Artec Space Spiderを用いて、犬のミミちゃんの呼吸を支援する

18/11/2020

著:Loretta Marie Perera

エンジニアリング会社がペットを救助するのはごく稀ですが、この特別なケースでは2つの世界が融合し、ミミという名の犬が最新テクノロジーのおかげでこの世に生き延びることができました。

ビーチにいるミミちゃん

英国ニューポートのエンジニアリング会社であるAdaptive Engineering Solutions Ltd.(AES)は、ハンドヘルド3DスキャナのArtec EvaとArtec Space Spiderを愛用しています。  彼らは2015年に、Artec 3Dのゴールド認定パートナーであるPatrick Thorn & Co.を訪問し、スキャナの実演を見て、その導入を決断したのです。

「私達の興味を引いたのは、被写体全体に点を配置しなくてもスキャンができるオプションでした。あちこちに点をつけるなんて、あまりにも不便すぎますから!それまで私達はスキャナを使用して、風力タービンブレードの製造検査や、クラシックカーや船体のリバースエンジニアリング、そして小型鋳造品や射出成形部品の品質検査まで、さまざまなタスクに使用してきました」とマネージング・ディレクターのゴードン・マックロー(Gordon Mucklow)氏は言います。

しかし、そんな大規模なスキャン経験があったにもかかわらず、これまでとは全く異なる、特別なプロジェクトが到来してきたのです。ミミちゃんが最初に登場したのは、彼女の飼い主であるベン氏が誰かの助けを必死で求めて電話をかけてきたときでした。心雑音と過剰咬傷を持って生まれたミミちゃんの闘争は、たった生後5か月のときに別の犬に襲われ、悪化してしまいました。これにより、気管に穴が開いて感染してしまい、喉の手術が2回行われました。当時、彼女の生存確率はほんの10パーセントと言われていました。

獣医たちは迅速に行動し、最大限の能力を使い彼女の救助に向き合いました。ミミちゃんがこれから長く快適な生活を送れるよう、あらゆる手段が尽くされました。ミミちゃんの首に人工的に作られた、長さ6センチの穴にチューブが取り付けられ、彼女は呼吸することができました。このチューブは1日に3〜4回洗浄されなければならず、常に感染の恐れやつまりが原因の窒息死の恐れがつきまといました。

そしてやはりある日、突然チューブが壊れてしまったのです。一時的に接着剤で修理されましたが、時間が勝負所となり、ミミちゃんの人生は一刻も早い解決策に頼っていました。ベン氏はキチンと機能するチューブを手に入れなければならなくなり、また次に起こりうる緊急事態に備えて、予備のチューブを手元に用意する必要がありました。

ベン氏は必死になり、支援を求めて地元のデザイン会社に電話をかけましたが、スキャナではなく3Dプリンターを備えていたため、その会社はその仕事を断らざるをえませんでした。解決策を提供できるかもしれない、犬好きの会社として、AESチームはこれは助けなければ、と思いました。「私たちのオフィスは愛犬家の集まりばかりなので、私達にとっては本当に感情的にさせられた出来事でした。私達の日常の仕事はどうにか調整できましたし、印刷に関するお手伝いやアドバイスも提供できると思ったので、私達は支援することにしたのです」とゴードン氏は言います。

何年もの間、ゴードン氏と仕事で協力してきたPatrick Thornは、AESのために多数のプロジェクトで3Dスキャンのソリューションを見つける手助けをしてきました。「ゴードン氏は時折、「どうすればこれができますかね?」という類いの電話をかけてきますよ」とパトリック氏は言います。「それが今までにあらゆる種類のプロジェクトをもたらしました。そして、この彼らが培ってきた知識は、彼らを重要な次のステップに導くことになったのです。それは、他の誰もがどうすることもできないときに、ミミちゃんを助けるための解決策を見つけることでした」

彼らは解決策は見つけられるだろうと確信していましたが、その仕事は実に多くの課題を提示しました。「スキャンのために私達に渡された部品は、透明な医療用プラスチックでしたが、時間の経過とともにそれは壊れやすくなっていて、すでに何度も破損した後に修理されていたようです」とゴードン氏は説明します。私達はエンジニアなので、元のパーツの設計意図は維持したかったのです。例えば、内部のチューブの断面を少なくとも同じ量の気流がチューブを通過できるようにしたり、新しい部品は、提供された部品にできる限り近いものにしようとしました。これは、私達に提供されたチューブがミミちゃんにとって最も快適なデザインで、他のバージョンのものは拒否したことがあることを知っていたので。

新しいチューブと元のチューブの一貫性を確保することは非常に重要でした。

その解決策として、彼らのチームは可溶性のチョークスプレーを使用して表面を不透明にし、スキャンができるようにしました。その部品の初めての表面スキャンはArtec Studio 14とArtec Space Spiderの使用により、約30分で準備ができました。  そのパーツの2つのスキャンは、ターンテーブル上の異なる方向から取得され、AS14に内蔵したツールを使用して位置合わせがされました。「ジオメトリキャプチャの目的では、高速メッシュ化は十分に正確でした」とゴードン氏は振り返ります。「とっても心配そうな顔をしたベン氏がずっと見ている間にね!」

ブルーライトテクノロジーに基づく高解像度3DスキャナであるArtec Space Spiderは、小型オブジェクトや、大型オブジェクトの複雑なディテールのキャプチャに最適です。鋭いエッジや細い肋骨などの複雑なジオメトリを高精度でレンダリングできる能力は、成形部品からコイン、鍵、そして呼吸管まで、ありとあらゆるものをキャプチャする産業用スキャナの中で、リーダー的存在にしました。

RhinoソフトウェアとMesh2Surfaceをプロセスに追加して変更と修正ができるようにすると、ゴードン氏と彼のチームは、固有のCADサーフェスを作成して、パーツを再作成し、(実際の壊れたパーツのスキャンから)異常な部分を取り除き、そしてそれが3Dプリントに適していることが確認できました。

成功したスキャンがこちら!

「私達は最初に電話がきてから24時間以内にこれらすべてを行い、 ベン氏があらかじめ話をつけていた3Dプリントの業者に必要なファイルも送ったので、彼らは部品の作成をすぐに始めました」とゴードン氏は言いました。「私達はその結果に非常に満足しています。もしスキャンをしていなかったら、手作業でジオメトリをマッピングするのに膨大な時間と労力を要したでしょうね。今回のプロジェクトはミミちゃん限定の、非常にユニークなものだったので、曲率と寸法を元のそれにできるだけ近づけることが重要でした。これは本当にArtec Space Spiderにとって理想的なプロジェクトでしたよ」

ミミちゃんの呼吸管を装着

「お客様を助けるために一生懸命になってくれる会社に出会うことは本当に素晴らしいです」と言うベン氏は、ミミちゃんの冒険について本にまとめ、何かインスピレーションを読者に与える本にしたいと意気込んでいます。「ミミちゃんと私は彼らの援助に非常に感謝しています。もちろん、私は彼らのサービスを勧める機会があればするつもりです」

AESは、いつもよりもう少し個人との繋がりがあったプロジェクトに貢献できたことを嬉しく思っているそうです。これはエンジニアリング会社にとっては珍しいことです。ゴードン氏は、「ミミちゃんのこのプロジェクトに参加ができて、素晴らしく思います。また、とても大きな規模の長期的なエンジニアリングのプロジェクトだけでなく、今回のようにミミちゃんの呼吸を助けるような、小さくても短期間で多大な影響力を与えられるプロジェクトも、私達には多様化できる能力があるんだということをお見せできたんじゃないかなと思います」と語りました。