3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

ウィーン自然史博物館収蔵の古代の骨に3Dの 命を吹き込む

課題:ウィーン自然史博物館では何百もの化石や標本、工芸品や模型を含む展示品を、現在展示されているものや収蔵されているもの両方を含め、オンラインでの使用やデジタル保存のために素早くスキャンした上で本物のような3Dモデルへ変換するための高速で簡単な方法を必要としていた。

ソリューション:Artec Leo、Artec Space Spider、Artec Studio、Blender、及びSketchfab

結果:Artec LeoとSpace Spiderを利用し、博物館は人気の高い二百以上の展示品の息を呑むほど正確な3Dレプリカを作成し、自身の人気のあるSketchfabのアカウントを通じてオンラインで共有した。このような3Dモデルに洞察に満ちた注釈を加えることで、博物館の学芸員は近隣や遠方からの来訪者との関わりの度合いを飛躍的に向上させた。

なぜ、Artec社なのか:この博物館が自身のスキャンから3Dモデル作成までのワークフローに求める最高水準の精度、解像度、及びテクスチャ復元を実現できるのは、Artec社製のハンドヘルド式3Dスキャナだけである。

Vienna Giant Deer

Artec Leoで巨大な鹿のスキャンを行う、ウィーン自然史博物館(NHMW)のヴィオラ・ウィンクラー。写真は、クリスティーナ・リットマンスパージャー(Christina Rittmannsperger)のご厚意で掲載

一万年以上も前の氷河期において、アイルランドは凍土帯に覆われ、強靭な耐冷性の草木が散在する身も凍るような、それでいて素晴らしい美しさを持った国であった。その世界は今日とは非常に異なるもので、地質年代が延々と繰り返されたことを実証するものであった。この氷河の広がりの中を歩き回っていた、真に注目すべき生物が存在し、その正体はアイリッシュエルクとしても知られている巨大な鹿(ギガンテウスオオツノジカ、Megaloceros giganteus)であった。

この鹿は現在のどの種のものとも異なり、かつての動物界の大物的存在で、肩高が二メートル以上あり、三メートル以上の長さを持つ枝角を持っていた。その凍土帯のまばらな枝葉の高さを越える巨大さは驚くような光景であり、氷河期のアイルランドの凍えるような広大さの中での生命の力強さを体現していた。

恐るべき風の吹く真っただ中、か弱く力のない日光の下で、この巨大な鹿は厳しい気候から氷河期の狼や熊などに至るまでの数々の脅威に直面し、自然に勇敢に立ち向かい、天敵を回避し、凍った沼地を歩いて渡りながら、自身や子供たちの生き残りをかけて闘った。

Artec Leoのスキャンデータから作成された、Sketchfab上の巨大な鹿の注釈付きの3Dモデル。画像は、NHMWのご厚意で掲載

しかし、そのような逞しい巨大鹿でさえ、運命の最終的な要求を回避することはできなかった。おそらく、氷河期のアイルランドで一般的に危険とされていた過酷な環境の泥炭湿原にはまってしまったようで、この鹿にはその死の直前にもがいた後が明らかに残っている。そのがっしりした身体は泥炭の中に沈められて貯蔵された形となり、静かに千年の間、再発見される瞬間を待っていた。

泥炭湿原からの復活

その沈黙は、鹿の骸骨が埋もれていた泥炭湿原から発掘された一八六〇年に破られ、その出来事は科学界も見逃しては置かなかった。驚くほど良い状態で保存されていた鹿の骸骨はタイムカプセルの役割を果たし、氷河期のアイルランドの生活や環境についての貴重な見識を我々に提示している。

この発見の後、巨大な鹿の骨格は場所を転々とし、最終的にウィーン自然史博物館(NHMW)を新たな住処とした。一世紀半以上を経て、歴史遺産の貴重な発見物の中から、この威厳のある生物の素晴らしい骨格の保存、及び展示に焦点が当てられた。

Vienna Giant Deer

Sketchfabでの巨大な鹿の注釈付きの3Dモデルの、脊髄に沿った首に向かう視点からの眺め。画像はNHMWのご厚意で掲載

しかしながら、この有史以前の驚異的な発見を、長期間の保存を確実なものにすると同時に、幅広い鑑賞者に開放するには、他では生じない一連の課題が伴った。この微妙なバランスを考慮すべき試みには、最新の3Dスキャニングテクノロジーと科学的に精度の高い非接触性で非破壊的な機能性を組み合わせた解決法が必要であった。

「フォトグラメトリは有益ではあるが、当博物館では理想的な選択肢とは言えない」と話すのは、NHMWの3D研究所の経営者であるヴィオラ・ウィンクラー(Viola Winkler)だ。「この手法で必要となる、長期の写真撮影や時間の掛かる処理が主な懸念事項の一つに挙げられる。我々は精度や効率性を向上させるだけでなく、鑑賞者の方々との更なる繋がりを深める手助けとなるソリューションを探していた」

Vienna Giant Deer

Artec Leoを利用して、巨大な鹿の胸郭内部をスキャン中のヴィオラ・ウィンクラー。 写真は、クリスティーナ・リットマンスパージャーのご厚意で掲載

Artec Leoを利用した博覧会展示品の再構想

この状況に登場したのが最先端の3DスキャナであるArtec Leoで、それ以来、この機器は当博物館の記録、オブジェクトの保存、仮想展示の手法に変化をもたらしてきた。ウィンクラーは、NHMWのもう一人の視覚化のエキスパートであるアナ・へイダー(Anna Haider)と共にArtec Leoを利用して、博物館の展示品に革新をもたらしている。この最高水準の3Dスキャナは優れたツールとして機能し、博物館の極めて貴重な芸術品の複雑なディテールや実物のようなテクスチャをキャプチャする。

「Artec Leoスキャナは、オブジェクトの保存や本博物館の収蔵物の3D版の作成の手法を変えた。 その速さ、精度、そして使い易さにより、我々のワークフローは大幅に改善された。時間を要するフォトグラメトリ工程にとって代わるものが利用できるようになり、嬉しく思っている」と、へイダーは語る。

Vienna Giant Deer

巨大な鹿のスキャンデータをリアルタイムで確認するため、Leo背面のタッチスクリーンを利用している様子。写真は、クリスティーナ・リットマンスパージャーのご厚意で掲載

NHMWは、化石やその他の幅広い種類のオブジェクトの極めて小さい、最も複雑な部類のディテールのキャプチャに理想的な超高解像度のハンドヘルド式3DスキャナであるArtec Space Spiderも利用している。

スキャンデータからインタラクティブな3D モデルへ

Artec Leo、及びSpace Spiderによる化石やその他のオブジェクトのスキャンが完了すれば、そのデータをオブジェクトのサーフェス全体を描写した、ミリメートル単位以下のレベルの精度を持つ総合的な3Dポリゴンメッシュへ変換する必要がある。

Vienna Giant Deer

巨大な鹿の、Leoによるスキャンデータの位置合わせ前の状態を示すArtec Studio上のスクリーンショット。画像は、NHMWのご厚意で掲載

Artec Studioソフトウェアは、この変換過程での中心的存在となる。ウィンクラーとへイダーは、Artec 社製のスキャナでキャプチャされた生データをArtec Studioへインポートする。ソフトウェア上では、完成される3Dメッシュはあらゆるフォーマットの3Dモデルへと変換される。

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位置合わせ過程で、巨大な鹿のLeoによるスキャンデータが正しい位置に設置される様子を示すArtec Studio上のスクリーンショット。画像は、NHMWのご厚意で掲載

通常では、二人は自身の3DスキャンデータをOBJファイル形式で、テクスチャをPNGファイル形式でエクスポートしているが、ウェブ上のアプリではBlenderと互換性のあるGLBフォーマットを利用する場合もある。「数あるアプリケーションの中でも、Artec StudioとBlenderの間のシームレスな統合は、本物のような3Dモデルを作成するための円滑で効率的なワークフローを簡単に実現する」と、へイダーは語る。

Vienna Giant Deer

Leoのタッチスクリーンで、3Dスキャンデータの確認を行うヴィオラ・ウィンクラーとアナ・へイダー。写真は、クリスティーナ・リットマンスパージャーのご厚意で掲載

Artec Leoの魅力の一つは、博物館の来訪者が館内の物理的制約内では不可能な方法で観賞できる、インタラクティブなプラットフォームのための3Dモデルの作成が可能なところである。このことにより、特に物理的な訪問が難しいか、若しくは不可能となっていたパンデミックの期間に、発見や教育、鑑賞の新たな世界が開かれた。

「当館でArtec LeoとSpace Spiderにより作成したインタラクティブな3Dモデルは、皆様に喜ばれている」と、ウィンクラーは語る。

Vienna Giant Deer

Artec Leoのスキャンデータから作成された、Sketchfab上の巨大な鹿の注釈付きの3Dモデル。画像は、NHMWのご厚意で掲載

ウィンクラーは更に、「今では、ウィーンでも、何千キロメートルも離れた場所でも当館の収蔵品を詳細にご鑑賞いただくことができ、当館にお越しになって展示品を直にご覧いただく際とは異なる観点からご堪能いただける場合も多く生じている。また、公開展示品に含まれない収蔵品からの標本を紹介することも可能となっている」と続ける。

ウィーン自然史博物館の貴重な収蔵品を世界と共有

ウィーン自然史博物館は自身のSketchfabのアカウントを通じて、オンラインで世界中の鑑賞者と3Dモデルを共有している。このプラットフォームでは現在、博物館で最も人気のある、記憶に残る展示品の洞察に満ちた注釈が添えられた、極めて実物に近い二百以上もの3Dモデルを展示している。閲覧可能な3Dモデルのほとんどは、無料でダウンロードできる。

その中で最も人気の高いものには、恐鳥(パラフィソルニス、Paraphysornis brasiliensis)、フランツ・フィーベックのソコル宇宙服、日本の巨大なタカアシガニ(Macrocheira kaempferi)、それにダウンロードした上で3D印刷の可能なクッキーの抜き型の基となる、八つのユニークな3Dモデル一式であるNHMWのクッキープレートまでが含まれており、仮想的な鑑賞が可能である。この全世界からのアクセスが可能な状態は、近隣や遠方からの訪問者の博物館の体験を真の意味で民主化する。

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Artec Leoのスキャンデータから作成された、Sketchfab上の恐鳥の注釈付きの3Dモデル。画像は、NHMWのご厚意で掲載

巨大な鹿のみにとどまらず

興味深い巨大な鹿の骨格から更に手を拡げ、NHMWはArtec Leoを利用し、その他の幅広い種類の注目すべき生物の3Dモデルを作成した。その中には、南大西洋のフォークランド諸島のミナミゾウアザラシ(Mirounga leoninae)、かつて北アメリカを覆っていた先史時代の熱帯海に生息した巨大なウミガメ(Archelon ischyros)、そして、博物館の収蔵品の中でも最も人気の高く有名なものに当たる、珍しいブルーバック(Hippotragus leucophaeus)が含まれる。

ウィンクラーはArtec Leoの精度とディテールに驚きを隠せず、「非常に長い期間利用した後でも、Leoが当館の化石やその他の展示品の最も細かい類のディテールさえもキャプチャする様子にはずっと圧倒されている。当館のミナミゾウアザラシや古代のウミガメの3Dモデルをご鑑賞いただくと、それぞれを独特なものにしている個々のテクスチャや微妙な違いに気付いていただけるはずだ」と話す。

Vienna Giant Deer

Artec Leoのスキャンデータから作成された、Sketchfab上のブルーバックの注釈付きの3Dモデル。画像は、NHMWのご厚意で掲載

ウィンクラーは更に、「当館のブルーバックのスキャンデータは、まるで目の前に立って、間近でその複雑な特徴を観察しているようである。Artec Leoは間違いなく、当館の収蔵品に生命を吹き込んだ」と続ける。

未来の世代への管理、及び保存

人々の興味を引くことに加え、NHMWの担当班はArtec Leo、並びにSpace Spiderのデジタル保存におけるソリューションとしての確固たる使い道を発見した。その高解像度の3Dスキャンデータは、遺物の微細な変化の観察における重要な資料ともなり、ミリメートル単位以下の変化も経時的に追跡することができる。

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Artec Leoのスキャンデータから作成された、Sketchfab上のティラノサウルスの頭蓋骨の注釈付きの3Dモデル。画像は、NHMWのご厚意で掲載

「オブジェクトの極めて細かいサーフェスの変化さえも検知でき、必要な際に対応できるようになったことは、我々にとって大きな意味がある。このことで、どのような懸念される構造上の問題の有無も確認でき、このような貴重なオブジェクトのこの先何年にもわたる確信を持った上での保存の実現に繋がる」と、へイダーは説明する。

担当班はBlenderを使用することもあるが、これは、特にアニメーションを扱う場合に、従来よりも更に芸術的でリアルなテクスチャを3Dモデルへ付加することにより、閲覧者の鑑賞体験の質を向上させるためである。

二十一世紀の博物館でのキュレートの在り方を見直す

Artec LeoとSpace Spiderにより、NHMWは保存とアクセス性という二つの課題に対し、効率的で正確なソリューションを発見した。オブジェクトの記録、及び訪問者の興味を引き付けるための手法に革新をもたらすことにより、この先何十年も、次の世紀でも自身の注目すべき展示品が鑑賞者を確実に啓発、刺激し続けていくことを実現しようとしている。

ウィンクラーの言葉を借りれば、「当館の古代の展示品には、その過去の歴史と同様に安全で活気に満ちた未来が待って」いる。へイダーも自身の同僚の意見に呼応して、「仮想空間での興味をそそるツアーの企画の支援から当館の展示品の保存管理に至るまで、我々のArtec社製スキャナは当館の博物館のキュレートの手法を全く変えた」と語る。

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Artec Leoのスキャンデータから作成された、フクロオオカミ(サイラシン、thylacine)の注釈付きの3Dモデル。画像は、NHMWのご厚意で掲載

今の新しい時代において、NHMW は保存や展示の従来の境界線を越えつつある。Artec LeoやSpace Spider、それに一連の高度なソフトウェアツールと共に、二十一世紀における博物館の在り方を再定義している。

このことは収蔵品の展示だけではなく、印象的で豊富な情報を含んだ注釈の加えられた3Dモデルの鑑賞者との共有にも関連し、地理的境界線にかかわらず、このような貴重な歴史的遺産がこれまでと同じように好奇心や驚きを生み出していくことに繋がっていく。

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