Artec Eva がグアテマラの子どもたちでも買える人口装具の製作をサポート

15/05/2019

子供のための人口装具に力を入れている非営利団体が、子供ひとりひとりに合わせて設計された腕、脚、手、足を非常に低コストかつグアテマラの農村の過酷な条件に耐える充分な耐久性のある人口装具を製作するための最適な方法を探していました。

古代マヤのピラミッドからそう遠くない、北グアテマラのジャングルにある人里離れたとある村。村の少女Yari は今日も朝を迎えていました。他の子供たちが学校へでかけていく声があちこちの家で響いています。子どもたちはすぐに険しい、石がごろごろと転がった道路や根とつるに絡まった抜け道を越えて、何マイルも歩くことになるでしょう。

しかし、朝学校に通うことができる子供たちは幸運です。村の子供たちのほとんどは、家族が次の月も生きていくため、コーヒー農園やサトウキビ、トウモロコシ畑で働きに両親と一緒に出かけなければなりません。

Yari

しかし、この日もそして他の日も、Yariは畑にも学校にも出かけません。Yariは小さな頃に癌で片足をなくしました。グアテマラのほとんどの村のようにYariが産まれた村でも、障害のある子供は厳しい現実に直面しています。Yariの一日の最高のひとときは、夕方疲れ果てた母が仕事から戻り、それから母親の手を握りしめ、弱々しい足取りで村の石ころだらけのほこりっぽい道を歩くひとときでした。

その他の彼女の一日といえば、トウモロコシとコーヒーを砕き、小さな錆びたなたで床で木を刻んだり、泥で覆われた、時に煙でいっぱいのコンクリートの塊でできた家の床を掃くことでした。

それが、Yariが今まで唯一知っていた、生き方でした。たとえ彼女が義足をつけることが可能でも、シンプルな AK (膝の上) でもその価格は15000ドル。月50ドルから70ドルしかない彼女の家族の収入では、Yariにとって新しい足など手の届かない夢でしかありませんでした。

失業率 66%の地域では、5歳未満の子供の半数が栄養失調による発育不全に苦しみ、極度の貧困という状態が当たり前です。来年の夏まで生き延びるため、Yariの両親は食べ物を食卓に置けるように全力を尽くしていました。

グアテマラ農村地域の典型的な台所

しかし、Yariの家族は遠く離れたサンベニートにあるという無料の農村医療センター、Shalom病院について聞きました。Yariのような子供たちを助けてくれるる新しい人工装具クリニックがあるという噂でした。そしてこの日こそ、その後のYariの人生が変わった日でした。

Shalom病院

Yariと両親は、何マイルも足元の悪い道を、彼らが暮らす村からShalom病院まで長い旅をしました。到着するとすぐに歓迎されたYari一家は、待たされること無く受診と評価を受けました。そしてほんの数時間後にはYariは新しい足を装着して、まだ若い人生の最初のステップへ踏み出していました。

Yari とMeredith Wright

その日以来、Yariの人生は希望に満ちています。今は学校に通っていて、大人になったら「先生になりたい」と言うほどです。

彼女の家族も、Shalom病院の人たちも彼女のこの夢を応援しています。もう彼女を止めるものは何もないのです。

Yariと彼女の新しい人工装具の脚

Yariとご両親

Shalom病院はTim とDoris Spurrierという2人のアメリカの宣教師によって始められました。2人は2人の子供と車に飛び乗って、オハイオから南へ、車で5日間旅をしました。彼らがグアテマラに到着したとき、家族がついに「家」を見つけたと感じ、それ以来、彼らはずっとそこにいることにしました。

最終的に彼らは小さな病院で人口装具のクリニックを開くことに決め、2006年に認定義肢装具士で矯正歯科医のBrent Wrightに訪問を依頼しました。到着した彼はすぐに、このグアテマラ初であり唯一のクリニックを組織しました。

製作物を手にしたBrent Wright氏

数年後の2015年、クリニックへの支援と開発途上国のより多くの人々が利用できる人口装具を作るための新しいアイデアの必要性が急速に高まると、Wrightと仲間たちは非営利団体 LifeNabled を立ち上げました。

しかしその前に、2006年のお話をしておきましょう。Wrightは初めてグアテマラを訪れたとき、米国で使用されている人工装具が$5000 から $10万以上の価格で、グアテマラでは全くもって手の届かない価格であるだけでなく、グアテマラの農村のような極限条件で長く使うことができるような十分な耐久性が無いことにすぐに気が付きました。高い熱と湿度が、汚れた環境で何度も衝撃を受けたりねじれる動きをしたりという条件と組み合わさるのは、過ごしやすい生活環境のために作られたデバイスにとっては、大きな損害となります。

そのため、Wrightが米国に戻った後、彼は中心的な製作所であるSunStone LabのオーナーFrank Hodgesと共に座り、手頃で求めやすい価格なだけでなく、患者ひとりひとりのためにカスタマイズでき、それが使われるであろう過酷なグアテマラの気候と農村での生活に耐えるのに十分なほど頑丈な人口装具を作る別の方法を設計しました。

彼らは時間をかけて使われる方法や材料を精査し、今日では足 ($50)、膝 ($70)、BK (膝の下) 補綴 ($150)、および AK (膝の上) 補綴 ($300) という価格でカスタマイズの長期間利用できる人口装具を作ることができるようになりました。

たとえば、腕の3Dプリントではコストの差はとりわけ顕著でます。人工腕を作るための材料の伝統的なコストは、$800から$ 1200 の範囲でしたが、彼らが2016年に始めた3DプリントではWrightによれば「約$4の材料費で腕の装具作ることができる」のだと言います。

LifeNabledが製作した2つの装具

彼の夢の1つは、世界中で、とりわけ人口装具のスペシャリストが国全体で1人か2人しかいないような貧困地域においても、必要な全ての人の手に人工装具を届けることです。

Wrightは、「18ヶ月前に初めて、3Dプリント素材が効果的で耐久性のあるプロテーゼに使用できるようになりました」と語り、プロテーゼのまさに革命の時期が来ていると言っています。

機能的で、快適で、スタイリッシュ

従来までのプロテーゼの製造では、患者が罹患した四肢の石膏型を作成するために繊維ガラスのキャストを使っていました。そこから、金型をやすりで磨いて調整し、不完全さを取り除き、いくつかの部分に余裕をもたしたり、ストレスポイントの微調整などを行います。

石膏の型づくり

測径器や定規、その他の測定およびチェックの様々なツールを利用します。このステップの後、厚い共重合体のプラスチックのシートを柔らかくなるまでオーブンで加熱します。柔らかくなって取り出されると、これをすぐに石膏モールドの上に広げます。

プラスチックは冷却するとプルダウンされ、型の形状に正確に合わせて真空密閉されます。「テストソケット」として知られている手法で、通常、炭素繊維や類似のプラスチックから製造された最終的なソケットを製造する準備の際、フィッティングや調整のために使用されます。

石膏モールドに仕上げ作業を施す

「とても人手を必要とする人工装具の製造方法です」とWright。

フィッティングを待っている新しいプロテーゼ

より良い方法を探した結果、彼は最終的に3D スキャンにたどり着き、Artec ゴールド認定代理店 Digitize DesignsのBo Helmrichのサポートで、 Artec 3Dのプロフェッショナル・ハンディ型スキャナ Artec Evaを知ることとなりました。医療からリバースエンジニアリングに至るまで様々な産業で使われ、高解像度のカラー3DでオブジェクトをキャプチャするEvaは、Wrightにとって、そしてクリニックにとってもまさに画期的なものでした。

しかしだからといって、すぐにそのまま利用したわけではありません。Wrightは、とりわけ難しいプロテーゼの製作において、最高レベルの精度を達成できると信じたのです。

Brent、Yari、 Meredith

「3D スキャニングは形状のキャプチャには適していますが、負荷がかかった元での形状やその下の組織構造がどうなっているのかまでキャプチャすることは必ずしも得意ではないと思っていました。それゆえに、私はとにかく良い型(キャスト)を作ることが大事だと考えていました。そして、キャストの外側と内側をスキャンすることで、その下の組織やテンションがかかった状態での患者の四肢の実際の体積を測る方法がわかったのです。」

Carlitoの新しい脚

無接触3Dスキャンを参照すると、Wrightは「患者に直接スキャンを行うときはいつでも、その根底にある解剖学的部位がどうなのか、そして、負荷がかかった状態での四肢の本当の体積を推測しています。プロテーゼに関しては、推測ではしたくありません。」

Meredith とJazmin

「スキャナのEvaは素晴らしいですが、それよりすごいのは、ソフトウェアのArtec Studioです。キャストを外した後、2つに割りEvaですぐにこの両方をスキャンします。そしてArtec Studioでまたこのふたつを一つにした、高精度な3Dモデルに簡単に戻せるのです。このように、高精度3Dスキャンが、負荷のもと患者の四肢のキャストを製作した正確さと統合され、双方の最高の利点を利用することができました。それゆえ最終的な3D モデルは、解剖学的にも完全に正しく、非接触スキャンでは不可能な全方向に適切な体積のモデルができあがるのです。

Shalom病院で新しいプロテーゼをフィッティング

「Artec Eva は、私たちが知るなによりもキャストの内側をうまくスキャンしています。これを完璧に行うことができる唯一の3D スキャナだと思います」と、Wrightは言っています。

製造プロセスの「3D スキャン」バージョンのこの地点に到達するために、時間も人でもかかる従来の方法では、全体のシーケンスに患者の患部のガラス繊維のキャストを作り、適切にくるみ(骨の突起、膝蓋骨、圧力ポイントなどを示すために) マーキング、乾燥するのを3〜4 分待って切断し、スキャンの準備をすることが含まれることになります。

スキャンは Artec Studioで直接行われ、スキャン対象のオブジェクトがリアルタイムで画面に表示されるので、キャスト全体を上から下にスキャンしたことが数秒ですぐにわかります。そこから、スキャンを1つのモデルに配置し、CAD/CAM ソフトウェアなどの他のアプリケーションにエクスポートするだけです。

「OBJ ファイルとしてモデルを Geomagic Freeformにエクスポートすれば、驚くことに私が行う必要のある類の設計と変更作業ができてしまいます。触覚デバイスを利用しているので、私の手のまさに下に、オブジェクトのすべての曲線と起伏を感じることができます。これは本当に素晴らしいですよ」とWrightは語っています。

彼はまた、関節と各デバイスの多くのカスタム部分を設計するために、Fusion 360 を使用しています。プロテーゼ製作の従来の方法はこれからも使われるでしょうが、LifeNabledでは3Dスキャンが彼らの働き方と、現在の速度と柔軟性の両方を永遠に変える扉を開いてくれました。

「このようにプロテーゼを作る素晴らしいところは、Evaとその後のデジタル処理で、私が文字通りどこででもその後の作業を行うことができるということです。スキャンが完了し、それが高速に行われれば、私も私のラップトップでテレビの前に座って、すぐそこに設計作業の残りを行うことができます」と、Wrightは言っています。

新しい人工装具の設計

「クリニックでこのことが意味するのは、患者が来てからわずか1時間で歩くことができるということです。」

しかし、全てが思い通りというわけにはいきません。プロテーゼを作るのには熟練した技術者が必要で、容易に見えるかもしれないものの実際には厳しい職業なのです。厳しいフィールドワークもある1年間の実践トレーニングは、義肢装具士になる必要な最低限の部分です。「実践がこの仕事では必要なんです。教科書以上に大切なことがたくさんあるのです」とライトは述べています。

「しかし、彼らが訓練を受け仕事を覚えた後、このプロたちが身近にいるというのはとてもむずかしいことなのです。専門知識ゆえ国内でも国外でもどこにいっても必要とされます。彼らが学んでいるスキルは非常に求められてるものなのです。」

LifeNabledでも、国内や海外から、サポートのためのボランティアを必要としています。そして彼らの仕事が広がれば、人的リソースだけでなく、寄付や材料もさらに必要となります。

下腕のプロテーゼを合わせる

2006年以来、 Wrightと彼の妻 Meredithは、年に2回グアテマラに旅行し、スーツケースと機内持ち込みバッグに収まることができるものを持っていきます。 Artec Eva、2つの3D プリンター (Filament Innovations )高出力のAlienwareのラップトップ、脚部のプロテーゼで使うアルミパイロン、3D プリンター用のプラスチックフィラメント (CF PETG、PETG、ポリカーボネートなど)、人工膝ナイアガラ義足、鋳造用ファイバーグラスなどです。

6~7日の滞在の間に、クリニックで他のものたちとともに、新しいプロテーゼ作成や調整、修理などを行う40人から50人の患者を診ます。つまり、30から40の新しいプロテーゼが設計され、生産され、取り付けられ、そしてクリニックから去っていくのです。また、必要に応じたちょっとした修理用に、協力者にあまりの部品も残していくことにしています。

何年にも渡り、ふたりはグアテマラの手や脚を失った人に400以上の人工装具を提供してきました。彼らの患者の多くは成長し、成人しています。かつて絶望を覚え、価値がない、恥ずかしいと感じ、時には呪わることさえあった男女が、今日では積極的に教師や医師、ビジネスマン、労働者としてのキャリアを目指しています。

仕事へ向かうVeronica

彼らの夢は現実になりつつあり、ジャングルや火山、崩れつつあるマヤ寺院があるこの貧しい土地ではこの夢はむしろ大きな偉業です。彼らとその家族のために、彼らの新しい腕と脚は、彼らに新しい希望を与え、自尊心を飛躍的に高め、そして新しい生活をもたらしました。

LifeNabled は将来的に、CE認定のプロテーゼを中心とした3Dプリントコースを提供するだけでなく、組織が世界中のあらゆる場所でそれを必要としている人たちに人口装具を提供できる、スキルと専門知識を学ぶことができるトレーニングプログラムを作ろうと計画しています。LifeNabledが最終的に目指しているのは、手や足を失った人が、収入や中心地からの距離に関係なく、手に入れやすい価格で人工装具を手にいれることができるよう、そのためのトレーニングとプロテーゼのコンポーネントを世界中で提供できるようにすることなのです。

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