3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artec 3DとHPが革命的な3D印刷による補綴具の作成にいかに役立ったか

課題:画期的な補綴具製作の専門家が、自らの革命的な、新しく3D印刷されたQuatro補綴具を患部へしっかりと装着させるため、下肢を切断された患者の残肢などのオブジェクトを素早く、かつミリ単位の正確さで立体的に計測する必要性に迫られた。

ソリューション:Artec Eva、Artec Studio、Geomagic Freeform、並びにHP Jet Fusion 4200

結果:ハンドヘルド式3DスキャナであるArtec Evaを使用することにより、患者の残肢、鋳型、そして義足ソケットのミリ単位未満の正確さを持ったカラーの3Dスキャンが数分で完了した。スキャンされたデータは、Artec Studioソフトウェアで処理された上で、ほんの三十分から一時間後にGeomagic Freeformへとエクスポートされ、その後、このソフトウェア上で、そのArtec Evaによるスキャンを正確な参照モデルに使用しながら、特製のQuatro補綴具が「デジタル彫刻」された。

 

ラスティン・ヒューズ(Rustin Hughes)の所有するQuatro補綴具のArtec Evaを用いた3Dスキャン

悪性の血栓で右脚を失った後、米陸軍戦闘兵から総合格闘技のファイターに転身したラスティン・ヒューズ(Rustin Hughes)は、動かずにただ良い知らせを待ち望むようなことはしなかった。

ヒューズは、アメリカ合衆国退役軍人省管轄の病院に通い始め、過酷なリハビリセッションに毎日、足を運んだ。程なく、ラスティンは車イスの必要がなくなり、片方に義足を付けた上で、自分の二本の足で動けるようになった。

しかし、ヒューズの言葉を借りると、最初の義足は「ひどい作りで、まるで五ガロンのバケツを装着しているようなものだった」らしい。

世界中の肢体を切断された患者の間で普通に使用されている、よくある標準的サイズの吸着ソケットでは、人工の脚部がしっかり定着することはなく、ヒューズの残肢の体積が少しずつ減っていくにつれてぐらつき、不安定な状態は一日中続いた。

このせいで、一日に何度も義足を外して付け直さなければならず、ソケットに靴下を一本か一足分挟みこんだりしてみても、ぴったり合うのは一時的だけだった。

この面倒な作業全体に掛かる時間は十分間にも上り、ラウンドの間に一分間の休憩時間しかない格闘技の試合にヒューズが参加することは、ほぼ不可能に近かった。

ダウンを取られても、敗北には程遠い

切断患者にとって、特に、ヒューズのように激しく体を動かす必要のある患者にとって、合わない義足を付けていることは心地が良くないだけではなく、安全面でも支障をきたす。できる限りの手配をして公共の場を歩いていても、ヒューズの義脚はぐらつき、外れたことは一度だけではない。

苛立ちと辛さから抜け出せず、ヒューズは自分の計画や夢の実現に懐疑的になり、先行きが不透明になったように思えたが、諦めることはしなかった。

ヒューズは、簡単な返答や出来合いの解決法で済ませたりしないような専門家を探し続けた。そんな中で出会ったのが、コロラド州ウィンザーにあるQuorum ProstheticsのCEO、ジョー・ジョンソン(Joe Johnson)だった。

 

新しいQuatroと裏地を手にするジョー・ジョンソン(左)とラスティン・ヒューズ

ヒューズの言葉を借りれば、「ジョーも切断患者なので、自分の今までの体験、それを人に伝える方法、それに、当時の自分に対する効果的な後押しや状況を打破する方法、そういったことをすべて、分かってくれていた」ということだ。

ジョーとQuorumの彼のチームは、その日のうちにヒューズのためのソケットの試作品を作成した。「自分のために、業務をすべて後回しにしてくれた」と、ヒューズは回想する。

数日後、ヒューズが初めてのファイバー製のQuorum Quatro補綴具を試したときには、「違いは歴然としていた」ようだ。「新しい『脚』は、まるで自分の身体から生えているような感触で、ぴったりと装着できた。あの瞬間から、動きやすさの度合いが格段に上がった」と、ヒューズは説明する。

Quatroで元通りに、思い通りに

数個のソケットが、高度に動きやすい状態で闘うことができるように骨を安定させ、その上で、Quatroは長手方向に圧力をかけるだけでソケットと骨を固定させる。こうすることにより、ユーザーは強力で安全なソケットの利点を最大限に享受することができる上、残肢の体積変化に合わせて調節もできる。

Quatroは、従来の製品に比べてより強く、より軽量でより滑らかな形状をした完全に調節可能なソケットで、ほんの二十秒ほどで装着でき、その後は調節が一日中いつでも可能であるため、闘うアスリートや、年齢にかかわらず体を動かすことの多い人々に最適なソリューションである。

 

Quatroの定着具合を調整するヒューズ

Quatroは、どの製品も、付属品、デザインやカラーの選択など、患者のニーズに応じて全面的にカスタマイズでき、その価格も市場で普及している他社の補綴具と変わらない。

このことにより、Quatroは世界中の患者の間で話題に上るような愛用品となり、その利用者数も増え続けている。それも、動きやすさを取り戻す、という真っ当な理由からだ。

ヒューズの説明によると、「長い間、多くのことが手に負えない状態になっていた。今では、好きな時にソケットを引き締めることでしっかりした装着を維持でき、自分の思いのまま動けるため、それだけで本当に励みになる」ということだ。

 

ラスティン・ヒューズとQuorumのジョー・ジョンソンによる、パンチングミットを使用したボクシングのトレーニング

「しっかり合っていることこそが全て」

しかし、そのような理想的な装着状態を得るためには、患者ごとに、それぞれの補綴具を個別に製作することが前提となる。

Quorum Prostheticsの研究開発エンジニア兼ディレクターであるショーン・マクルア(Sean McClure)によれば、「しっかり装着されていること、それに、ゆったりした動きや活気に満ちた動きなど、活動の度合いに関わらず、一日中、快適な装着状態を維持できることこそが全てと言える。このことを、Artec Evaを使用した3Dスキャニングによって実現できた」ということである。

Evaの存在を知って購入に至る以前、Quorumの従来のプロセスでは、プラスターを使って患者の残肢の鋳型を作成していた。

マクルアによると、「この方法は汚れる上に時間もかかり、患者の方々にも良い印象を与えなかった。この工程全体にかかる時間は八時間以上で、非常に多くの資材やツールを使用する必要もあった」そうである。

 

Evaでスキャンされた残肢の鋳型のArtec Studio上でのスクリーンショット

その出来に満足しなかったため、Quorumは3Dスキャニングの世界に初めて足を踏み入れた。しかし、低価格の3Dスキャナを数台試したものの、その導入を思いとどまった。

キャプチャされたデータは、その正確さも解像度もQuorumの基準を大幅に下回り、機器の方も、プラスター性の鋳型の内部や、既存のソケットを正確にスキャンすることができなかった。

「CADへインポートするための高品質のデジタルファイルを作成したり、定着の良い、しっかり機能する完成品を設計し、モデリングしたりできるようにいろいろ試行錯誤してみたが、データの編集やノイズの除去をすることが思うようにできなかった」と、マクルアは語る。

業務に最適な3Dスキャナとの出会い

ジョー・ジョンソンが、自身のチームの葛藤をコロラド大学付属アンシュッツ・メディカルセンター(CU Anschutz Medical Center)のコリー・クリスチャンセン(Cory Christiansen)博士に打ち明けたとき、博士が勧めたのは、装具や補綴具、その他の医療に関連する器具の扱いに何年もの経験がある専門業者の属する、デンバーを拠点とした、Artec社のゴールド認定パートナーのReality 3D社に連絡することだった。

ジョンソンとマクルアは、その後すぐに面会したReality 3D社のマット・フィルキンス(Matt Filkins)を通じて、Artec Evaのことを知った。

 

Artec Eva

何年もの間、Artec Evaは医療における補綴具製作者やその他の専門業者の間で、他社の製品に比べて圧倒的に、それも真っ当な理由で選ばれている機器である。Evaはこれまで、すべての種類のサーフェス、特に、人体のサーフェスをミリ単位以下のレベルの正確さで、しかも、初心者、エキスパート双方の方々のお気に召すような使いやすさでキャプチャできる性能を繰り返し実証してきた。

当初は、その価格のせいでためらったものの、マクルアは、実演を数分見ただけで、Evaを使用してワークフローを合理化することで、素材のコストをも大幅に削減でき、機器自体は二ケ月以内で採算が取れることに気が付いた。

そして、二人は機器を購入する決心をし、その決断を変えることはなかった。

 

Evaでスキャンされたチェックソケットの外側被覆の、Artec Studio上でのスクリーンショット

その結果は、驚異的と言っても過言ではなかった。「Quatroを一つ作るのに掛かる時間は、3Dスキャニングとプリンティングに変えただけで、75%近くも短縮された」

「節約できた全ての時間や資材を考慮すると、我々がかつてない規模で市場を拡大していることは言うまでもなく、今の時点で既に、このような新しい機器の導入による損益分岐点を遥かに超えているようだ」と、マクルアは語る。

すべての事業での作業時間をArtec Evaで大幅に節約

マクルアはさらに、「プラスター製の鋳型を正確に作成するために数時間かかっていたのに比べ、Evaなら数分のうちに、すべてのスキャンを完了できる」と語る。

「我々の作業方法が改善されていき、スキャニングに対する理解が深まるにつれて、作業時間も更に短縮できると考えている。スキャンは驚くほど正確で、Evaによる3Dモデルは有限要素解析(FEA)に利用することもできる」と、マクルアは言う。

 

ヒューズ所有のQuatroのEvaによるスキャンデータのArtec Studio上でのスクリーンショット

製作に必要な時間は患者により変わってくる上、現存する鋳型、ソケット、残肢そのものなど、スキャンされるオブジェクトによっても変わってくる。

平均すると、スキャンを始めてからArtec Studioソフトウェアでデータを処理し、完成したSTLファイルとしてGeomagic Freeformへエクスポートするまでに、三十分から一時間かかった。

Geomagic FreeformでのQuatroのデジタル「彫刻」

Freeformでは、このプロジェクトのためにすべてのSTLモデルが構築された。その中には、患者の残肢の鋳型、現存するソケット、診断用ソケット、その他、Quatroに必要な部品すべてが含まれる。

この段階では、以上のモデルが、それぞれの場所に配置される前に、Quatroの複数の構造要素を作成するための参照ガイドとして使用されるため、Evaのミリ単位以下の水準の正確さが最も物を言う場面である。

その上で、四つのパネルを介するQuatroの四か所の調節可能な圧縮ゾーンは、設計者の意図した位置で、簡単にソケットに揃えることができる。

 

設計されたQuatroのGeomagic Freeform上でのスクリーンショット

パネルのサイズや形は、患者の残肢の寸法、必要となる圧縮方法や調節機能に応じてカスタマイズできる。

パネルは、Geomagic Freeformに付属している従来のCADツールを使って、慎重にモデル化される。この過程に沿えば、HP Jet Fusion 4200ですべての部品の3Dプリンティングを行った後、ソケットの全体を組み立ては、早ければ十五分で完成する。

「現在では、スキャンを始めてから患者に完成したQuatroを装着するまでに、大体二週間かかる。製作工程を改善していく中で、最終的には数日に短縮したいと考えている」とマクルアは語る。

「白眉」を越えた性能で

Quatroは、市場では比較的新しい商品だが、既存の同種の補綴具に比べて遥かに丈夫で、長持ちすることが初期段階のフィードバックと研究により判明した。

 

ヒューズの最新版Quatroの実装の様子

装着状態は、機器の手の届きやすいところにある調節機能により一日中簡単に調整できるため、患者は快適さと定着性を完全にコントロールできる。

この機能も、3Dプリントされたパーツの優れた強さと軽量さもすべて、この先何年もの間、患者が装着できるソケットの性能の一部となるのである。

国境や大陸を越えての市場拡大

しかし、以上のようなQuorumの試みに対する見返りの規模は、Quorum一筋の顧客の多くが享受している恩恵の程度を大きく上回っている。Evaのおかげで、我々はコロラド北部の領域を遥かに超えた市場を開拓することができた。今では、Quorumの補綴装具士や技術者が患者に付き添う必要もなくなった」と、マクルアは語る。

「3Dスキャニング技術を利用すれば、設計やプリンティング用のモデルを世界のどの施設からも我々の下へ送ることができる。このことにより、我々が製造業者として単独でビジネスを行い、国内外でこの技術を広めていくことができる」

ヒューズの方は、彼自身のQuatroを調節機能によりしっかり装着できるようになったために以前にも増して行動的になり、リングで戦ったり、自らの非営利組織であるB-Boldを経営し、年齢を問わず、障害を持つ人々に障碍者向けの非接触の格闘技を教えたりしている。

 

自身の障碍者向けボクシングクラスでのラスティン・ヒューズ(左)

装具学/補綴学の分野における、これまでになく加速する3Dスキャニングへのニーズ

Reality 3D社のマット・フィルキンは、装具学および補綴学の分野でのこの技術の将来性について、こう話す。「アメリカ合衆国退役軍人省管轄の病院のシステムや、そこでの患者基盤を急激に増加している需要の一つの例として考えると、何千人もの年老いた退役軍人や、その中の切断患者が残りの人生でのケアを必要としていることが分かるだろう」

さらに、彼はこう続ける。「3Dスキャニングやプリンティングは、装具や補綴具の供給者が既存の製作方法で実現できなかったことを可能にする。優れた正確さや患者の快適さ、資材コストや人件費の削減、企業への訪問回数の低減、他に例を見ない設計の可能性、その他にも多くのことが可能となる」

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