすることも可能です。大規模な仕様については上で説明しましたので、 次に、生産ラインなどの生産性の高い領域で、品質保証を目的とした3Dスキャンを行う場合に考慮すべき要素を見てみましょう。

比較検討が求められるいくつかの指標の1つは、デバイスのデータ取得速度です。多くの場合、ポイント/秒で表されるこの数値が大きいほど、オブジェクトのサーフェスに沿ったデータポイントをより迅速に取得できるようになります。多くの最新デバイスの3D露出時間にはわずかな違いしかありませんが、これも速度に影響を与えます。

お使いの3Dスキャナの視野角、もしくは指定された範囲内の距離からキャプチャできる最大領域も、スキャン速度に影響を与える可能性があります。例えば、精度が最適化されているSpider IIは、171×152mmの範囲内でのスキャンに優れています。  一方Artec Leoは、それよりも広い838 × 488 mmの範囲をカバーできます。つまり、どちらも同じ大きさの被写体をキャプチャできますが、Spider IIの方がLeoよりもキャプチャに時間がかかることを意味します。

ユーザーが3Dスキャナを使いこなせるまで時間がかかるほど、ユーザーの生産性が低下する傾向があるため、使いやすさなどの要素も生産性に影響を与える可能性があると言えます。柔軟性のあるハンドヘルド型デバイスを使用することで、計測しているオブジェクトとユーザーの間にある障害物を回避しやすくなります。したがって、スキャンの利便性は、ユーザーエクスペリエンスの問題だけではなく、ユーザーが手元のタスクを遂行する上で重要な要素となります。

持ち運びやすさ

Scanning for metrology

Artec Leoは完全にケーブルフリーなので、困難な状況でもスキャンを実行できます。

理論的には、ハンドヘルド型デバイスであれば、低価格の製品であったとしても、ユーザーがあらゆる角度から対象オブジェクトをキャプチャできるよう、自由に動き回れるようにしてくれます。ただし、それらにはケーブルが付属していることが多く、実際にはユーザーの動きを制限してしまいます。したがって、こういった3Dスキャナのユーザーは、キャプチャするオブジェクトの位置だけでなく、電源ソケットからの距離も考慮する必要があります。

たとえば自動車業界において、組立工場で車両の内部をスキャンする場合、ケーブルは車のシートなどの車内の障害物の周囲を柔軟にくぐり抜けることができるでしょうか?

キーポイント

事前に計画を立てることで、初期の3Dスキャンの問題を克服することができます。たとえば、部屋や照明の制限によりスキャンが難しい場合は、ターゲットのオブジェクトを別の場所に設置できますか?

たとえば自動車業界において、組立工場で車両の内部をスキャンする場合、ケーブルは車のシートなどの車内の障害物の周囲を柔軟にくぐり抜けることができるでしょうか?

Leoなどの3D計測ソリューションは、ケーブルがまったく不要なため、これらの問題を克服します。このデバイスは世界初のワイヤレス型かつAI搭載の3Dスキャナであるだけでなく、持ち運びやすさに優れているため、届きにくい角度からでもデータをより効率的に収集できます。内蔵スクリーンのおかげで、ユーザーはスキャン状況を確認するためにモニターを切り替え続ける必要がなく、適切なデータポイントをすべて取得することに集中できます。

CMMと3Dスキャナの違いとは

上記の基準から、3Dスキャナが産業計測の分野に進出している理由は明らかです。CMMは精度の点ではわずか数ミクロンにしか達しないため、依然として若干の優位性を持っていますが、多くのアプリケーションではそれほど許容誤差が重視されるわけではありません。そのような場合、柔軟で高速なスキャンが好まれることがよくあります。

これは、繊細なオブジェクトや汚染の問題で触れることができないオブジェクトをキャプチャする場合に特に当てはまります。3Dスキャナは、複雑な自由形状のフィーチャーを持つアイテムを簡単にキャプチャするように操作できますが、プローブがそれらを検出するのは非常に難しい場合もあります。そのため、CMMは特定の航空宇宙や自動車のユースケースでは優位性を維持できる可能性がありますが、3Dスキャンは他の分野でのリバースエンジニアリングや分析に対して高速で柔軟性が高く、信頼性の高い代替手段を提供します。

キーポイント

速度や精度の指標に焦点を当てることは簡単ですが、柔軟性がデバイスを最大限に活用するための鍵となることを忘れないようにしましょう。

3D計測はどんな場面で使用されますか?

品質保証

計測用3Dスキャンが最も使用されている用途の1つは部品検査です。産業の分野では、メーカーはこのテクノロジーを使用して、最終的なコンポーネントが設計どおりに動作できるかどうかを検証します。このプロセスは、製品の品質(販売用に製造された場合は顧客満足度)を保証するだけでなく、コストと時間のかかる製造エラーを回避するためにも重要です。

このプロセスは、製品の品質 (販売用に製造された場合はそれに加えて顧客の満足度) を確保するだけでなく、コストと時間のかかる製造エラーを回避するためにも不可欠です。航空宇宙などの規制が厳しい業界では、コンポーネントは多くの場合で激しい熱や重量、耐薬品性の基準を満たす必要があります。よって、コンポーネントの不良品は重大な障害のリスクをもたらします。3Dスキャンを使用すると、部品がきちんと仕様に従って確実に製造されていることを確認できるため、このような事態を防ぐことができます。

航空分野での実用例として、ルクセンブルク航空救助隊のチームはこれまでに ヘリコプターの3Dモデル化にArtecスキャンを導入したことがあります。これにより、エンジニアは、悪天候での飛行中や激しい着陸の際に受けた衝撃によって機体の外部に生じた損傷を検査することができました。収集されたデータを使用することで、チームは欠陥を迅速に評価および診断し、ヘリコプターのダウンタイムを最小限に抑え続けることができます。

リバースエンジニアリング

3D計測ソリューションで得られた測定値を活用することで、コンポーネントのパラメータをリバースエンジニアリングしたり、デジタル化や微調整を行うことで、コンポーネントのパフォーマンスを向上させることもできます。このようなデジタル化は、生産中止部品を調達する場合に特に便利です。部品は一度生産中止になると、希少になったり値段が上がりますし、場合によっては完全に入手不可能となってしまうためです。3Dスキャンプロセスは、古い機器を段階的に廃止するのではなく、それらを修理したり維持することで、費用対効果を高くする手段をメーカーに提供します。

もちろん、これを効果的に行うには、ユーザーが部品の発明者の設計意図を把握し、累積したエラーを最小限に抑えることが求められます。暗いサーフェスや反射するサーフェスを持つ部品、また有機的な形状を持つ部品も、当然ながらデジタル化が難しくなります。しかし、Artec Studioのようなソフトウェアパッケージを使用すると、スキャンの自動位置合わせが可能になるだけでなく、ユーザーに手動および自動サーフェスツールを提供することで、そういった難しい部品のデジタル化が確実に容易になってきています。

Scanning for metrology

偏差領域を評価するために使用されているArtec Studioの距離マッピング。

より高度な3Dスキャン検査ツールが必要な場合は、Artec StudioはZEISS INSPECT Optical 3DGeomagic Control Xのようなソフトウェアとのシームレスな互換性も備えています。 

製品テストとイテレーション

製品開発においては、デザインを迅速にデジタル化し、イテレーションを実行できることが成功の基本となります。3Dスキャンにより、高精度の3Dモデルを迅速かつ簡単に作成できるため、幅広い設計プロセスが加速化します。同様に、初期のプロトタイプ検査は欠陥を特定して解決するにあたって不可欠であり、ここでも3Dスキャナが重要な役割を果たすことができます。

例えばASICSでは、ランニングシューズは3Dスキャンされ、 シューズのデザイン検査や改良、マーケティングのために、Spider IIの前モデルであるArtec Space Spiderを使用して3Dスキャンを行っています。この技術を企業のワークフローに統合することで、視覚化能力が向上し、商品が店頭に並ぶ前により良い評価を行えるようになりました。製造業では、同じコンセプトを製造中止となったパーツのキャプチャに適用することで、改修時にデザインのアップグレードを実施する手段として活用できます。

変形解析

航空宇宙の構造と同様に、自動車産業に見られる設計要素の多くは荷重がかかると激しい変形を受けます。したがって安全上の理由から、自動車メーカーは継続的な使用によって彼らの製品の性能がどのような影響を受けるかを分析する義務があります。しかし、どのようにしてそのような仕事を迅速に、そして必要とされるメトロロジーグレードの精度で実現できるでしょうか?

現在、多くの企業が 3Dスキャンを使用してプロトタイプがどのように動作するかを評価したり、貯蔵タンクなどの部品が時間の経過とともに異なる運転条件の影響を受ける様子を評価しています。CMMとは異なり、このテクノロジーはかなり速いペースで導入することもできます。そのおかげで、稼働中の生産ラインで自動車のシャーシに溶接するスタッドボルトなどのコンポーネントの位置を分析するのに適しています。

法科学分析の分野では、交通事故を再現する手段として計測用3Dスキャナが使用されています。このテクノロジーを利用して、Origin Forensicsのような交通事故の調査会社は現在、 車の残骸の完全な3Dのデジタルツインを作成しています。これらを使用することで、特定の衝突事故の方向と規模、そして衝突した車両の安全機能がきちんと予定通り機能したかどうかを正確に判断できます。

Scanning for metrology

Artec Studioでの検査に備えて、Dodge・チャージャーのスキャンを同じ車両のサンプル3Dモデルと結合しています。

より大規模な場合、3Dスキャンは、時間の経過に伴うインフラストラクチャの劣化を検査するのにも最適です。アメリカでの研究により、この技術は全国の橋などの構造物の能力を高精度かつ高速で明らかにすることができることが示されています。

結論

結論として言えることは、計測用3Dスキャンの用途が非常に多様である中で、このテクノロジーは製品品質の向上に特に効果的なのは明確であるという点です。このテクノロジーは、主に正確な3D測定値の収集を容易にすることで製品品質の向上を実現しており、メーカーは最終部品がどのように機能するか、そしてまたその理由をより深く理解できるようになります。

実際、この情報によって3Dスキャンユーザーは製品をより迅速に市場に投入できるだけでなく、現在も使用されている製造中止部品をリバースエンジニアリングすることも可能になります。他には、ロボットアームに取り付け可能なデバイスに注目し、現在のCMMよりも大規模かつ緊急にテクノロジーを導入できる企業もあります。

こうしたスピードや規模、そして柔軟性の利点により、3Dスキャンプロセスは、特に検査やリバースエンジニアリングのアプリケーションにおいて、座標測定機の使用などの従来の測定方法に代わる魅力的な方法となっています。

目次
著:
Paul Hanaphy

Paul Hanaphy

テクニカルリポーター

ラーニングセンターに

さらに詳細が記載されています

世界最先端の3Dスキャナの数種が、どんな大きさの、かつどのような複雑さを持つオブジェクトもキャプチャしていく過程を本当の意味で充分に把握するには、まず、構造化光の役割について詳しく知ることが必要です。この簡単に読める記事では上記の点に加え、CMM機器やCGIフォトグラメトリなどの他のテクノロジーよりも、構造化光を利用する方が優れている点についても学んでいただけると考えています。また、構造化光3Dスキャナを扱う際の課題となる面についても、一部ご説明します。

リバースエンジニアリングとは、物理的な部品を分解して測定し、その設計や作動の仕組み、製造方法を解明するプロセスのことです。リバースエンジニアリングは、巨大な航空母艦から建築物、そしてスイス製時計の小型連動ギアまで、あらゆる物に対して行われるものです。

インターネットで入手可能な、人気3Dスキャナの一覧を確認したところ、そのほとんどはスキャン対象のオブジェクトの大事な要素に関する情報が含まれていないことに私達は気がつきました。オブジェクトのサイズや、スキャナを使用するアプリケーションなどの重要なカテゴリは対象になっていないのです。このレビューは、そんな欠陥情報を盛り込み、あなたのプロジェクトに最適な3Dソリューションを見つけ出す手助けをすることを目的としています。