恐竜の全身化石を驚異のディテールで3Dスキャン

20/05/2018

Artec Spider 3Dスキャナを使って、米国コロラド州のシンボル、 ケスラーステゴサウルスのレプリカの実物大3Dプリントを地元博物館の要請で作成しました。

恐竜展で特筆すべき素晴らしいシーンの1つは、デンバー自然科学博物館で向かい合うステゴサウルスアロサウルスと言えるでしょう。全長約8mのステゴサウルスは、コロラド州を象徴するアイコン的な存在の恐竜です。恐竜の種類だけではなく、この標本個体が州を象徴しています。ステゴサウルスは、1.5億年前に現在コロラド州と呼ばれる地域に生息していた、体重が最大10トンにもなる草食恐竜でした。このステゴサウルスをここまで特別な存在たらしめる理由は、これがコロラド州キャノンシティで発見されたからでも、恐竜の化石としては極めて稀なほとんど完全な状態で発掘されたからでもありません。この化石は、1936年に化石発掘実地遠足中の高校生とそのクラスを引率する教員、フレデリック・カール・ケスラー先生により発見され、専門の古生物学者が発掘する際にはその生徒たちも参加できるように手配されたからです。

デンバー自然科学博物館のステゴサウルス(右)とアロサウルスの展示

コロラド州ウッドランド公園にあるTriebold Paleontology社(TPI)のマイク・トリーボールド氏に会いましょう。TPIは化石骨格を復元し、組み立て、骨格の鋳型を作成し、これを世界中の博物館に提供しています。同社の顧客には、ニューヨークのアメリカ自然史博物館、ピッツバーグのカーネギー博物館、ワシントンDCのスミソニアン自然史博物館などの名前が軒を連ねます。TPI本社には、さまざまな鋳型やオリジナルの化石標本が収蔵されており、同社の自然史博物館Rocky Mountain Dinosaur Resource Center(ロッキー山脈恐竜リソースセンター)として展示しています。

マイク・トリーボールド氏は、同社の鋳型カタログの中にステゴサウルスを加えたいと考えていました。しかし、どのステゴサウルスでも良いと言うわけではありません。彼がそのプロジェクトの対象として目をつけていたのは、可能であれば、デンバー博物館にあるかの有名なケスラーステゴサウルスでした。それは、キャノンシティで新たにロイヤル・ゴージ・ダイナソー・エクスペリエンスが建設中で、キャノンシティ近郊でケスラー先生により発掘されたあのステゴサウルスのレプリカを置きたいと考えたからでした。ロイヤル・ゴージ・ダイナソー・エクスペリエンスの経営者であるザック・レイノルドさんのおじいさんも、1940年代から1960年代にかけてケスラー先生の恐竜発掘を頻繁に手伝っていました。ですから、ステゴサウルスは、家族的にも、地域的にも縁がありました。

交渉がまとまり、デンバー博物館の祝福を受け、作業が開始されました。

この標本を再現するのは、いくつかの理由により複雑でした。1つは標本の大きさでした。この恐竜は全長8mを超えるだけではなく、首から背中、そして尾へと続くプレートも約3mに及ぶ高さがあります。通常、大きさは克服できない問題ではありません。と言うのも、個々の骨はシリコンで整形され、液状プラスティックで鋳造されるからです。しかし、この標本は棚の上にある骨の集まりではありません。この化石は、1990年代に、二度とバラバラになることがないよう、永久にその姿を留められる方法で組み立てられ、展示されました。化石に沿って鉄を成形し、その場所に溶接し、骨と骨を永久接着しているため、個々の骨をシリコンで成形することはできません。

この標本を再現するために、TPI社のマット・クリストファー氏は3Dスキャンを使って成形する必要がありました。「レプリカを3Dプリントできるよう、解体することができない化石を3Dスキャンする必要がありました。」とクリストファー氏。「寸法と表面のディテールは、後から3Dプリントの微調整しオリジナルの標本そっくりに見せるため、シリコン鋳型で得られるものに近づける必要がありました。」

TPI社は、この作業のため、Artec Spiderストラクチャード・ライト 3Dスキャナ、Artec Studio 3Dスキャン・処理用ソフトウェアを使用しました。スキャナはArtecの現地のパートナー3D Printing Colorado社から購入しました。「Artec Spiderは当社が必要としていたデータをそっくりそのままキャプチャしました。」と、クリストファー氏。

Artec Studioで作成したケスラーステゴサウルスの最終モデル(横から)

Spiderを使い、個々の骨と化石の各部位をスキャンし、Artec Studioではこれを各プロジェクトとして保存しました。「この過程の中では、胸郭内を這って進み(その通り。ステゴサウルスの胸郭には大人一人がすっぽりと収まっていまします)、恐竜の背中を形成している背部椎や胸郭の内側面、
肩甲骨、そして臀部をキャプチャしました。」とクリストファー氏。「さらに、恐竜の背中に取り付けられた大型の扇形の皿を上から取るために、梯子の上から面白いアングルでも撮りました。鼻先から、尾の先端の巨大な尖った先端まで、僕達は、必要なエレメントをすべてキャプチャすることができました。」

チームは、Artec Studioで71個のプロジェクトを作成し、合計で629個のスキャンデータを撮りました。この数はさらに増やすこともできましたが、時間を短縮するため、手足や肋骨など、左右の写し鏡であるエレメントのスキャンは飛ばすことにしました。

すべてのスキャンは、Artec Studioで位置合わせ、クロップを行ない、その後、3Dメッシュファイルに変換する必要がありました。「Artec Studioの位置合わせ機能こそ、このプロジェクトの成功を確実にした鍵でした。」と、クリストファー氏。「各スキャンデータの位置合わせはとてもシンプルで、正しい位置のおおよその位置を手動で指定し、その後、位置合わせツールが完璧な位置に微調整しました。Artec Studioを使い、位置合わせをしたスキャンデータから生成したメッシュデータを作成、制御することで、操作や3Dプリントに必要な、希望したとおりのディテールを得ることができました。」

エクスポートしたメッシュデータには、対象物のスキャンより小さいすべてのエレメントを削除するArtec Studioのフィルタ機能ににより、土台などの余分なデータは一切入っていませんでした。小さな穴は、Artec Studioの穴埋めアルゴリズムにより自動的に埋められました。「もし、僕達が1つひとつの解体された骨をスキャンしていたら、Artec Studioを使って、完全完璧なメッシュをそのまま簡単に生成できており、別途後処理をする必要もなかったでしょう。」とクリストファー氏。「鉄のアーマチュアを外して、これに覆われていた表面を再建する必要があったため、このステゴサウルスを再現するために完全無欠のメッシュを作成することはできませんでした。」

そのようにして出来上がったメッシュデータをZBrushにインポートし、連結したエレメントを分離し、連結した骨と骨の間の隙間など、3Dスキャナでは到達できなかった表面の再建を行い、一部の骨表面を覆っていた鉄アーマチュアを取り外しました。

Artec Studioで作成したケスラーステゴサウルスの最終モデル(正面から)

TPI社は小型のFormlabs Form2 SLA卓上機から、大型のTitan Robotics社製Atlasまで、さまざまな3Dプリンタを所有しています。このプロジェクトでは、さまざまなプリンタを使い、骨格のプリントに6ヶ月を要しました。プリントが完了すると、手作業で軽く表面加工を施し、内部の鉄アーマチュアで使う模型を作るための鋳型を準備し、個々の骨で作業するのではなく、部位ごとに鋳型を作るために骨を連結しました。このようにして連結された骨のアセンブリをマスターは呼ばれます。その後、高品質液状シリコンラバーを使い、2つ以上のパーツから成るこれらマスターの鋳型を造ります。この作業は、TPI社のスタッフがほぼ30年行なってきたことです。

鋳造行程では、完成した鋳型にプラスチック樹脂で囲まれた内側の鉄構造をはめました。「プラスチックを鉄の回りに注入することで、骨の表面を隠してしまう外側のアーマチュアが不要になります。」とクリストファー氏。「アーマチュア周辺に流し込んだ型により、無制限にあらゆるポーズで化石を組み立て、プラスチック型の内側から突き出した鉄と溶接することができます。こうして組み立てた化石に手作業で色を付け、納品します。」

プロジェクトが完了し、こうしてできた作品は、米コロラド州キャノンシティのロイヤル・ゴージ・ダイナソー・エクスペリエンス(www.dinoxp.com )で、5月19日(土)に常設展示の初お目見えをします。ザック・レイノルドさんとその家族、そしてザックさんの父親のデイブさんは、このように実現した大切な願いを、今後長い間、人々と分かち合っていくことができるでしょう。

トリーボールド氏は、このプロジェクトは数十年前であれば不可能だったと言います。「当社のArtec Spiderを使い、現在の最先端技術と、従来行ってきた高度成形鋳造メソッドを組み合わせ、触ることすらせずに素晴らしい恐竜の正確なコピーを作ることができます。」と、トリーボールド氏。「さて、アロサウルスはどうしましょうか・・・」

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