3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

ノートルダム大聖堂のデジタル化でRay IIの建築分野での実力を実証

課題:カナダのモントリオールの賑やかな地域にある巨大な大聖堂を、非常に詳細にデジタル化しながら、通行人などを3Dモデルに含めずに処理すること。

ソリューション:Artec Ray II、Artec Studio

結果:ノートルダム大聖堂周辺のエリア全体を、遺産保存やVRでの活用にも十分なディテールで再現した、非常に大規模かつ超リアルな3Dモデルを生成することができました。

Artec 3Dを選ぶ理由:Artec Ray IIは、広大なエリアや大型オブジェクトを迅速かつ正確にキャプチャすることができます。搭載された視覚慣性システム(VIS)により、スキャナ自身が空間内での位置を把握しながらスキャンを進められるため、高精度な位置追跡が可能です。Artec Studioソフトウェアを使用すれば、異なる位置から取得したスキャンを簡単に統合できるほか、重要な箇所のディテールを強化するために、追加の3Dスキャンデータやフォトグラメトリデータを活用することも可能です。

Notre Dame Basilica

カナダ・モントリオールのノートルダム大聖堂(この画像はクリエイティブ・コモンズライセンスの下で使用されています)

モントリオールのダウンタウンを散策するなら、あの有名なノートルダム大聖堂の見学は必須です。この威厳あるネオ・ゴシック様式の教会は、この都市の観光名所ランキングで常に上位に挙げられる存在であり、単なる建築物にとどまらず、地元の歴史を語る「タイムカプセル」的存在でもあります。

モントリオールが創設されてから14年後の1656年に建てられたこの大聖堂には、歴史を彩る重要人物たちの絵画やステンドグラスが飾られています。その中には、宗教的指導者であるマルグリット・ブルジョワ(Marguerite Bourgeoys)や、この都市の創設者であるポール・ショメディ・ド・メゾヌーヴ(Paul Chomedey de Maisonneuve)などが含まれます。

ご想像のとおり、ノートルダム大聖堂はモントリオールのにぎやかな街並みにおいて重要なランドマークとなっており、現代的な都市に貴重な歴史的趣を与え続けています。しかし、多くの歴史的建造物と同様に、この大聖堂も継続的な維持管理を必要としています。外壁、石材、雨仕舞(フラッシング)、鐘楼などの修復作業は、2020年からすでに進行中です。

世界中の歴史的建造物が次第にその脆さを見せ始めている中、多くの人々がデジタル文化遺産の保存に向けた3Dスキャンに注目しています。しかし、実際にはエリア全体や建築物全体を正確にキャプチャするのは、想像以上に難しい作業です。人気の観光名所は常に人で賑わっているため、建物が3Dスキャナや他のデータ取得機器から見えにくくなってしまいます。また、これらの建物は非常に大規模であることが多く、超高速かつ高性能なデジタル化ソリューションが求められます。

Notre Dame Basilica

Artec Ray II 3Dスキャンによる大聖堂の外観。画像提供:Solidxperts

ここで登場するのが、Artecのゴールド認定パートナーであるSolidxpertsです。 
チームが最新のArtec Ray IIを手にした際、彼らはこの機器の建築物キャプチャ性能を実証することを目指しました。そして、ノートルダム大聖堂はその理想的な実験台として選ばれました。この都市で最も有名なこのランドマークをデジタル化することにより、次世代にその姿を残すとともに、Ray IIの大規模スキャンにおける実力を示すことができたのです。

カナダの至宝をキャプチャ

Solidxpertsのチームがノートルダム大聖堂のスキャンのために現地に到着した際、最大の課題はその環境と規模でした。予想どおり、周囲には多くの人々が集まっており、混雑していました。また、その建築物の規模は非常に大きく、カナダの厳しい冬の寒さの中で数日かけてスキャンすることになってもおかしくないほどでした。

しかしRay IIは、スキャン作業を迅速かつシンプル、直感的なものに変えてくれました。このデバイスにはディスプレイが内蔵されており、ノートパソコンなしでも設置でき、Artec Remoteアプリを使えば遠隔操作も可能です。今回のケースでは、チームはおよそ25箇所からスキャンを行い、大聖堂のさまざまな角度からデータを取得していきました。ここで、Ray IIに搭載されたVISシステムが、3D空間内でのナビゲーションにおいて大きな役割を果たし、現地の特徴的な構造を余すことなく正確にキャプチャするのに貢献しました。

Notre Dame Basilica

Artec Studioで表示されているSolidxpertsの3Dスキャン。画像提供:Solidxperts

また、モントリオールの創設者の像があることでも知られるこの大聖堂周辺には、興味深いオブジェクトが数多く存在します。それらをすべて確実にキャプチャするために、チームはRay IIをこの記念碑の周囲に円を描くように配置し、最大200万ポイント/秒の速度で必要なすべてのデータを取得しました。そのわずか数時間後には完全なデータセットが揃い、チームはその結果に大いに満足できました。

「私達のスキャン結果は本当に素晴らしいです」と語るのは、Solidxperts社でAMおよび3Dスキャン部門のディレクターを務めるアレクサンドル・ゴスラン(Alexandre Gosselin)氏です。「今回スキャンした建物の一件は約30階建てで、外壁がガラス張りなんです。これがスキャンを非常に難しくしているんですが……。もちろん、一部の窓は完璧にはいきませんでしたが、この大聖堂全体やその周辺の通りまできれいに再現できています。私たちはこれらのオブジェクトを100メートル以上離れた場所からキャプチャしました。そう考えてみると、Ray IIのスキャン範囲は驚異的ですね!」

Notre Dame Basilica

モントリオールの創設者の像をArtec Ray IIで3Dスキャンしている様子。画像提供:Solidxperts

没入感のある3Dモデルの作成

データ処理はArtec Studioで開始され、Solidxpertsは取得したスキャンを整え、位置合わせを行い、詳細な3Dメッシュへと統合しました。Ray IIに搭載された「ダブルスキャン」アルゴリズムにより、通行人などの動くオブジェクトは自動的に除去されました。また、この機器がワイヤレスで長時間駆動するバッテリーを備えていることもあり、ゴスラン氏は「非常にクリーンなデータを簡単に取得できた」と述べています。さらに、Artec Studioの外れ値除去機能や消しゴムツールも活用され、サードパーティのソフトへエクスポートしなくても、スキャン結果に磨きをかけることができました。

完成したモデルは非常にリアルで、Solidxpertsのチームは「将来的には同じ手法で、VRアプリケーションに対応するほどの奥行きを持つ3Dモデルを作成できる可能性がある」と考えています。さらなるディテールを再現するために、Artec Studioのマルチ解像度のメッシュ機能を用いて複数の3Dスキャンデータを統合したり、AIフォトグラメトリでドローン撮影による画像や映像を使って結果を高精細にアップスケールする予定です。

「ドローンは使えるのですが、モントリオールではドローン飛行や市内の空域に関して厳しい規制があるため、使用可能かどうか確認する必要があります」とゴスラン氏は付け加えました。「より細部のディテールをキャプチャするために、一部の像の部分をLeoでスキャンし、それをRay IIのデータと一緒に同一データセットにインポートすることも可能でした。LeoとRay IIを組み合わせれば、非常に高速に、そして大量のデータを取得できますから、この分野での大きな可能性を感じています。」

Notre Dame Basilica

Artec Studioで作成されたモントリオールの創設者の最終3Dモデル。画像提供:Solidxperts

高まる需要への対応

Artecの3Dスキャン技術は、世界中の文化遺産を保存する手段としてすでに大きな人気を集めています。Artec 3Dは、信頼できるパートナーネットワークを通じて、自国ルクセンブルクのランドマークから、ディスカバリーチャンネルのドキュメンタリーで使用された古代遺物に至るまで、さまざまなオブジェクトをデジタル化してきました。

これらの多くは、Artecのハンドヘルド型スキャナ、LiDAR、そしてフォトグラメトリによる3Dデータ取得を組み合わせてデジタル化されています。現在、Solidxpertsは、より広範な建築・建設業界において、こうしたソリューションへの需要が高まっているのを実感しています。敷地計画、解析、リニューアルにおいて、完全なディテールの取得が不可欠となっているからです。

「現在、Ray IIに関するお問い合わせの多くは建設分野からのものです」とゴスラン氏は結論付けました。「今まさに進行中の明確な案件として、機械設備サイトのためのプラットフォーム建設を検討しているお客様がいらっしゃいます。そこには配管があり、小型部品や機械が周囲に点在しています。私たちの目標は、環境全体、すべての配管、すべての配線、すべての機器をそのままスキャンすることです。そしてそれをSolidWorksにインポートすれば、スキャンデータだけを基に構造設計が可能になります。」

この大聖堂のスキャンを通じて、Solidxpertsのチームは単にモントリオールの歴史的建造物の一部をデジタル化しただけでなく、無限の可能性を切り開くことができました。大規模なデジタル化がかつてないほどシンプルになった今、次に彼らがどのような種類の、どれほどの歴史を持つインフラをスキャンすることになるのか――その展開が楽しみです。

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