DNH 155:Artec Space Spiderが200万年前の頭蓋骨の再構築に貢献した方法

28/04/2021

著:Matthew McMillion

「この物語には、人々に知ってもらうべきことがあります」と言うのは、ラ・トローブ大学の研究者で、このプロジェクトの共著者でもあるジェシー・マーティン(Jesse Martin)氏です。「Artec3Dスキャナとソフトウェアがなければ、この誰もが読んだことのあったDNH155頭蓋骨の再建は不可能だったからです」

マーティン氏は、共同研究者のアンジェリン・リース(Angeline Leece)博士を始め、アンディ・ハリーズ(Andy Herries)教授や他のチームとともに、Artec Space Spiderを有効活用していました。人類の小進化で見られる変化を鮮明に証明する、古代の人間の「いとこ」にあたる生物の、並外れたレベルの標本を発掘と再建していく上で、このハンドヘルド3Dスキャナ はすべての段階で必要とされていました。

この研究論文の完全版は、2020年11月9日にNature Ecology&Evolutionに掲載されました。

このチームがオーストラリアのメルボルンの本拠地から南アフリカに飛んできたとき、彼らのハンドヘルドのSpace Spiderは機内へ持ち込む手荷物として、大事に飛行機に運ばれました。その数日後、このチームは南アフリカの土壌から発見された最初のDNH155頭蓋骨の破片をキャプチャしていました。そして、それから何百回ものスキャンと数か月にわたる現場での徹底的な作業の後、Space Spiderは最終的に再構築された頭蓋骨をスキャンして、この研究論文に載せる画像を作成しました。

南アフリカ、ドリモレンメイン採石場

私達人間にとって遠い親戚にあたるパラントロプス・ロブストス種の、ほぼ完全体の頭蓋骨であるDNH155は、南アフリカのヨハネスブルグのすぐ北にある、ドリモレンメイン採石場で、2018年にフィールドスクールの学生であったサマンサ・グッド(Samantha Good)さんによって発掘されました。ほとんどの化石の発見は、バラバラになった歯や骨、または頭蓋骨の断片のみですが、今回はDNH155の何百もの断片が互いに比較的近くにあったのを発見されました。と言っても、それらがジグソーパズルのピースのように、すぐにピッタリはまったわけではありませんでした。残念ながら、そう簡単にはいきませんでした。

ドリモレンの野外で、共同ディレクターのステファニー・ベイカー(Stephanie Baker)さんの助けを借りて、数日間にわたってリース博士は大きな化石が埋め込まれた堆積物のブロックを地面で注意深くスライスしました。これらの準備が整うと、マーティン氏は土から頭蓋骨の断片を丹念に抽出するために木の棒や他の道具を使い、仕事に取り掛かりました。土が崩れ落ちてこないように、土は化石保存の管理者が通常使用する接着剤が注入されていて、何年もずっとそこにあった状態をそのままを保持していました。

この接着剤が堆積物とその中の化石をくっつけているのを剥がすために、マーティン氏はブロックの表面をアセトンで繰り返し濡らすことで接着剤を柔らかくさせました。それからは、接着剤がまた乾く前に、一度に数mmほどの深さの土をそっとつまみだすか、はらいのけるか、またはストローでその土を吸い取るかの作業でした。化石の1つが明らかになると、すぐに彼はSpace Spiderを手に取り、堆積物の表面全体と一緒に断片をキャプチャしました。

DNH155が2万世紀後に再び光を見ている様子

マーティン氏はこのように言います。「この時点では、化石を綺麗にして保存する必要がありますが、そのためには化石を分解しなければならないジレンマがあります。つまり、化石を正確に元に戻すためには、元の場所を破壊する必要があるということです」彼はこう続けます。 Space Spiderを使用して各化石層を3Dスキャンすれば、正確な記録が得られ、しかもその後それを元の場所に戻すことができます」

300時間以上の間、マーティン氏とリース博士はひたすらそれを実行しました。特定の断片が見つかった位置と場所が定かではないときは、Artec Studioソフトウェアで実行されているSpace Spiderスキャンのコレクションを使用し、たった数回のクリックでデジタルダブルを表示させ、ほんの数秒でその答えを得ることができました。

Space Spiderは、250以上の断片からDNH155を再構築させる際にも重要でした。「それぞれの化石は、私たちが化石をつなぎ合わせる手動の再構築プロセスの中でずっと、何度もスキャンされました」とマーティン氏は言います。「これにより、再構築中に毎回正確な3D記録が提供されます。Space SpiderでDNH155に焦点を合わせるために、あの化石の現場で何度もスキャンし、ヨハネスブルグ大学のラボに戻ってきました」

そのプロセスについて、マーティン氏は次のように詳しく説明しました。「再構築中に大きめの部分を個別にスキャンするため、頭蓋の内部の詳細もすべて把握ができます。考えてみれば、この頭蓋骨がすべて元の状態に戻ってしまえば、従来のどの方法でも頭蓋骨の内部に入りこむことは不可能でしたが(CTスキャンでなら、できたかもしれませんが)、Space Spiderは非常に高速なので、最終的な再建の前に個々のピースをスキャンするのは簡単なのです」

マーティン氏は、彼が信じているSpace Spiderの最大の利点の1つを以下のように強調しました。「写真測量法や、キャリパーや定規を使用する手動測定という、従来の考古学者が使用する方法は、化石にやたら負担をかけてしまうんです。それは、遅かれ早かれ、化石にひっかき傷を付けてしまったり、化石が少し欠けてしまうだろうということです。

Artec Space Spider

マーティン氏は、次のように付け加えています。「私が訪れたことのある化石コレクションの中で、何年もかけてキャリパー測定が行われたせいで、骨や歯に引っかき傷や欠けている部分があるものを何度も目撃してきました。しかし、Artecスキャナを使えば、そんなことは一度たりとも起こりえません」

彼はさらに次のように説明しました。Artec Space Spider3Dスキャンをすれば、化石と接触することなく、わずか数分で正確に測定ができます。私はそれで類人猿の頭蓋骨を1000回スキャンをしたところで、損傷はでないでしょうが、他の研究者が金属やプラスチックでできた従来のキャリパーの方法で同じことをしようとすれば、損傷はいつかはきっと起こるでしょう。言うまでもなく、キャリパーを使用したさまざまな解剖学的な測定には、化石の少し変わった、絶妙な配置が必要になります。これは、可能ではありますが、大変危険でハラハラする行為です」

マーティン氏は彼が通常行うSpace Spiderを用いたスキャンプロセスについて、こう説明しました。「私はこのスキャナで最初のパスを1回行い、化石を保持しているターンテーブルを回転させながら、このスキャナをゆっくりと上下させます。それから化石をひっくり返して、反対側にも同じことをします。これはせいぜい数分しかかかりません。そうすることで、処理をするときにこの化石を完成化させるために十分な表面のオーバーラップとカバッレジが得られます」

Artec Studioでは、マーティン氏は消しゴムを使用して背景を削除し、その後そのスキャンの位置合わせをします。その次に、彼はスキャンを位置合わせするためにグローバル位置合わせを実行し、それから外れ値の除去とシャープメッシュ化を行います。彼は自分の選ぶ方法について、次のように説明しました。「類人猿の頭蓋骨の場合は、すべての定性的特性をよく調べたいので、精度を100ミクロンに設定します。そうすれば、側頭線や頭蓋縫合、孔など、私が見たいものすべてを見ることができます」

そのモデルが全て完全に穴埋めされていることを確認した後、マーティン氏はテクスチャを追加し、そのスキャンをWRLファイルとしてエクスポートします。「WRLを選択したのは、それがユニバーサルフォーマットであるからだけでなく、テクスチャをジオメトリから分離させたいからです。私達のような仕事をしているときは、定性的な特性が見れるように、その色を取り除くことは重要になります。それらは私達が繰り返し使用するものですしね」

Artec Studioのテクスチャ付きDNH 155のスクリーンショット

化石のジオメトリを直接取り扱うことの重要性について、マーティン氏は次のように述べました。「色が付いていないスキャンを見ることはArtec Studioで簡単にできますが、そうすることで研究者達は彼らが想像できる以上にもっといろいろなものが見えるんです。化石を直に目の前で見るより、はるかに多くのものを発見できますからね」

テクスチャを削除したDNH 155のArtec Studioでのスクリーンショット

マーティン氏はこう続けました。「ここにちょうど良い例があります。数年前、別の類人猿の頭蓋骨をスキャンしたときにSpace Spiderが明らかにしたもののことですよ。この標本は大体200万年くらい前のもので、それはそれが死滅してからまだ2、3年ほどしか経っていないときのものでした。若いときは、頭蓋骨がまだ融合していないため、頭蓋骨は比較的柔らかく、脳は急速に成長し、柔らかい頭蓋骨の内側を圧迫するようになります」

「頭蓋骨自体を視覚的に調べているときはそれを見ることができません。きちんと訓練を受けた研究者達でさえです。それは、ただ凸凹や傷のように見えます。しかし、Artec StudioSpace Spiderスキャンからテクスチャを削除すると、頭蓋の内面には最も驚異的な細かい痕跡が確認できるのです。まるで200万年前の古い類人猿の脳をCTスキャンしたかのようにね」

さらにマーティン氏は続けました。「その脳は、頭蓋骨にはっきりとした痕跡を残しました。中硬膜血管や溝、そして回旋状などの痕跡の詳細を見ることができます。脳のどの領域が存在するかしないかを簡単に解釈することも可能です。ここで、少し冷静に考えてみてください。Space Spiderでスキャンした頭蓋骨にあった脳の痕跡のおかげで、200万年前の脳を研究できるようになったのです。そのスキャンからテクスチャを削除すると、すべてが見事に詳細をきちんと含んで表示されます」

研究者のアンジェリン・リース博士とジェシー・マーティン氏が、DNH 155の3Dプリントコピーを見ている様子

DNH 155もSpace Spiderスキャンから3D印刷されており、その結果は驚くべきものです。経験豊富な研究者達でさえ、この非常に壊れやすい200万年前の化石のリアルな3Dプリントを最初に目撃したときは感動します。

マーティン氏は、Space Spiderがキャプチャする詳細のレベルは、類人猿の頭蓋骨を再構築する際にいかに重要であるかをこのように説明しました。「実は、スキャンした頭蓋骨の断片を実際に3D印刷することは可能で、それらは実際の化石自体に完全にはめこむことができます。すべての頭蓋の縫合や、すべてのエッジが完璧に一致します」

マーティン氏は、モナッシュ大学のジャスティン・アダムス(Justin Adams)博士からArtecスキャナとArtec Studioソフトウェアを紹介された後、2015年にSpace Spiderの使用するようになりました。アダムス博士から彼に直接それらの使用方法の説明があったのはたった1時間だけで、マーティン氏がそれに習熟するのに大体10時間程しかかかりませんでした。

それは別に私がスキャンの天才だったからではありません。それはこのスキャンテクノロジーと、直感的に利用できるようにデザインされた製品のおかげです。最高なのは、そのパワーと使いやすさだけでなく、携帯性にも優れていることです。いつでもそれを現場に持って行くことができますからね」とマーティン氏は言います。

研究者であるジオバーニ・ボスチアン(Giovanni Boschian)氏作の、Space Spiderのスキャンと写真によるDNH 155のイラスト

メルボルンを拠点とし、Artecからゴールド認定を受けた販売代理店であるThinglabで3Dスキャンディレクターを務めるベン・メイヤーズ(Ben Myers)氏 は、考古学やその他の分野でのArtec 3Dスキャナの使用について、次のようにコメントしています。「私達はジェシー・マーティン氏と彼の同僚達が私達のクライアントとしてラ・トローブ大学で活躍してくださったことを誇りに思います。彼らは大学へ貢献するために、ベストを尽くしたのだと思います。 Artec 3Dは、研究者達や他の専門家達に最高の3Dスキャンソリューション提供してくれると私達は信じています。 デスクトップのArtec Microから、ハンドヘルドのEva、Space Spider、Leo、そして三脚に取り付けられたArtec Rayまで、様々なソリューションがありますね。 そのおかげで、すべてのデジタルキャプチャ用アプリケーションが、私達のすぐ手の届くところまで来ているのです」

このスキャンは、研究者ジェシー・マーティン氏へ送られたヨハネスブルグ大学とラ・トローブ大学による博士号奨学金、およびアンディ・ハリーズ(Andy Herries)教授へ送られたオーストラリア研究評議会発見プロジェクト助成金(DP170100056)によってサポートされました。