CADソフトウェアと3Dスキャニングの実際の利用状況
皆様の企業や取引先の製造設計のニーズに応えるために、CADシステムの導入が必要かどうかをお考えであれば、このまま続けてお読みください。目のくらむほどの数の選択肢の中では相当の額の投資と思われたものが、計り知れないほどの時間、労力や出費の節約に結果的に繋がり、最善の決断であったことに後から気付くこともあるのです。この記事では、品質検査、リバースエンジニアリングやその他の用途における現時点でのCADシステムについて、また、その導入がどのような課題の解決に役立つのか、もしくは、3DスキャニングがCADワークフローの質をいかに力強く向上させるかについて概説しています。
はじめに
冷静に考えると、CADソフトウェアが市販されるようになる前は、ほぼ全ての設計作業は手作業であり、寸法や特性も紙面上にマニュアルで記入されていたことに気付きます。CADソフトウェアは、そういった状況を完全に変えてしまいました。しかし、だからと言って、一つのパッケージが全ての設計者やエンジニア、建築家のニーズに応えることができるわけではありません。自身のコンピューターベースの設計のニーズを明確に見極めるには、まず最初に、現段階で入手可能なオプション、その中の特定のソリューションが他のものよりも必要と考える理由、そして、追加のソリューションである3Dスキャニングにより、CADでの完成品の品質を向上させ、数か月か数年の間にその投資額の何倍もの元を取っていく算段について考慮していくことが最善の方法です。
CADソフトウェアを使用する理由とは? CADソフトウェアを使用すべき対象とは?
CADソフトウェアを使用することにより、製造設計工程がどの程度簡単になるかについては、いくら強調しても足りません。実際の製作工程や完成品のパッケージングは言うまでもなく、初期段階の構想や設計段階から構成部品の分析過程にまで、その効果が現れます。
寸法や形状に変更を加えることが、その程度に関わらず可能な上、その変更が設計全体に反映される様子を瞬時に確認できることは、今日の設計ワークフローにもたらされた、計り知れない恩恵と言えます。二次元での紙と鉛筆によってでは、同じような効果は期待できないでしょう。
ミリ単位以下の完璧な精度
今日のコンピューターベースの設計ソリューションなら、ミクロン単位の許容度で、現存する原本を正確に反映したモデルの作成が可能です。CADソフトウェアを使用すれば、製図や二次元のドローイングの場合のように最初から設計図を描き直したり、特定の角度からの新しい設計図を作成したりして、時間を無駄にしてしまう必要もありません。
三次元で作業をすれば、標準的な六種類の視点からの設計図のみに束縛されずに済みます。作成したい縮尺に応じて、何百もの違った角度からの視点を選択することができます。
どんなものを設計していても、それが製作している唯一の製品となることは、ほぼあり得ません。コンピューターベースの設計ソフトウェアでは、何度でも使用することのできる部品のテンプレートやライブラリを簡単に構築することができるため、この特徴こそが、そういったソフトウェアを一層優れたものとしているのです。その上、この技術は、社内で設計された電子機器や締結部品、在庫にある部品などのような、個別製造のパーツや付属品にも適用することができるのです。
必要に応じて、設計中のものにドラッグやドロップを行うだけで、全てが完了します。この操作性により、今後の設計のワークフローが更に簡素化され、更に高速化し、設計品を完成させるために必要な時間と労力の大幅な低減に繋がります。
CADモデルを最大限に活用する
CADモデルが完成すれば、その用途には、製造だけではなく、幅広い可能性があります。その例として、様々な変更を施した試作品一式を新規作成する場合や、原本に部品や機能を追加した、計測済みの型を素早く作成する場合を取り上げましょう。
既に作成の完了したCADモデルから設計を始めることができるため、信頼できる基盤を使用して最初から作業ができるだけでなく、試作品のワークフローから、何週間とは言わないまでも、何日もの時間を節約することもできます。
FEA、CFDだけにとどまらず
CADが役立つその他の用途には、FEA(有限要素解析)やCFD(計算流体力学)試験などのシミュレーションがあります。CADモデルをこのようなシステムで利用することにより、航空宇宙産業や自動車産業用部品などの分析や改良のための主要な応力や疲労分析試験を行うことができます。
CADモデルをCFDシステムへインポートすれば、モータースポーツから航空産業、海運業、その他の分野の多くの取引先に対し、設計工程の重要な段階である、空気力学、水力学試験を行うことができます。
効果的なパッケージングデザイン
CADモデルの試験が終了し、製造段階への準備が完了すれば、出荷や陳列用の製品のパッケージングを個別に作成する際に使用することもできます。製品の正確に計測されたCADモデルがあれば、その製品、特に壊れやすく、衝撃に敏感なものへの衝撃を和らげ、保護するための内装を、波型のボール紙や発泡体、マイクロフォームなどの素材を使用して、より簡単に作成できるようになります。
防護の目的だけでなく、そのようなCAD水準の正確さを持つパッケージングなら、パッケージ内のスペースを最適化し、出荷する際の出荷重量を低減できるため、何千ほどでは無いにしても、何百の製品を時間をかけて製作する場合には、重要な点となります。
数分で完了する、落ち度のない製品検査
今日の最も有力なCADの用途に数えられるのが、品質検査です。コンピューターベースの設計用ソフトウェアは、3Dスキャニングと併用した場合は特に、品質分析(QA)、品質検査(QI)の連続する工程での最も大事な段階である組み立て工程、荷物搬入口、配送を受ける段階や市場に出る段階などにおいて、非常に便利なツールです。
その作業は、難しくはありません。まず、3Dスキャナによりオブジェクトやパーツを計測した後に、そのスキャンデータを元のCADモデルと比較し、許容範囲を越えた偏差がないかどうかを調べるのです。
手作業で構造部品のパーツを計測し、それを比較に使用することも可能ですが、一般的な形状の物体を扱う以外は、その計測寸法には必ずズレが生じます。計測する物体が、柔らかく、簡単に変形する素材でできている場合は言うまでもなく、曲面や凹んだサーフェス、薄いエッジを持っている場合には、誤差は必ず生じます。
CADの使用+3Dスキャニング=最小限の時間内で、品質検査工程を最大限にサポート
3Dスキャニングでは、パーツ上の選択部分のみを計測する代わりに、毎秒数百万ポイントのキャプチャを、オブジェクトに触れずに行うことが可能です。これは、パーツに欠陥があり、材質試験、もしくはその他の故障解析シミュレーションを行う際には、一層重要となります。
全てのサーフェスをミリ単位以下の精度でキャプチャしたいと、どなたも思うはずです。3Dスキャニングは、手作業での最善の方法での計測に必要な時間に比べ、わずかな時間の間に、作業を問題なく完了することのできる好都合な技術なのです。その上、最新の3Dスキャニングソリューションは完全に携帯型で、すべての種類のハンドヘルド式モデルも揃っており、ケーブルや追加のラップトップパソコンも必要のない機種もあります。
ワークフローにおいて、速さと操作のしやすさが重要であれば、スキャンからCADへの変換ソリューションが最適な場合もあります。このような事象については、後の節で更に深く探っていきます。今の段階では、そのようなシステムがあれば、最も複雑な種類のオブジェクトでさえも数分の間にスキャンし、そのCADモデルと慎重に比較することが可能である、と言っておけば十分でしょう。スキャンからCADへの変換ソリューションの提供できる、リバースエンジニアリングにおける全ての可能性については言うまでもありません。
CADの実際の利用状況
前述のように、CADソフトウェアが使用される以前は、世界中の技術者は、ペンと紙を頼りに設計作業を行っていました。これは、直線や曲線、図形は一つ一つ、定規や分度器、その他の製図用の器材を利用して描かれていたということです。
計算に関しても、配管内の圧力やワイヤーを通る電圧、航空機の翼にかかる空気力など、すべて手作業で行われていました。そのため、ヒューマンエラーが起こりやすい状態だったのです。
デジタルが紙に取って代わった理由
同様に、このような製図は、保存や輸送が難しいことは言うまでもなく、損傷や破損も起こりやすいのです。その状況を全く変えてしまったのが、CADソフトウェアです。現在では、設計図は紙面や二次元に限定されたものではなくなり、同じ職場や地球の裏側で作業している仕事仲間が閲覧したり、編集したりすることもできるのです。
今後の使用のために安全にアーカイブする必要がある場合はもちろん、CADによる設計品の現物か、オブジェクト自体のどちらかがもう存在しない場合にも、デジタル製のCADモデルの方が、ほぼ全ての点で優れています。正確なCADモデルが手元にあれば、どんなパーツや部品も実質的に復元することができるのです。
CADソフトウェアの簡単な用途一覧
製図
技術者が製図を描くのは、パーツや部品、機器などが、当該オブジェクトの製造や開発において使用される際の仕様に適合しているかどうかを確認するためです。航空宇宙技術用のパーツや医療機器、機械部品などの場合にも適用されます。
建物平面図
建設業界では、通常『設計図(blueprints)』と呼ばれ、建物の設計方法、使用する建築材料、階段の吹き抜け、窓、シンク、扉などの特定の設備の設置場所などを詳細に記したものです。今日では、CADソフトウェアを使用すれば、素早く簡単に作成することができます。
電子回路図
現在のコンピューターベースの設計パッケージは、サーキットボードの設計図を含む、電子回路図の作成のできるツールキットを提供しています。手作業では何日もかかっていた図面の作成が、今ではわずか数時間で完成し、そのテンプレートも必要な時に再利用したり、仕事仲間と幅広くシェアしたりすることができます。
空調設備図
住宅やその他の種類の建物の詳しい暖房、換気システムの設計は、複数の主流のCADシステムが提供している、広く普及している機能です。通常は、床面積、屋外の気候、断熱性や部屋の種類などの要素に基づいた、設計に必要な要素を見積もるための複数のテンプレートやツールセットが付属しています。
配置図
建物の壁から外へ広範囲に飛び出し、居住地や商用施設全体をCAD上で正確に設計、計画することも可能です。この作業は、敷地の調査だけにとどまりません。CADなら、造園部分やプール、庭園、私道、樹木、歩道、その他の施設を作成することができます。
新旧対決:パラメトリックモデリング対ダイレクトモデリング
現在、販売されている、最も普及したCADプログラムには、二つの主なモデリングパラダイムが存在します。それは、パラメトリックとダイレクトです。それぞれを簡単に見ていきましょう。
パラメトリックモデリング
一九八七年から使用開始されているこのパラダイムは、通常、人々がCADモデリングについて話す際に、頭に描いているものです。パラメトリックモデリングなら、3D形状をピースごとに構築し、二次元のスケッチを用いて三次元のフィーチャを作成することができます。
その際、必要な全てのフィーチャや拘束を慎重に追加していきます。そのため、パラメトリックモデリングは、特に、モデルのフィーチャセットが何百やそれ以上にも及ぶ場合には、入念な計画が必要となります。
この種のヒストリーベースのモデリング手法が、パラメトリックモデリングと、もう一つの主要な方法であるダイレクトモデリングとの大きな違いなのです。パラメトリックモデリングでは、ソフトウェアはモデルに追加したフィーチャを、その追加順に正しく記憶しています。
そのため、この手法はシーケンシャルインストラクションの存在するコンピュータープログラムのようでもあり、全ての新しいフィーチャの追加や既存のフィーチャの変更は、モデルの詳細部分全てに影響を与えます。
パラメトリックモデリングは非常にパワフルですが、欠点もいくつかあります。まず、その習得の難しさで、使いこなせるようになるまでに、何か月も、時には何年もの使用経験が必要となります。現在のユーザーの方なら問題はありませんが、新しい技術者の方にとっては、自身の活動領域で上手く使えるようになるまで、手ごわい習得過程と直面することになります。
しかし、最大のハードルとなるのは、おそらく、パラメトリックモデリングのヒストリーベースの手法であり、モデルの構築方法を正確に理解し、全ての拘束や仕様を頭に入れて慎重に作成しないと、図面を混乱させる原因に即座に繋がります。
ダイレクトモデリング
CAD設計市場では比較的新しい反面、パラメトリックモデリングよりも明らかに魅力的なダイレクトモデリングは、若い技術者の間で良く利用されています。
この方法では、WYSIWYG(見たとおりのものが結果に反映されること)環境で作業することになり、パラメトリックモデリングのようにフィーチャの寸法や見取り図を編集するのではなく、モデルの実際の表面を移動しながら、モデルの構築や編集を行います。
そのため、ダイレクトモデリングは、ラピッドプロトタイピングや設計作業に優れており、詳細な設計履歴を覚えておく必要がないことから、特に、ワークフローにおいて、必要事項や仕様の変更に対応しなければならない場合の工業デザインに最適です。
ダイレクトモデリングの多くの支持者は、この点こそが、自分たちのワークフローを、パラメトリックモデリングのものと差別化するものである、と確信しています。というのは、ダイレクトモデリングで変更を加える場合は、それが修正であっても、新しいフィーチャの追加であっても、広範囲における混乱を引き起こしてしまうパラメトリックモデリングと違い、図面上の物体を誤って壊してしまう恐れが全く無いためです。
双方の利点と欠点
このように、どちらの方法にも長所と短所があり、現在の主流のCADシステムのほとんどは、パラメトリックモデリングとダイレクトモデリングのツールセットを組み合わせた上で提供しています。例えば、ソフトウェアの中には、ダイレクトモデリングの編集用ツールが付属している反面、フィーチャの作成は未だにモデルの履歴階層の中で行われているような、純粋にダイレクトモデリングシステムとは呼べないパッケージも数点あります。
結局のところ、あらゆる入手可能なプログラムを試すのも、自身に最も理想的な選択を行うのも、ユーザーである皆さん次第なのです。
長い使用経験のあるCADユーザーの方は、既に多大な時間と労力を費やしていらっしゃるのですから、パラメトリックモデリングを継続して使用した方が良いと思われますし、新しい技術者の方は、所属する企業や状況によって選択する必要がある場合を除き、ダイレクトモデリングの使用を考慮すべきでしょう。
結論
市場に出回っている大量の選択肢の下で、自身に合ったCADソフトウェアやスキャンからCADへの変換ソフトウェアを選ぶことは、何週間もの慎重な検討と調査が必要な作業のように思えます。しかし、これまでにご説明したように、ほとんどの選択肢は特徴の異なる数種類のものに分類することができるため、このことで、ソリューションを正しく見極め、選択する際に混乱を招くような要素は著しく減少します。
この概説、及びこちらの記事では、あらゆるCADソフトウェアや、スキャンからCADへの変換ソフトウェアパッケージについて、その価格設定、付属機能やその他の特徴の詳細を網羅しましたが、この二つをお読みになれば、どのソリューションが皆さんのどのニーズに一致するかを考慮しながら、目の前やネットでの実演の機会や購買を考慮する更なる機会において、以前よりも準備ができた状態で、注目すべき製品を絞っていく作業に望むことができるでしょう。
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コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアは、異なる分野の様々な種類の工程で設計者やエンジニアに利用されており、設計、シミュレーション、製造、その他のあらゆる領域で業務を行っている方々の頼みの綱となっています。CADソフトウェアは、設計構想や草案の視覚化のみでなく記録にも役立ち、特許出願や設計の法的保護、適合性の検査を行うことが可能となります。
従来のCMM(三次元測定機)では、オブジェクトを迅速に、そして傷つけないように測定するのが難航するケースがあり、特に穴や壊れやすい表面を持つオブジェクトを扱う際にそういった傾向があります。幸いなことに、3Dスキャンの進歩のおかげで、デバイスの設計やソフトウェア機能の改善、そしてその他の回避策によって、このような問題に対処できるようになりました。そのため、この技術はさまざまな部品検査の用途に対応できる手段として、CMMのシステムと競い始めています。