シェリル・ルウィン博士がArtec Space Spiderを使用して小耳症患者達に新しく美しい耳を作成する方法

01/02/2021

著:Matthew McMillion

シェリル・ルウィン(Sheryl Lewin)博士が頭蓋顔面外科医としてのキャリアを始めたとき、小耳症という子供が奇形または耳の欠損を伴って生まれてきた状態のための手術の「ゴールドスタンダード」は、ほぼその50年前と同じでした。

肋軟骨を用いた耳の再建は、2〜4回の手術を必要とする複雑な手順です。その手順の間に、肋骨軟骨のかたまりが患者の胸部から切り取られ、健康な耳の形に切り刻まれます。

その後、軟骨性の耳は頭蓋の切開された皮膚の下で外科の方法で滑り込ませられ、所定の位置に縫合されます。手術は通常3〜6か月の間隔で行われるので、新しい耳を手に入れるまでに1年以上かかってしまう場合があります。

手術後、通常はこれらの肋骨軟骨を用いた耳は自然に見えないことがよくあります。この肋骨軟骨の耳は正常な耳よりもはるかに厚く、頭に対して平らになっていることがよくあります。医師によっては、健康な方の耳を外科的に角度を調整し、左右の耳の対称性を実現する場合もあります。

小耳症手術患者の大半は子供です。複数の痛みを伴う手術に耐えた後、今度は永久的な胸部瘢痕が残り、さらには軟骨の喪失によって発生する胸部の非対称性が残ってしまいます。

軟骨が成人サイズの耳を作成するのに十分な大きさに成長していないため、年少の子供は、8〜10歳になるまでこの肋骨軟骨の手術を待たなければなりません。それまで、このような子供達はこの先天性欠損症に苦しみ、長年に亘る人々からの不快な視線やコメント、さらには他の人々から嘲笑されることさえ経験しなければなりません。

ルウィン博士はこのような結果に納得がいかず、この治療に伴う痛みと年齢制限に対して特に不満に思っていました。その結果、彼女はすぐに他の外科的選択肢を開発するための長い道のりを歩み始めたのです。

このリサーチにより、最終的にルウィン博士は代替の耳のフレームワークとして、合成材料を使用するようになりました。多孔性ポリエチレンでできた2ピースのインプラントを一緒にはんだ付けすると、4歳という若さで耳の再建が始められること、それが痛みの少ない外来手術になること、そしてたった1~2回での耳の外観の改善がされるなど、耳の再建に多くの利点がもたらされました。

しかし、この手法では2つのピースを接合する必要があるため、患者にはもしインプラントが破損してしまったら、インプラントを交換するためにさらなる手術が必要になるという、生涯ずっと続くリスクがありました。

骨折のリスクを最小限に抑えるために、ルウィン博士は高密度の多孔質ポリエチレンから耳のインプラント設計と彫刻を始めました。彼女によると、「この材料は耳のインプラントの作成用に私が知っている限りではベストの選択肢です。豊胸手術やチタン股関節インプラントに使用されるシリコーンと違い、これは体内での反応性が最も低いため、私が見てきた中で最高のインプラント材料です」

Poriferous社が手掛けた、3Dスキャンがされた「Lewinears」のコレクション

ルウィン博士は続けます。「体はこれらの物質を異物と見なすので、それらを隔離しようと、それらの周囲に被膜を構築します。しかしこの驚くべき材料である多孔質ポリエチレンは、サイズが約100ミクロンの数千の孔があり、組織の統合を促進します」

「体内の血管と組織は実はこれらの小さな穴に成長するのです。それぞれの毛穴の大きさがどれくらいかと言うと、それは紙のシートと同じくらいの厚さです。この素材は、医学的に安全だと証明されているだけでなく、生涯使用できるくらい長持ちするようにも作られています」

ルウィン博士はまた、患者の新しい耳が所定の位置に配置された後にそれが患者の健常なサイズの方の耳と対称的になるように、耳のベースとなる部分も再構築し始めました。彼女の 「ルウィンの耳」 の設計とワークフローが整ったので、彼女の患者の家族の間でその噂が急速に広がり、すぐに新しい患者が国中、そして世界中から彼女にやってくるようになりました。

手術で人生が変わった患者の手術前後の写真

「リアルな耳を手作業で作成することは、難しいけれど達成感をくれる作業です。ただ、残念ながら長い時間がかかってしまいます。満足のいく正確さのレベルに到達するのに10年以上かかりましたが、それでも結果が完全に対称的ではないと感じました。それがどうなるか正確にはわからなかったけれど、ただ特別なものを探し続けました」とルウィン博士は言います。

そんな中ある日、彼女がオンラインでソリューションを探していたら、ヘルスケアのための3Dスキャンに関するいくつかの記事をたまたま見つけました。そしてその記事から別のいろいろなページに繋がり、その後にルウィン博士はArtec 3Dのウェブサイトを見つけたのです。そこで彼女は、英国の病院で 小耳症患者との仕事のためにハンドヘルドでカラー3DスキャナのArtec Spiderを使った興味深いケーススタディを読みました。

そこから刺激を受けたルウィン博士はすぐに地元の販売代理店である Artec Ambassador Rapid Scan 3Dの名前を見つけ、現地でスキャナの実演をしてもらえるよう手配しました。Rapid Scan 3D社のクリス・ストロング(Chris Strong)氏がSpace Spiderの実演を見せると、彼女は自分が探し求めていた解決策はこれであると思いました。

Space Spiderで患者の耳をスキャンするルウィン博士

「クリスがボタンを押してSpace Spiderでスキャンを開始したとき、リアルタイムで画面に表示される詳細レベルに驚かされました。彼がスキャンしたものはすべて完璧にキャプチャされました。わずか数秒で、耳のもともとの形状と特性がすべて取得され、3Dスキャンに変換され、信じられないほど現実的な耳になりました」

ルウィン博士はすぐにそのスキャナを注文し、その後数日から数週間で、彼女独自のワークフローを作成しました。

Rapid Scan 3D社のクリス・ストロング氏の言葉を借りれば、「Space Spiderの精度と解像度は耳をスキャンするのに最適です。データがどのような目的に使用されるかを教わったとき、個人的に私は少しでもルウィン博士が必要とする仕事を手伝いたいし、何らかの形で貢献したいと思っていました。ルーウィン博士は素晴らしい人物ですし、美しい子供たちとその家族の生活をより良くするための彼女の行う手術もまた素晴らしいですね」

ルウィン博士の患者の1人の手術前後の写真

数年後、何百人もの子供の耳をスキャンした後、彼女は自分の選択が正しかったとさらに確信しました。 「私の診療を大きく変えてくれたこのSpace Spiderが私は大好きです。3歳からでも使用でき、1分も経たないうちに患者さんの耳の完璧な画像が得られます。一度テクニックを習得したら、とても簡単で使いやすいです。患者さん達はすぐにこの椅子に座って、スキャンはあっという間に終わるんですよ」

そしてルウィン博士は続けました。「その使用のためには小さな子供に麻酔をする必要はありません。通常は、スキャン中に子供が動き回らずに医師が耳のCTスキャンを取得できるよう、医師が麻酔をしなくてはいけないんですがね

Space Spiderを使用したルウィン博士のワークフローは次のとおりです。まずお子さんが手術に適していることを確認するための手術前の面接の後に、時前に写真でチェックしておいた健常なサイズの方の耳をよく観察し、スキャンに適しているか確認します。また、彼女はこのスキャナがどのように機能するか、そしてその構造化ブルーライトの使用がお子さんにとって100%安全な方法であるということをお子さんとご両親に説明します。

Artec Studioソフトウェアに表示された、患者の健常なサイズの方の耳のSpace Spiderスキャン

次に、耳の上のお子さんの髪の毛をジェルで後ろに流し、耳全体の構造が完全にブロックされていない状態で見ることができるようにします。スキャンでは髪の毛が邪魔にならないよう、小さなストッキングキャップをお子さんの頭に被せます。

その後、スキャン中もお子さんの集中力を維持させるために、お子さんにスマートフォンでゲームをしてもらいます!お子さんがゲームをしている間、ルウィン博士はSpace Spiderを使用してお子さんの耳を高解像度のカラー3Dでキャプチャします。

ルウィン博士はスキャンの様子をこう説明しました。「いつもお子さん達はスキャナに好奇心旺盛なんですが、お子さんにスキャナを見せたら、後は私は彼らの健常なサイズの方の耳を1、2回スキャンするだけです。これで、新しい耳を作るために必要なすべての解剖学的な構造を確実に取得できますから。Space Spiderを使用すると、とても簡単です。スキャンソフトウェアである Artec Studioの画面に即座にスキャンのフィードバックが表示されるので、私はすべてが完全にキャプチャされたことが確認できるのです

スキャンが終わったら、ルウィン博士と患者さんはご両親と一緒に耳の3Dスキャンのレビューをし、それを回転させたりズームインしたりして、すべての構造が見えるようにして、ルウィン博士は新しくつける「大きい」耳はこんな見た目になるんだということを彼らに説明します。

 それを見るご両親達は、ただ驚き、その3D画像に圧倒されます。彼らのほとんどは、私が彼らと話している間、モニター上にある3Dモデルをビデオで記録します。一番最初の段階で既に彼らに大きな感動を与えますね」とルウィン博士は言います。

ルウィン博士と母親同伴の患者が一緒に患者の耳のSpace Spiderスキャンを見ている様子

耳のデザインの調整は、結果を最適化するために、子供の年齢と解剖学に基づいた専用のソフトウェアを使用して行われます。スキャンの処理なしで、STLファイルはそのままArtec StudioソフトウェアからPoriferous LLC社に直接送信されます。Poriferous LLC社とは、スキャンをカスタムメイドの耳のインプラントに変換する、インプラントのスペシャリストです。彼らの作るインプラントは、Su-Porという、彼らの会社独自のブレンドの多孔質ポリエチレンでできています。Poriferous LLC社は、アメリカのジョージア州に拠点があります。

2週間後、殺菌された新しい耳のインプラントがロサンゼルスのルウィン博士のオフィスに送られます。手術を行う際に、ルウィン博士は追加の詳細を耳に彫り込み、彼女が目指すレベルの耳のリアルさを取得します。切開の他の部分が完了すると、彼女はインプラントのベースを調整し、外科的に配置したときに反対側の耳と対称になるようにします。

ルウィン博士と患者のウェス君が彼の耳とその周囲にある解剖学的な構造を含むSpace Spiderスキャンを見ている様子

「私がこれを行う理由は、ミクロティアでは影響を受けるのは外耳だけではなく、 頭蓋骨と治療を行う側の顔にあるすべての軟組織でもあるからです」とルウィン博士は説明します。「おそらく15%ほどの場合は耳そのものだけのケースですが、大多数の患者さんは、少なくともいくつかの片側顔面微少症が存在します」

「つまり手術を受ける側の頭蓋骨は、正常な耳の側と比べて異なる場合が多いのです。そして、顎は通常より小さく、頬と眼窩も同様です。新しい耳とその基部を準備するときは、これらすべてを考慮しなければなりません」

新しい「ルウィンの耳」を持つAvaちゃんの手術前後の写真

手術は8〜10時間続き、その後患者さんは目覚め、1時間ほどでご家族と一緒にホテルに戻ります。そして術後2週間に行われる2回のフォローアップ外来により、合併症の発生がないことと、すべてが正しく治癒していることが確認されます。

ルウィン博士の患者の家族は大抵この医療目的の訪問を、ディズニーランドや、ナッツベリーファーム遊園地、ラブレアタールピット博物館といったような場所へ行く日帰り旅行の楽しい体験と組み合わせます。

ルウィン博士はまた、彼女の患者達を助ける別の方法を見つけました。その患者の中には  小耳症ではない方の耳が、新しく作成された耳よりも突き出て目立っている患者がいました。この状態では非常に望ましくないコントラストになってしまう可能性があります。

整形外科におけるこのように突き出た耳への標準的な解決策は、「耳形成術」と呼ばれるものであり、正常でありながら目立つ方の耳を外科的に「ピン留め」し、頭に対してより平らに位置を調整することです。ルウィン博士は、Space Spiderスキャナを使用して、見た目の向上を目的とした、より良い対称性を実現することにより、この問題を解決する方法を発見しました。

「私は一時的に耳を後方に保持する方法を開発して、その状態の耳をスキャンして、Poriferous社の優秀なデザイナー達と共同でSpace Spiderを用いた「仮想耳形成術」と呼んでいる方法を実行します。子供の健常なサイズな方の耳をスキャンすることで、それが新しい耳の作成に使用されるだけでなく、それによって健常なサイズな方の耳も外科的に調整して新しく埋め込む耳と完全に一致させることができるので、それは素晴らしいことです」

ルウィンの耳を愛する患者達の手術前後の写真

「術後に子供を正面から見れば、まるで生まれつきそうだったように、美しい対称性になります」

長年にわたり、ルウィン博士は何百もの「ルウィンの耳」を外科的に配置し、世界中の患者の生活を変えてきました。患者たちの手術が終わって何年が経過しても、ルウィン博士はほとんどの患者の家族と未だに個人的に連絡を取り合っています。

ルウィン博士が言うには、「私のすべての患者さんとそのご家族は私の個人的な電話番号を持ってますから、私が生きている限りは彼らはいつでも私に連絡ができるわ。ずっとね。例えば母の日になると、世界中の私の患者さんたちから素晴らしいメッセージが届くのよ」

Space Spider が私の診療に与えてくれた影響に関して言うならば、このスキャナは私の今までのキャリアで私の能力を最大に向上させてくれた一番の要素でした」

「私は本当にこのスキャナが大好きです。軽量ですし、飛行機にも持ち込めるので、とても移動が簡単にできます。私はこれを全米あちこちで行われたカンファレンスに持って行きました。そこで私はたった数分で患者に会い、スキャンもすることができました。その後、彼らが手術のためにLAに来たとき、すべて準備は整っていました」

別の幸せな患者の手術前後の写真

ルウィン博士は週に3回の手術を行い、患者との診察は数か月前からの予約制になっています。彼らは、アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国、オーストラリア、カナダ、ラテンアメリカを含む世界各国から、彼女のところにやってきます。

ルウィン博士は、通常の外科手術に加えて、小耳症の手術に失敗した子供たちの支援に焦点を当てた非営利団体であるEaricles–Miracles for Ears(耳の奇跡)を設立し、運営しています。

約8,000人に1人の子供が小耳症で生まれ、世界中の無数の子供たちがこの人生を変えるような治療から利益を得ることができます。そして、シェリル・ルウィン博士は、それを実現させるために、子供の患者達ひとりひとりと向き合いながら、彼女ができるすべてのことをコツコツと日々地道に行っています。