Artec EvaとGeomagic Freeformを使用して唯一無二の義足を作成する

ドイツ中部のとある清々しい朝、ヴォルフガングK.(Wolfgang K.)氏は配達用トラックに乗り込み、彼のキャリアで最後となった新しいルートへ車を走らせました。彼は最初の目的地の工具店で荷物を降ろし、フォークリフトが箱を運び去るのを待っていました。突然の悲劇が襲ったのは、その時でした。

ヴォルフガング氏がフォークリフトと反対の方向を向いていた時、フォークリフトは彼に衝突したことで彼の足を骨折させ、彼の体を地面に叩きつけたのです。その瞬間から彼が覚えているのは、背中を平手打ちされたように感じたことだけで、それから彼は気を失ってしまいました。しばらくして彼は耐え難い痛みで目覚めると、救急隊員が周りにいて、彼の足と足首に大きな損傷があると告げられました。

病院はすぐに彼の怪我を治療して状態を安定させましたが、その数週間から数ヶ月後には炎症が悪化してしまいました。ヴォルフガング氏は医者に自分の足を切断するように求めましたが、彼らはそれほど簡単に負傷した足を諦めることはしませんでした。結局、彼らは炎症がヴォルフガング氏の足に広がり、広範囲の壊死組織を引き起こすまで、負傷した足を救うために3年間全力を尽くしました。

そんな努力も虚しく、ついにヴォルフガング氏の医師らは膝から下の彼の足を切断することを余儀なくされました。その後数週間、ヴォルフガング氏の(残りの)足にあった腫れが治まった後、彼はそれまでの自分の足と全く異なる義足を装着しました。その頃、彼はドイツのベルンブルクの整形外科クリニックであるSanitätshaus Klinzの広告を見つけ、それからすぐに彼はこのクリニックの患者になりました。

Sanitätshaus Klinz製の新旧バージョン両方の義足を装着した患者

義肢装具に対する驚異的な世界的需要

毎年米国だけでも185,000件以上の下肢切断が行われ、世界中では100万件以上が行われているため、現在義肢の専門家らはそれに向けたサービスに対する需要の高まりに追いつくのに苦労している状況です。

患者の残りの足と結合させるデバイスの一部である義肢ソケットを作成する従来の方法には、石膏の鋳造をはじめ、数時間の作業、そして十分な技巧と経験が必要とされます。

Sanitätshaus Klinzのスペシャリスト達は、彼らの作業に石膏鋳造などのアナログの手法を採用していますが、従来のツールでは達成できないような最も困難なプロジェクトには、彼らが導入した3DスキャナであるArtec Evaを頻繁に使用します。

プロ仕様のハンドヘルド3DスキャナであるArtec Evaは、医療従事者や世界中の何千人もの人々の間で最も人気があり、1ミリメートル未満の精度でカラー3Dスキャンをすばやく提供することができるので、今回のケースでの手術後の足のような有機的な表面や、他の体の部分の測定をキャプチャするのに理想的です。

Artec EvaとArtec Studioソフトウェアを使用して得た患者の残りの足の3Dスキャン

またその一方で、最高の精度が要求される、複雑な詳細を持つプロジェクトの場合には、彼らはArtec Space Spiderを活用します。もともとは国際宇宙ステーションでの使用のために開発されたこのSpace Spiderは、さまざまな分野で活躍する設計者やエンジニア、そして研究者達の間で人気があります。

まったく新しい義足のデザインを夢見て

ヴォルフガング氏がSanitätshaus Klinzの患者になって以来、義足をいくつか試してきましたが、ついにシャワーや水泳にも使用できる、新しい入水用義足を手に入れる時が来ました。

それには防水性と耐食性の両方が必要で、しかも塩水環境にも耐えられなければなりません。Sanitätshaus Klinzの生物医学エンジニアであるリサ・パブスト(Lisa Pabst)氏が彼のその要求を知ったとき、彼女は彼にさらに良い製品を提供することを決意しました。

パブスト氏がヴォルフガング氏と話し合いをした結果、彼女は彼にとってダイビングが彼の情熱であることを理解しました。そこで彼女は、ヴォルフガング氏と彼女の同僚の整形外科技術者であるカーステン・スーレ氏とともに、単なる見た目重視の製品ではなく、世界にたったひとつの、海のデザインを備えたユニークな入水用義足を作成するというアイデアを思いつきました。

ヴォルフガング氏は片足を失った後でも、ダイビングと海への愛情を決して失いませんでした。彼はパブスト氏のその考えを聞くと、是非ともお願いしますとゴーサインを出しました。

パブスト氏は、このプロジェクトの課題について次のように述べています。「既存の義足にデザインを適合させるのではなく、新しいデザインに義足を統合できるかどうかを試すために、別のアプローチを追求したかったのです」

水泳用の足ひれを取り付けるために義足を傾けることができる、新しいデザイン

彼女らの目標は、入水用義足のすべての耐水性と義足の外観を組み合わせることでした。長ズボンの下にそれを着用した場合、下に義足があることは誰にもわからないようにするためです。この義足の外観全ては、このデバイスの機械的コンポーネントを覆い隠し、保護しなければなりません。

このデザインのインスピレーションについて、パブスト氏は次のように述べています。このタコ型の体は義足の上部を覆い、タコの触手は下腿の形に似せています。足首には触手が絡み合った、ノスタルジックなダイビングヘルメットが追加されました。足首の関節は、ヘルメットの側面の開口部から操作できるようになっています」

患者が使用している新しい入水用義足

それと同時に、パブスト氏のチームは、新しい義足の最も重要な部分はソケットの形状と適合性であり、個々の患者にぴったり合うような設計でなければならないことを理解しています。わずかに不適合でも、患者に不快感を与えたり、将来の怪我につながる生体力学的な機能障害を与える可能性が高いからです。

最悪の場合、ソケットの取り付けが不的確だと、患者は皮膚潰瘍やバランス障害を引き起こしてしまったり、転倒や慢性的な筋骨格の酷使による怪我、または変形性関節症などに苦しむ可能性があります。

新しいソケットにシームレスにフィットさせるために、彼女らはArtec Evaに頼ることにしました。これは、パブスト氏がヴォルフガング氏の残りの足のすべての表面形状を1分足らずでスキャンする際に使用したものです。パブスト氏は、彼のもう一方の足もスキャンしました。新しい入水用義足の形状と寸法を作成するためには、負傷しなかった側の足の正確な体積と表面の測定値が必要だったからです。

Artec Studioのスクリーンショット:患者の残りの足のEvaスキャン

スキャンセッションの直後、3DメッシュをGeomagic Freeformにエクスポートする前、スキャンは Artec Studio softwareで処理されました。パブスト氏は、このソフトウェアに搭載された直感的に使用できるツールを利用して、床や周囲にあった他のオブジェクトなどの不要なデータを削除しました。

Artec Studioのスクリーンショット:患者の負傷しなかった側の足のEvaスキャン

スキャンは位置合わせされてから、1つのオブジェクトに結合されました。最後に、テクスチャが取り込まれ、メッシュに適用されました。Freeformでは、パブスト氏は義足のソケットを設計し、デザインの外観的要素をデジタル彫刻で仕上げました。

パブスト氏は、EvaがFreeformとの相乗効果でどれほど彼らの役に立っているかについて言及しました。 Evaのスキャン をFreeformにインポートすれば、義足の設計作業に使える信頼できる基盤がもうすでにそこにあり、そこからスタートできるのです。Evaが患者の体の正確な測定値をキャプチャするのには、たった数秒しかかかりません。Freeformでは、これらの寸法に基づいて新しいデザインを作成します」

Geomagic Freeformのスクリーンショット:患者の負傷しなかった側の足のEvaスキャンと、Evaのスキャンをもとに作成された、残った足のモデル

パブスト氏はこう続けます。「患者の残りの足の独特の形状を完全に把握してサポートする必要がある、新しい義足のソケットを作成する場合には特にそうなんですが、表面の1ミリずつをきちんとデジタルでキャプチャして設計に組み込む必要があるんです。幸いなことに、Evaはそれをすばやく簡単に実行してくれます」

彼女のワークフローには次の手順が含まれていました。メッシュをFreeformにインポートして配置した後、ヴォルフガング氏の残りの足をモデル化しました。その後次のステップに進む前に、彼女は彼の反対側の足をFreeformでミラーリングしました。そこからは、彼女は義足のシャフトを組み立て、アダプターに合わせて成形し、義足の機能要素の設計を準備しました。

Geomagic Freeformのスクリーンショット:シャフトをアダプターに合わせて成形し、デザインを義足の機能要素に適合するようにします

次にパブスト氏は、ウォルフガング氏のもう一方の足の正確な測定値に従って義足の触手の外形寸法を成形し、下腿の全周はそれと同じになるようにしました。

Geomagic Freeformのスクリーンショット:反対側の足に行ったEvaスキャンの測定を使用して触手の寸法を合わせているところ

この時点で、パブスト氏は触手の吸盤を作成し、シャフトやタコ、触手、ダイビングヘルメットを本体に接続しました。他のいくつかの手順の後、彼女はKlinzのロゴと患者の名前でデザインした模様をそこにエンボス加工で入れました。

新しい義足の外部コンポーネントを3Dプリントした後、それらはデバイスの機械的要素と統合され、所定の位置にロックされました。ヴォルフガング氏はこの段階でフィッティングのためにクリニックに招待されました。

誇らしげに立っている様子:新しい入水用義足が取り付けられ、使用できる状態にあります

彼は新しい足を見たその瞬間から、非常にそれに満足しました。それは彼が今まで試したことのある他のKlinz製品の義足と同じくらい快適なフィット感を実現していたからです。彼の妻と娘たちもまた、この製品に大喜びしました。最近彼らが楽しんだバルト海でのバケーションでは、子供たちは彼の素晴らしい足をじっと見るなり、賞賛したそうです。

O&Pにおける3Dスキャンの能力と可能性

パブスト氏は、現代のO&Pのデザインにおいて3Dスキャンが得た極めて重要な役割について次のようにコメントしました。「ハイテクまたはローテクのどちらのツールを使用するにしても、整形器具や上半身または下半身の義肢を作成する場合にはまず新しいデバイスを接続させる患者の体の部分を正確に測定する必要があります」

Geomagic Freeformと触覚デバイスを使用して、新しい入水用義足の仕上げを行います

彼女はさらに次のように説明しました。「とにかくこの基盤をまず構築しないと、いずれデバイスの不適合を始め、デバイスに対する患者の身体的反応などの深刻な問題が発生します。Artecスキャンから作業を始めれば、私たちが製造するすべてのデバイスすべては、反対側(問題がない側)の手足そっくりになりますし、患者の体に自然に繋がるようになります。Artecスキャナによる3Dスキャンが私たちの仕事にもたらした違いは、本当に重大です」