高額なロストフォーム鋳造法でのエラーのリスクをArtec Leoを用いた検査により大幅に低減
課題:発泡体の鋳型を事業者に送付して金属製の鋳型を製作してもらう前に、その正確性を確実なものにすること。発泡体の実物大モデルの加工は迅速、簡単な上に経費も掛からないが、完成する鋳型に狂いがあれば利用不可能となり、修復するにも高額の経費がかかる可能性がある。
ソリューション:Artec Leo、Artec Studio、及びZEISS Inspect Optical 3D
結果:石膏製の鋳型のデザインの記録、CADとモデルの直接比較、そして完全な品質管理を可能とするミリメートル単位以下の正確度での検査ワークフロー。完成した鋳型はLeoによっても検査が行われ、形状の正確性、及び産業基準への準拠が確認された。
なぜ、Artec 3Dなのか:Artec EvaからLeoへのアップグレードにより、この製造企業は同程度の正確度を保ちながら、より速いペースでの計測ができるようになった。Leoのワイヤレスによる多用途性、及び撮影範囲の更なる幅広さも大規模の鋳型のキャプチャを効率化する。そして、Artec Studioを利用することで、担当班はスキャンデータから3Dモデルを作り上げ、詳細な検査のためにZEISSソフトウェアへシームレスに送付することができる。

大型の自動車部品の発泡体を用いた鋳造(ドアの鋳物)。
デジタル・マニュファクチュアリングが進化し続ける中、個別の設計による特注の製品の生産もより簡単になりつつある。しかし、ほとんどの主要産業においては、経済的に実行可能とするには連続生産が必要となり、これはスケーラブルな製造に依存する、というのが現実である。
この点に関わるのは、機械加工、プレス加工、成形、製品組み立て、もしくは繊維製品の生産である。また、最も古い技術の一つではあるものの、鋳造も未だに非常に普及している。鋳型は今では様々な方法で製作することができるが、鋳造工程は似かよっていることが多い。素材が完成品の形をした空洞部に注ぎ込まれ、それが固まると鋳型が開けられ、成形された部分が取り出される。その後、必要であれば、最終的な用途のために成形部に後処理が施される。
一般に、鋳型の製作方法は、二つの点で異なってくる。すなわち、鋳造するよう設計された素材、そして、ろう、プラスチック、金属、発泡剤などの種類に関わらず、頼りとする犠牲材料である。後者は、その低コスト性、滑らかなサーフェス、及び加工の容易さから、既に中国やインド、イタリア、ドイツ、並びにアメリカなどの主要な市場で広く利用されている上、より幅広く、管理も簡単なワークフローにも上手く適合する。

産業用鋳型でいっぱいになった倉庫。
ロストフォーム鋳造法では、発泡体の鋳型の切断、あるいは組み立てにより製品形状が作成される。熱くなった金属から保護する目的で、その表面はセラミックの懸濁液で覆われており、補強のためにケイ砂の中に保管される。最後に、 熱せられた合金が鋳型へ流し込まれ、その過程で発泡体を気化させる。後に残ったコーティング部のセラミックとケイ砂は、結果としてできた空洞内の素材を成形し、製品の鋳型を作成する。
しかし、ロストフォーム鋳造法の効果的な実践を阻む恐れのある課題もある。例えば、負角を持つ鋳型はパーツを一度で抜き出すことが難しい。その上、工程の中で、発泡体の鋳型は第三者企業へ送付され、金属により製作されることも多い。その場合、送られてきた鋳型が要求された許容値を確実に満たすようにするには、どうすれば良いのだろうか。
この現状を打破しようとしているのが、Artec 3D社のインドの顧客の一社である。Artec Leoによる3Dスキャニングを利用し、この製造企業は鋳型、及び完成した鋳物を出荷前後に検査している。このことで、同社は発泡体の鋳型が設計通りの形で施設を離れ、また、更に重要な点として、金属製の鋳物が必要基準を満たしていることを確認している。この段階で失敗すれば、その修整に七十万ドル、もしくは、鋳造を一からやり直す必要のある使い物にならなくなった大きなパーツの場合、それ以上の経費が掛かることになる。
Leoは如何にロストフォーム鋳造法を最新化させているのか
Artec社の最も新しい顧客となる、この鋳型製作企業は主に大規模な業務を行っており、発泡体による鋳造が理想的な手法となる。鋳型を作るために必要な靱性の高い鋼のようなものを取り扱うのは非常にコストがかかる上、細心の注意を払って行わないといけない。無駄になった素材も利益に影響する。これに対し、発泡体は安価な上、適用も簡単である。 同社は最近のプロジェクトの一環として、このことを最大限に実践して見せた。

発泡体の切断、及び発泡体鋳造工程の一部が行われている作業場。
大きく、入り組んだ形状のシャシーのプレス成形発泡体の製造を任された同社は、発泡体を利用してCADで設計したものにコンピューター数値制御(CNC)機械加工を施し、製造を委託するために事業者に送付することにした。 この車両用部品ワークフローにおいては、完成した鋳型は油圧により素材に押し付けられた上で数千もの自動車のドアを製造できるよう設計されているが、これはパーツの頑強さ、及び正確性に強く依存している。
以前であれば、Artec社製品のユーザーである同社は、〇.一ミリメートルの正確さを持つ実績のあるケーブル電源仕様の3D スキャナArtec Evaで発泡体の鋳型の正確性を確認していたであろう。しかし、検査は更に加速化できると察してからは、同社のワークフローに革新をもたらした、高速で全くケーブル不要の機器であるArtec Leoを配備してもらった、ゴールド認定パートナーのAltem Technologies社に頼っている。
LeoはEvaと同等の正確性を誇るだけでなく、その撮影可能範囲は更に幅広い。このことによりトラッキングの質が向上し、また、その更に高速なキャプチャ速度により、大規模な構造物全体の3Dスキャンデータも数時間のうちに取得可能となる。このような3D計測により、同社では発泡体の鋳型の製作段階での誤差の特定、及び工場からの出荷前の修整を追加の経費もかからない形で最終的に行うことができる。

鋳型に仕上げを加えるために利用されているCNC装置。
更に注意すべきなのは、鋳型製作における誤差許容値はワークフローが進行するにつれてその厳しさが増す、という点だ。機械加工による研磨の行われていない初期の設計品のサーフェスは、完全には平らにも、並行にもなっていない傾向にある。そのため、この段階での正確さは数ミリメートル以内の誤差の程度で良いことから、Leoは発泡体の鋳型、外注した鋳型の検査の双方において、仕様に沿った形で製造されていることを確認するには、ユーザーの必要性に対して余りある正確性を持った機器ということになる。
規格に適合した鋳造のための詳細な分析
迅速で直観的なデータキャプチャも大事であるが、当製造企業にはまだ、分析のために点群データをメッシュに変換する必要がある。ここで、Artec Studioの登場となる。このArtec社の最新のソフトウェアはリバースエンジニアリングや検査に必要な全てのものを網羅しているため、ユーザーはデータのキャプチャ、処理を行った後、完成したモデルを計測、分析、及び偏差の特定に利用することができる。
この使用事例においては、同社の担当班は取得したデータを詳細な分析のためのツールを搭載した、より高度な検査用ソフトウェアであるZEISS Inspect Optical 3Dへエクスポートすることにした。Artec Studioからのデータの共有はシームレスで、Pythonスクリプト作成やGD&T(幾何公差設計)ツールなどの機能に加え、ワークフローの各段階を記憶するパラメトリック原理(parametric principles)を基に開発されたソフトウェアへのアクセスも可能となる。
以上の機能性を利用し、担当班は収縮(フォーム鋳造法の分野では頻繁に起こる問題)、偏差、その他の製造上の問題点を査定する。以前なら、手作業でマイクロメーターを使用して鋳型を検査していただろう。3Dスキャニングへの切り替えによって、以上の検査は効率化、加速化され、その正確性は大幅に向上した上、次世代のデジタル検査ツールキットも利用可能となった。

アナログの産業用マイクロメーターを使用するエンジニア。
完成した鋳型の受け取りの点では、このレベルの品質管理はこの製造企業にとっては非常に有益である。工場を後にする際の発泡体の鋳型の状態の証拠が手に入れば、事業者が製造過程で誤差を生じさせた場合、その証明が可能となり、生じるコストの払い戻しを要求できるのである。
デジタル鋳造検査の次なる行き先は
既にArtec EvaとLeoを二台ずつ所有している当企業は今、社内の更なる数のハードウェアをアップグレードさせることで、今以上の最適化を実現させ、高まる需要を満たすために役立たせることを検討中である。この考えによれば、更にLeoに投資するか、もしくはArtec社初のレーザースキャナであるArtec Pointを導入することになる。後者は、同社が常に携わっているような、産業用計測水準の用途そのものに向けたISO認定を取得している。
自動車用の鋳物であっても、その他の大規模の金属製のオブジェクトであっても、この製造企業は多くの機会において、パーツの詳細な仕上げに機械加工を採用している。同社のCNCシステムは最高二十ミクロンの正確性で稼働しており、計測業水準の性能を持つPointは、最終的な検査にはうってつけであろう。

完成した巨大な産業用自動車部品の鋳物。
この製造企業のワークフローは見事ではあるものの、少し広い視点から見れば珍しいものではない。Artec社製3Dスキャニングは、多くの産業分野や市場で日常的に鋳造での検査に利用されているのである。米国では、総合注文生産鋳造工場であるWillman Industries社がスキャン・CAD分析向けにArtec Evaを採用している。
Ausco Products社も、Artec Leo、Space Spider、及びGeomagic Design Xを利用して同様のことを実践している。 外注したブレーキシステムの鋳型の分析、及び確認を正確性、許容値、性能基準に関して行っているのだ。 つまり、以上の使用事例からは、多様に見える産業用用途においても、エンジニアが顧客のニーズに適応していくことをArtec社製の3Dソリューションが可能としている様子が見て取れるのである。
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