3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artec 3D社のレビューによるリバースエンジニアリング用ベストソフトウェア

2022年 11月 3日
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概要

オブジェクトについては、分解したり、組み直したりすることで多くのことを学ぶことができます。実は、このプロセスこそがリバースエンジニアリングなのです。物品の分解と再構築の過程を通じて、その作りと機能について、また、パーツの交換、改修、分析方法について必要な情報を得ることが可能です。パーツの正確な寸法を得ることは非常に重要であるため、3Dスキャニングがここで、その役割を果たします。そして、3Dスキャンデータから信頼性のあるCADモデルを作成するには、最良のリバースエンジニアリング向けソフトウェアを使用することが最善策なのです。こうした点を考慮した上で、本稿では我々が独自で選んだ、すぐに利用できるツールの中から最も優れたものをご紹介します。

ソフトウェア
Artec Studio、Meshmixer、Artec計測キット、Design X、Geomagic for SOLIDWORKS、及びSpaceClaim
プラットフォーム
Windows, macOS, Linux
価格帯
無料から18.000ユーロまで

はじめに

Best software for reverse engineering

 

手元にあるパーツやツールを分析して、その製作過程を理解するにはどうすればよいのでしょう? 機械やシステムの作動状況をはっきり把握するにはどうすればいいのでしょう? こうした質問に答えるのが、リバースエンジニアリングです。対象となるオブジェクトを分解して、その機能方法、及び改良方法やレプリカの作成方法も把握することができるのです。リバースエンジニアリングを行う際には、オブジェクトの正確なジオメトリを素早く、できる限り高精度でデジタル化する必要が度々生じます。今日では画期的なテクノロジーのおかげで、最も小さく、最も特殊な工業用パーツから大規模な構造物や建設用具まで、実質的にすべてのものをリバースエンジニアリングすることが可能です。

このリバースエンジニアリングの多様な用途は、製品の品質向上、特注生産や再製作には必須です。リバースエンジニアリングは製造業、航空宇宙産業、自動車産業で幅広く使用されており、入手不可能な、若しくは生産中止になったパーツの再製作や複製、品質管理のためのオブジェクトの検査、競合する会社の製品の潜在能力の査定などのような、多彩な作業が含まれています。

具体的には、一般的なリバースエンジニアリングのワークフローに含まれるのは、データを得るためのオブジェクトの計測、それに続くデータ処理に加え、CAD上での設計です。今日のリバースエンジニアリング技師には、この過程全体に役立つ数々の優れたツールが利用可能であり、その中に含まれるのがリバースエンジニアリング用ソフトウェアなのです。

そのようなリバースエンジニアリング用ツールの最良のものを数種、リバースエンジニアリングを構成する各工程段階についても触れながら、詳しく見ていきましょう。

リバースエンジニアリングにおけるデータ取得と処理

リバースエンジニアリングでのデータ取得、及びその方法については様々な意見がありますが、本稿の目的上、焦点を当てるのは、現在、最も使用されている方法である3Dスキャニング、フォトグラメトリ、CMM機器、CTスキャニングです。ご紹介するテクノロジーはそれぞれ、主に利用されている産業や用途を基に選出されており、考慮すべき時間や経費上の制約についても付記されています。

キーポイント

リバースエンジニアリングでのデータキャプチャはマニュアルでもデジタルでも可能ですが、最も普及している方法は3Dスキャニング、計測業基準に沿ったフォトグラメトリ、CMM機器、そしてCTスキャニングです。

完成した製品やパーツのリバースエンジニアリングには、3Dスキャニングは最善の選択と言えるでしょう。オブジェクトをCADモデルへ変換するための、最も速く、最も簡単な方法です。3Dスキャナでは直接3Dモデルは作成できないため(ポイントクラウドやメッシュデータのみの出力が可能)、工程の次の段階ではモデリングツールを利用する必要があります。この段階は『スキャンからCADへの変換』として一般に知られているワークフローであり、3Dデータをプロフェッショナル用ソフトウェアにより、編集可能で直ちに設計へ利用できるCADファイルへと変換する、半自動化されたプロセスです。

3Dスキャナによる正確なサーフェスの計測は、このプロセスにおいては重要です。3Dスキャンデータは実際に、現存するオブジェクトから得られた知見を活用し、オブジェクトを最も正確な形でデジタル化するために役立ちます。プロフェッショナル向け3Dスキャナによりキャプチャされたデータは、利用可能な3Dモデルの形で、オブジェクトや場面の最も詳細なジオメトリを体現しています。

CTスキャナやCMM機器は高価な上、持ち運びが不便で、使用に慣れるまでに時間が掛かる場合が多いですが、3Dスキャナはその正反対に近い特徴を持っています。その速さ、多様性、使い勝手の良さにより、リバースエンジニアリングにも大いに役立ちます。

ポイントクラウドのキャプチャに使用される3Dスキャニングテクノロジーにはあらゆるものがあり、現在のところ、光学式3Dスキャニングが最も普及しています。光学式3Dスキャニングは構造化光法により、若しくはレーザービームを照射してオブジェクトをデジタル式にキャプチャし複製する、非破壊的工程です。

今日、入手可能なスキャニングソフトウェアツールには、スマートフォン用アプリから、オペレーティングシステム、使い易さや経費により異なる種類を選ぶことのできる3Dイメージングソフトウェアまで、実に多様な種類があります。いずれにせよ、十分に開発されたソフトウェアの顕著な特徴の一つは、その扱い方を把握するには長い時間を必要としない点です。つまるところ、最も重要な点は、データキャプチャに費やしたすべての労力を実らせ、成果物を非常に正確で高解像度の上、素晴らしい品質のものとすることなのです。

計測業水準の精度を持つフォトグラメトリは、様々な角度から撮影した写真を組み合わせて3Dポイントクラウドを生成する、もう一つの計測法です。計測業水準に沿ったキットに必ず付属しているものは、ターゲット(貼り付け可能か、マグネット式)、スケールバー、参照クロス、そしてパワフルなカメラです。このようなキットを3Dスキャナと併用すれば、高精度3Dモデルを作成する必要がある場合には良いソリューションとなります。フォトグラメトリにより作成された3Dポイントクラウドは、オブジェクトの3Dスキャンにより得られた3Dメッシュとの位置合わせを行うことも可能です。この双方の組み合わせにより、高精度が実現するのです。

キーポイント

どのような計測技術を扱う場合でも、工程を上手く完了させるためには、使い勝手の良いソフトウェアの存在が最も重要となります。

ソフトウェアツール

Artec Studio

価格
  • 三十日間無料試用
OS

Windows

利点
  • スキャニング時の精度と速さを最大にする、性能の向上したアルゴリズム
  • テクスチャ及びジオメトリトラッキング用高性能アルゴリズム
  • スキャンデータのCAD幾何形状へのフィットが可能
欠点
  • 全種類のリバースエンジニアリング用ツールを揃えるには、完全パッケージの形での入手が必須
Best software for reverse engineering

 

円滑な3Dスキャニングを行うためには、使い易さと時間の節約が求められます。Artec Studio上でのデータ処理の際には、ほとんどの作業がお任せとなる、優れたモードのオートパイロット機能、若しくは多用途向けで、製作の管理をすべて自身で行うことのできるマニュアルモードのいずれかを選ぶことが可能です。オートパイロットモードはすべての工程を管理し、一つの段階が完了するごとに次の段階へと自動的に移行していきますが、より使用経験が豊富なユーザーの方は、マニュアルモードを使用すれば、より柔軟性を持って作業を行うことができます。Artec Studioはブール演算などの高度な機能により、特にリバースエンジニアリングのワークフローの効率化を図るよう開発されており、CADでの生成物やメッシュを使用してモデルを加工することができます。同様に、最先端技術のオートサーフェスツールは、有機形状を使用してソリッドなCADモデルを作成する際に役立ちます。

キーポイント

Artec Studioは、リバースエンジニアリングのための主要なスキャンからCADへの変換機能、及びリバースエンジニアリング用ツールを全種類搭載しています。Geomagic Design Xのような、完全パッケージのソフトウェアと併用することも可能です。

一体型ソリューションのArtec Studioには、メッシュのソリッド幾何形状の作成、サイズ変更、位置変更のためのすべてのツールが付属しています。一つのソフトウェア上でデータをキャプチャし、3Dモデルに幾何形状をフィットさせることができるため、設計工程を大幅に加速化します。Artec StudioのCAD幾何形状は、リバースエンジニアリングワークフローを大幅に強化します。主要な幾何形状データは抽出後、一般に使用されているどのCADフォーマットでの保存も可能なため、Design XやGeomagic for SOLIDWORKSなどのソフトウェアへ、作成したメッシュやCADオブジェクトをワンクリックでエクスポートすることも可能となります。

Autodesk Meshmixer

価格
  • 無料
OS

Windows、macOS

利点
  • 豊富なチュートリアルやユーザー用素材
  • 豊富で使い易い編集機能
  • 迅速なフォーマット調整
  • 信頼性のある空洞化機能
欠点
  • 初心者には高度過ぎる可能性
  • 高性能のグラフィックカード及びアップデート済みのグラフィックカードドライバが必要
Best software for reverse engineering

 

MeshMixerは、当初は3Dプリンティングのコミュニティ対象に限定された『趣味用のツール』でしたが、今やメッシュファイル処理用の最高水準の性能を持つソフトウェアに成長しました。リバースエンジニアリング工程において、3Dスキャンデータの修整や3Dプリンティング用のためのファイルの準備、作成したモデルへの追加の作業などが必要になった場合は、MeshMixerにすべてお任せください。使用方法に慣れるために少し時間を割けば、幅広い種類のツールでモデルを上手く処理できるようになります。編集スペースにファイルをドラッグするだけで、3Dモデルの調整、切断、クリーンアップ、修復や組み合わせが可能となります。

MeshMixerの使用には、技術的な専門家も、ソフトウェアを隅々まで理解することも必要ありません。しかしながら、最大限に活用するためには、少し時間をかけて基本的な機能を覚える必要があります。チュートリアルはオンラインで入手可能なため、メッシュ加工に関する特有の技術や知識を素早く学ぶことができます。

Artec Metrology Kit

価格
OS

Windows

利点
  • Geomagic Control XやPolyWorks、その他の大手のソフトウェアとの互換性
  • 最高2ミクロンの精度
欠点
  • 使用には、計測業水準のフォトグラメトリワークフローの基礎知識が最低必要
Best software for reverse engineering

 

光学座標系計測システムであるArtec計測キットは、リバースエンジニアリングや試験、検査のワークフローに簡単に統合することが可能です。計測キットの優れた利用方法の一つは、フォトグラメトリの結果を一台、若しくは複数のArtec 3D社製のスキャナでキャプチャされたデータと組み合わせることです。容積測定精度はこの場合、最高で15 µ/mまで向上します。機械のパーツや航空機の部品、船舶、乗用車や風力タービンに至るまで、幅広い種類のオブジェクトに対し、計測キットは3DメッシュやCAD生成物の申し分のない精度の計測や比較の必要がある際に、最適な計測ソリューションとなります。

CAD設計作業:巧みな技術で

次の段階の作業内容は、リバースエンジニアリング過程の最終目的により異なります。モデルを直接、製造に利用するか、リバースエンジニアリング用CADプログラムで引き続き分析や加工に利用するか、のいずれかを行うことが可能です。ここでは、リバースエンジニアリング過程を完了させるために利用可能なプログラムのうち、最も優秀と思われるものをいくつかご紹介します。

Geomagic Design X

価格
OS

Windows

利点
  • パラメトリックCADと3Dスキャンデータ処理を組み合わせた、他に類を見ないソフトウェア
  • SOLIDWORKS、Siemens NX、Autodesk Inventor、PTC CreoやPro/Engineerへのエクスポートを通じて、お好きなCADシステムに新しい構成部位や要素を追加することが可能
欠点
  • 最高水準のソフトウェアが入手できる反面、かなり高額の投資に
Best software for reverse engineering

 

Geomagic Design Xは、3Dスキャンデータを基にフィーチャベースのCADモデルを作成できる、究極のソリューションです。新しいパーツや部分組立品を作成するためにオブジェクトをスキャンする必要がある場合でも、パーツをパラメトリックモデルとして完全に再モデル化する必要がある場合でも、この極めて優れたプラットフォームは大いに役立ちます。Geomagic Design Xは楽々と、平面やスケッチ、フィーチャをスキャンデータから自動的に作成します。

Design Xのユーザーインターフェイスは、開発の際にモデルとされたSOLIDWORKSのインターフェイスと同様に、使い易く設計されています。画面上部にあるアイコンの揃ったリボンは、点、ポリゴン、領域、位置合わせ、スケッチ、サーフェス変換など、必要なすべての機能を装備しています。画面左側には、点やポリゴン、サーフェス、スケッチなど、作成済みのデータがリストアップされます。二〇二二年の最新版のGeomagic Design Xには、様々なスケッチツール、ロフトやサーフェス変換モデリングツールの強化版、ターゲットメッシュの置換機能のような、便利な新機能が搭載されています。

キーポイント

Geomagic Design Xは包括的な、製造業界で高く評価されているリバースエンジニアリング用ソフトウェアです。フィーチャベースのCADと3Dスキャンデータ処理の組み合わせにより、最先端のCADソフトと互換性のある、編集可能なソリッドモデルの作成が可能となります。

Geomagic for SOLIDWORKS

価格
  • ご要望に応じて
OS

Windows、macOS

利点
  • 自動化されたウィザード機能により、正確なスケッチ、サーフェスやフィーチャベースの編集可能なモデルの簡単な作成が可能
  • SOLIDWORKS上で直接稼働
  • CADオブジェクトやメッシュオブジェクトなどの迅速で簡単な3D比較
欠点
  • 初心者には高度過ぎて使用は困難
Best software for reverse engineering

 

この3D Systems社が開発したプロフェッショナル用プラグインの使命は、3Dスキャンデータを用いた編集可能なCADオブジェクトの簡単な作成を可能とすることです。メッシュ編集、ポイントクラウド処理、自動化されたフィーチャ抽出は、Geomagic for SOLIDWORKSがリバースエンジニアリング用3Dモデルを超高速で作成できるように提供している、便利なツールのほんの一部です。

キーポイント

Design Xの簡略版であるGeomagic for SOLIDWORKSは、幅広い種類の普及している3Dスキャナをサポートしており、スケッチやサーフェス、フィーチャベースの編集可能なソリッドパーツを即座に作成し、複雑な3Dモデルの構築の際の所要時間を短縮します。

多くの3DスキャナはGeomagic for SOLIDWORKSに統合可能なため、お手元のスキャンデータを簡単にインポートすることができます。完成したデータは、インポートされたメッシュであっても、ポイントクラウドであっても、Geomagicのリバースエンジニアリング用アルゴリズムの最終段階の作業に使用することが可能です。このプラグインは、紛失された設計データや、古いパーツ用のCADドローイングの不足や、消耗や損傷したパーツの再製作の必要性などの課題にも、簡単に対処することが可能です。

SpaceClaim

価格
  • ご要望に応じて
OS

Windows、Linux

利点
  • ユーザー定義が可能な画期的なソフトウェア
  • シミュレーション準備の所要時間が短縮
  • 新しいパーツのリバースエンジニアリング用の軽量化された3Dモデリング
欠点
  • シミュレーションには多大な処理能力が必要な上、ソフトウェア使用時にも多量のメモリを使用
Best software for reverse engineering

画像提供:Ansys/YouTube

SpaceClaimは、エンジニアがソリッドボディを何もない状態から製作できるように開発された、独立型のソフトウェアです。STLファイルを非常に効率よく取り扱うことのできるSpaceClaimは、ノイズの多いスキャンデータの精製や、満足のいかないスキャン済要素の修正も簡単に実行することができます。SpaceClaimは、高度なCADシステムや従来のシステムの利用方法を学ぶ時間の無い方に、角柱や現実的な形状のものからソリッドジオメトリを自動サーフェス処理する手法であるスキンサーフェスのようなツールを提供することのできる、素晴らしいソリューションです。このため、全く異なった種類のスキャンデータを利用して、その品質に関わらず、サーフェスデータを再構築することが可能です。また、シミュレーション準備に必要な時間も節約できるため、その時間をシミュレーションの結果の取り扱いに利用することも可能です。このプラットフォームにより、ジオメトリの準備が加速化され、分析段階へのより速い移行も可能となり、シミュレーション開始までの時間を短縮することができます。

次なる大きな一歩

3Dスキャニングほど、リバースエンジニアリングの作業の高速化できるものは、他にはありません。どんなオブジェクトも数分でデジタル化でき、写真のように完璧な3Dモデルへと加工したり、オブジェクトを改良した形で再び作成したりすることが可能となります。3Dスキャニングは、精度を急激に向上させ、品質分析も高速化し、必要となった代替品の作成も可能とするため、リバースエンジニアリングには欠かせません。プロダクトデザイナーや製造業者の方がご利用になる際には、リバースエンジニアリング用の最も優れた種類のソフトウェアは、製造業水準の3Dスキャナとの併用によってこそ、その真の実力を発揮できるようになるのです。

目次
著:
varvara

バーバラ・コネバ(Varvara Koneva)

テクニカルリポーター

ラーニングセンターに

さらに詳細が記載されています

3Dスキャンは今やこれまで以上に広く利用されるようになっており、生産性を向上させて不要なコストを排除し、新しいエキサイティングな製品やサービスを創造するために、世界中の企業がこの汎用性の高い技術を採用するようになりました。

皆様の企業や取引先の製造設計のニーズに応えるために、CADシステムの導入が必要かどうかをお考えであれば、このまま続けてお読みください。目のくらむほどの数の選択肢の中では相当の額の投資と思われたものが、計り知れないほどの時間、労力や出費の節約に結果的に繋がり、最善の決断であったことに後から気付くこともあるのです。この記事では、品質検査、リバースエンジニアリングやその他の用途における現時点でのCADシステムについて、また、その導入がどのような課題の解決に役立つのか、もしくは、3DスキャニングがCADワークフローの質をいかに力強く向上させるかについて概説しています。