3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

フォーミュラワンをリバースエンジニアリング 3Dプリントでミニコピー

3Dスキャン・ソリューションとリバースエンジニアリング・ソリューションを組合せて、これまで想像だにしなかったことができるようになりました。ARTEC Evaで3Dスキャンした実物大のF1レースカーの縮尺モデルを作成するという今回のプロジェクトは、3D技術を活用して実現できる1つの例に過ぎません。実際、3Dスキャナの用途は無限にあります。

今回のプロジェクトは、イギリス・バーミンガムに本拠地を構えるツール・メーカーが、ARTECのイギリスのパーナーであるCentral Scanning社と、CADやCAMソリューションの大手サプライヤーであるDelcam社に、このメーカーが所有するF1レースカーの直径約300mmの3Dプリントを依頼したものでした。

Central Scanning社はフォーミュラ 1 レースカーをスキャンし、Delcam PowerSHAPEを使ってリバースエンジニアリングしたその縮尺モデルを3Dプリントしました。

Central Scanning社がスキャンしたF1レースカーのデータをDelcam社のリバースエンジニアリング用ソフトウェア・パッケージPowerSHAPEを使って、モデル化しました。

PowerSHAPEを使って仕上げたF1 モデル。

「2種類のスキャンシステムを使って何ができるかを確認するために、当社はこのようなスキャンを行いました。」と、Central Scanning社のポール・スミス氏。

車体はSteinbichler Comet L3Dスキャナを、コックピット、ハンドル、ウィッシュボーン式サスペンション、リヤ・スポイラ、ウィング・ミラー、その他Steinbichler Cometではスキャンしにくい箇所にはARTEC Evaを使用しました。

「Evaを選んだのは、持ち運びやすさやスキャン速度に優れているためです。また、被写体に印を付けなくとも、簡単に近くに置いた絵などを認識する点も選んだ理由です。」と、スミス氏。

ARTEC Studio 10で表示されたコックピットの一部。

スキャンが行われたのは所有者のレセプション・エリアとワークショップでした。これらの場所が選ばれたのは、照明条件が良く、また、データキャプチャに影響を与えうる直射日光がないことでした。

スミス氏はカーパーツをスキャンするコツについて次のように教えてくれました。

「ウィッシュボーン式サスペンションの後ろに絵を書いた紙を置くことで、スキャナはテクスチャをトラックしたり、サスペンションの薄い形状をキャプチャすることができます。」

ウィッシュボーン式サスペンション周辺には暗い炭素繊維でできた箇所があり、ここはうっすらとスプレーをかけました。スポイラー周辺にもうすくスプレーし、光の反射を抑え、スキャンを簡単にしました。

「ARTEC Evaはキャリブレーションも不要で、セットアップが簡単で、難しい箇所でもキャプチャできる点が気に入っています。」とスミス氏。

ほとんどのデータは、グローバル・レジストレーション中にテキスチャをかけずに、標準設定で処理されるため、作業時間を短縮しています。ARTECとSteinbichler社のビッグデータをPolyWorksでマージしました。

スキャンデータから作成されたメッシュ。

約850万個の三角形で構成されたSTL完成モデル(データサイズ250Mb)を、PowerSHAPE Proを使って、完全にリバースエンジニアリングしました。複雑な二重湾曲領域では、サーフェスモデリングが、より角ばっている領域では、ソリッドを使ってのモデリングがそれぞれ適しています。

Delcam社のジェイムズ・スレーター氏は次のように語りました。「車のフロントフィンとリアフィンはソリッドとしてモデル化し、メッシュをかけながら部分ごとにモデルを作成し、それぞれを押出整形した後、単純なブール演算を使用してこれらの別々にできたパーツをマージしました。この作業は、実は、プロジェクト開始前に1週間の研修を積んだだけの夏期研修学生が行いました。そして、車体のより複雑なサーフェス構造は、より熟練のエンジニアが担当しました。最終的には、細部までこだわった、複雑なサーフェスのソリッドモデルが完成しました。他のソフトウェアを使っていたら、このレベルの作品を作ることは事実上不可能だったでしょう。言うまでもないことですが、リバースエンジニアリング・プロジェクトで最も重要なことは、高品質で正確なメッシュが実現できることです。」

F1の3Dプリントモデル。

F1レースカーの縮尺モデルの拡大写真。

車をフルサイズに拡大しました。縮小し、サスペンションやスポイラーなどの薄い領域はPowerSHAPEを使って、厚みをもたせました。モデルはObjet Eden 500Vで3Dプリント(印刷層0.016 mm)しました。