3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artecスキャナが複雑な部品のクラスタで大型オブジェクトをキャプチャする方法

とても細かい部分がいくつかある大型オブジェクトをデジタルでキャプチャする場合は、例えスキャンのプロであっても、最適にそれを処理するには一体どんな方法を使用すればいいのか、悩む時があります。例えば自動車のカスタマイズを担当する、とある整備士さんは、ある午後の数時間だけでランボルギーニの内部と外部をスキャンして、それに完全にフィットするカスタムコンポーネントと改造部品をデザインするかもしれません。また、とある航空宇宙エンジニアさんは、ジェット旅客機であるエアバスA380の操縦室をスキャンして、たった数日でVR対応で、しかもサブミリ単位でしかズレのない、ほぼ正確な3Dモデルに変換するように仕事をまかされるかもしれません。

Artec LeoでスキャンをしているShareMindのピエトロ・メロニ(Pietro Meloni)氏

操縦室の操縦パネル全体と、8つのディスプレイ、全てのスイッチ、ボタン、ジョイスティックなどを正確にキャプチャして処理する方法を、そのエンジニアさんが考えている間にも、時計は刻々と過ぎていきます。もちろん、操縦席と操縦室全体の建築も含めなくてはなりません。

単純なスキャンのタスクのように最初見えるかもしれませんが、それがすぐに数週間に及ぶ多段階プロジェクトになってしまう可能性があります。しかし、そうなる必要はありません。

この種の状況を想定した Artecのゴールド・リセラーであるShareMind のピエトロ・メロニ氏は、そんな状況のために「人間よりも大きくて」、複数の表面を持つオブジェクトをほんのわずかな時間で驚くほど正確な3Dモデルに簡単にキャプチャして、その後変換することができるように、合理的な作業段階を作成することにしました。

メロニ氏は、まず基準として使用するベンチマークのオブジェクトに、長さ3メートルのカヤックを選択しました。理由のひとつは、それが比較的シンプルなジオメトリで大きく広がった形をもっていることです。もう一つは、それが非常に詳細なディテールがほどこされたパーツを持ち、柔らかな素材を持つ複数のコンポーネントもあって、さらに手で届きにくいパーツも備えているためです。

彼はプロジェクトにメインで使用するスキャナとしてArtec Leoを選択しました。レオは革命的な ポータブル3Dスキャナ であり、それは完全にワイヤレスで、オンボード処理とリアルタイムでスキャンを確認するための、タッチスクリーンを後部に備えています。Leoは、人や家具、車などの中型オブジェクトを高解像度のカラー3D(最大0.1 mmの精度)でキャプチャするのに最適です。初心者からプロまで、ボタンのワンタッチで簡単にスキャンを開始できます。

カヤックのスキャン続行の準備が万端のArtec Leo

Leoを手にして、メロニ氏はカヤック全体とその60個近くのパーツを5分でキャプチャしました。その後、 Artec Studioのソフトウェアスキャンを13分で処理しました。しかし、彼はその結果に100%満足できませんでした。彼の目標は、専門家による検査でさえ合格するほど精密な3Dモデルを作成するための最良の方法を見つけることでした。メロニ氏はすぐに、カヤックのより複雑な側面にはもう一つ別のスキャナ、Artec Space Spiderの使用の方が向いていると気がつきました。

計量学的な正確度(最大.05 mm)で、 ハンドヘルド3DスキャナのSpace Spider は、リバースエンジニアリングと品質管理においての使用に優れており、複雑な形状や薄い表面をキャプチャする能力を備えています。また、小さな領域のスキャンに非常に適しています。

Artec Space Spider

メロニ氏が言います。「ジャングルには手術用のメスを持ち込まないし、手術室には狩り用の刀を持ち込んだりしないでしょう?それと同じように、各スキャナはそれぞれ別々の用途で最適になるようデザインされました。また、Artec Studio 15は、複数のArtecスキャナからのスキャンを非常に簡単に組み合わせることができるため、驚異的な3Dモデルをたった数分で作成できます。」「お客様の多くは、1つの3Dスキャナで、繊細なエメラルドの指輪から、サーカスのテントまで、なんでもかんでも完全にキャプチャできると勘違いなさっています。」

最終的なカヤックの3Dモデルの拡大図がハンドル、索具、その他の小さな部品を示しています。

2つ目にこのプロジェクトでクリアしなければならなかったことは、カヤックの索具などの柔らかく柔軟な要素をどのようにして扱うかでした。これらの細いロープは、グラスファイバーの船のさまざまな部分に張られています。たとえばカヤックの下側をキャプチャするためにカヤックを動かすと、たった少しだけだったとしても、この索具の位置は変わってしまいます。これにより、スキャンで二重露光が発生します。これは、従来の方法で処理するのには時間がかかります。

カヤックの3Dモデルの背面から、細い索具やその他の柔らかい要素が見えます。

そこですぐに頭に浮かんだのは、ZBrushを使用してこれらの柔らかい要素をモデルに変換する可能性です。メロニ氏はそのソフトウェアの使用の経験があったことから、こう結論を出しました。「結局のところ、靴ひもやカバンのショルダーストラップなど、他にも数えきれないほどありますが、スキャンが必要なオブジェクトと同様の特性を持つ材料やコンポーネントの例はこのように数多くあります。ですから、もしそれらをモデル化し、高解像度の3Dスキャンに統合するより簡単で速い方法があるならば、私はそれに大賛成です。」

ZBrushを使用してカヤックの小さなコンポーネントのいくつかを修正するピエトロ・メロニ氏

そして最後に直面した問題は、カヤックの内部の狭い空間にあるいくつかの小さなコンポーネントをスキャンするにはどういう方法をとるかということでした。これらと他のオブジェクトとの間の距離が短いため、キャプチャが必要な角度からそれらにアクセスすることは不可能でした。たとえば、釣り竿ホルダーは、カヤックの中央にぴったりと埋め込まれていました。それを見たメロニ氏は、これらの部品を分解して別々にスキャンをすることに決めました。

それは非常に成功しやすいだろうと思われました。すべての部品を取り外すのには、ほんの数分しかかかりませんでした。それから、メロニ氏はSpace SpiderとArtec Turntableを使用して各オブジェクトをスキャンしました。それらは2つは完全に同期化されているため、スキャナがもしトラッキングを失った場合は、Turntableが少量の角度分の位置に戻り、トラッキングが回復するにを待ってから、再度回転を開始します。

スキャンが終わると、メロニ氏はこれらの個別のオブジェクトを直接Artec Studioでカヤックを利用し、スムーズに組み合わせました。「このプロセスは実は非常に簡単です。各スキャンを処理して、カヤックと組み合わせるのは実に簡単でした。その結果、まるで各パーツが初めからそこにあったかのように見えました。これはMicroからRayまで、どのArtec 3Dスキャナのスキャンでもできます。それはとても簡単なので、初心者でもわずか数分でやり方を学ぶことができます。」

ハンドルなどの柔らかい部品のために、メロニ氏は少量のシンプルな3Dプリントの支え棒を作成することにしました。これにより、これらの要素は、カヤックで保持したときと全く同じ位置にキャプチャされます。

Artec Turntableを用いてスキャンする際に使用する支え棒を3Dプリントしている様子

Artec Space Spiderでスキャンするために、3Dプリントされた支え棒がArtecターンテーブルのカヤックハンドルをぶら下げている様子

メロニ氏はArtec Studioでのスキャン処理のワークフローを次のように説明しました:

「Artec Studio 15を使用して、問題なくスキャンの位置合わせをしました。次に、グローバル位置合わせ、ウォータープルーフのシャープメッシュ化、高速メッシュ単純化、そしてテクスチャ処理を使用しました。これはプロジェクトのそれぞれの要素のために船体から始めて、それから個別のパーツごとに実行したワークフローです。」

そして彼は続けてこう言いました。「Artec Studio 15のグループ機能のおかげで、作業が本当にシンプルになりました。カヤックのキャプチャをしている間、私のLeoスキャンは自動的に1つのフォルダにまとめられたし、その後小さなパーツのためにSpace Spiderでスキャンを開始したら、それらすべてが独自のフォルダにまとめられました。大量のスキャンを処理する場合、こういう自動整理を行うと劇的な違いが生まれるんですよ。」

Artec Studio 15のカヤックモデルのスクリーンショット。60個に近いパーツが自動的にまとめれています。

「小さなコンポーネントのスキャンと処理には、カヤックの船体の場合と同じ手順を使用しましたが、Space Spider とArtec Turntableでのスキャンでは、スキャンの前にベースの自動除去を有効にしていたし、処理中には外れ値除去フィルターも使用しました。」

Artec Studio 15のスクリーンショット カヤックの船体とコンポーネントのグローバル登録を強調しています

すべてのスキャンが完了して統合されたので、そろそろ索具に集中する時が来ました。Zbrushのモデリングは完璧に行われ、その後数分のうちに、メロニ氏は以前不可能だった柔らかい部分をカヤックモデル本体に直接モデリングすることができました。

Artec Studio 15のスクリーンショット スキャン密度を強調表示し、各オブジェクトの適切な密度を選択しやすくし、モデルの全体的なサイズを効率的に削減します。

「これらの部品は全体的なスキャンの中でもどちらかと言うと装飾的な部分だったので、このような高速3Dモデリングが最適でしたが、もしリバースエンジニアリングや品質管理などのために正確な寸法をキャプチャする必要があったならば、Space Spiderを使用して、はるかにもっと正確な測定値を索具や他の部品の取得していただろうと思います。」とメロニ氏は言いました。

カヤックの最終3Dモデル。すべての要素が配置され、準備が整っています

より良い結果を得るために複数の3Dスキャナと追加のツールを導入することに関して、メロニ氏はこの新しいアプローチは成功だったと言います。これにより、合計処理時間が大幅に短縮され、最終的な3Dモデルは予想よりも数日早く準備が整いました。彼はユーザーに新しいことにチャレンジしてみることを勧めます。

「そうですね、最初は複数のスキャナとソフトウェアのソリューションを取り入れることにより、ワークフローに少し余分な時間がかかってしまうし、ちょっと複雑になってしまいますけどね。でも、細かいディテールが多数ある大きなオブジェクトのプロジェクトに自信を持って取り組みたいなら、その時が来たときに備えて、準備しておく必要があると思いますよ。」

メロニ氏は続けます。「そういうプロジェクトの終わりが近づくと、すごく早い段階で正しい選択をしたことがわかりますよ。これは理にかなっていますよね。こういう結果の為に私たちは効果的なワークフローをいろいろ実験して模索する必要があるんですから。」

「これは例えですけど、もし自分の車だけを使って毎朝仕事に行くのに慣れていたとしましょう。それで、ある日ものすごい交通渋滞が起こって、街中が車だらけになったらどうしますか?そういう場合のために、自転車や公共交通機関の使い方も知っておくべきでしょう。」

メロニ氏は自分の目標をさらに広げ、最近Artec Ray とArtec Leoを使用するプロジェクトに着手しました 。それらを使い、古代ローマの城を高解像度の完璧なデジタルでキャプチャするつもりなのです。細部までミリメートル単位で正確に配置された3Dモデルについて、メロニ氏はこう言います。「文化保存のために使用するのに最適ですよね。美術館やコレクターの為に小規模モデルを3D印刷したり、モデルをリアルなVR環境や、ユーザーを没頭させるようなARシミュレーションの中でも使用できますから。」

古代ローマの城の中庭を撮影するためにArtec Rayを準備するメロニ・ピエトロ氏

彼はこの可能性について、詳しくこう言いました。「城の訪問者がもし、3Dホログラムやビデオをハンズフリーで体験したり、何世紀にもわたる城の歴史に登場する人物をアニメのキャラにしたものと対話できたりしたらどうかなと思いますよ。そんなテクノロジーの使用は、幅広い年齢層の訪問者にとって、きっと本当に歴史に命を吹き込むことになるでしょう。これらの過去の宝物を保存するために、忘れられないほど感動的な物語を現在に持ち込むなんて、こんな素晴らしいことってありますか。」